第3話 開幕、意図的な神隠し

文字数 1,243文字

あなたは、目を覚まします。
どうやら仰向けで寝っ転がっているようです。

ひんやりとした石畳。
初夏の日差しと、まだ涼しさが残るそよ風が心地よいです。

空は高く、自然の香りがあなたの肺をいっぱいに満たします。

「よっこいしょ……」

いつまでも地面に寝っ転がっていられないので、あなたは体を起こします。

「ここは……神社?」

そこは、神社でした。
少し寂れた、というより、趣がある明神鳥居。
もちろん狛犬もおかれ、阿吽の呼吸をしています。
拝殿なのか本殿なのかよくわからない建物が一つ、手水舎もあります。

「神社、だなぁ……誰か、人はいないかな。」

あなたは、とりあえず参道の端を歩き、きっと拝殿なんだろうその建物に近づきます。
賽銭箱があるので、まあ、拝殿でしょう。

「すみませーーん、誰かいますかーーー」

無人神社なのでしょうか、呼んでみても聞こえるのは、森がさわめく音だけ。

「神社なのはわかるけど……ここ、何処なんだろ」

あなたは、紫さんの言っていたことを思い出しますが、この場所の説明は全くもって受けていませんでした。
紫さんは、だいぶガサツなようです

「というか、よく考えたらあの人、僕の知らない人だったのに、なんで名前を知ってたんだろう……」

あなたは、不可思議なことには普通の人よりも耐性がありますが、それにしてもおかしいことだらけです。

あなたはとりあえず、辺りを散策することにしました。
やはり神社は、きちんとまでとはいかなくとも、人の手が加えられていました。

「何処かに人はいるはずなんだけど…」

あなたが頭を抱えていると、不意に背後から、ねぇ、と声がかかります。

「デジャヴッッ!」

「いや、初対面のやつにその反応は印象最悪でしょうよ。」

振り向くと、ムッと顔を歪ませた、巫女服(?)姿の少女がいました。

「で、あんた誰?人間の里から来たの?何の用?」

「あっ…えっと、僕は村雨祐也です……。えっと、ここって何処ですか?」

「はぁ?……はぁ……。あんた、もしかしなくても外の人間なの?まーた紫の仕業なのね!」

そう言って、彼女は天を仰ぎ嘆きます。
その様子を見て、あなたは戸惑ってしまいます。

「は、はぁ……あ、でも、紫さんなら知ってm」

「ほーーら行った通り!気まぐれにも程があるでしょうよ……。博麗神社にわざわざ出口を繋いだってことは、保護しろってことでしょうよね!」

「あ、あの……?」

「ああ、いや、まあこっちの話よ。ごめんなさいね、状況がよく分かってないでしょう。私は博麗霊夢。ここの神社の巫女をやっているわ。よろしく」

茶髪の髪と、赤白のリボンを左右に揺らして、博麗霊夢と名乗った少女は、あなたに微笑みかけました。

「で、村雨祐也って言ったっけ?とりあえず今日は、うちの神社に泊まりなさい。」

ついてきなさい、と霊夢さんは言い、困惑の渦中にいるあなたは言われるがまま、後についていくのでした。
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