第2話 『常識』と『非常識』の狭間で

文字数 1,000文字

あなたは、目を覚ましました。
じめっとした空気に、薄暗く何処までも続く闇が周囲を満たしています。

「ここは……?」

確か、あなたは先ほどまで、実家の古い蔵で探し物をしていたはず。
それが、急に目眩がして、目が覚めたら謎の場所に……。

「あら、起きたのね。」

背後から声がしたので、あなたは驚いて振り向きます。

「私は、八雲紫。あなたは、村雨祐也ね?」

その女性は、リボンがあしらわれた、紫と白を基調とした身なりをしていました。
右手に日傘を持つ彼女は、こう続けます。

「まあ、混乱するのも無理はないわ。突然こんな場所に連れてこられたのだものね。」

紫と名乗った女性は微笑み、息をつくと、あなたにこう問いかけます。

「それで、探し物は見つかったの?」

「……っえっと、もしかして、あなたは僕の探しているものを、知っているんですか?」

「ふむ、知っているといれば知っているし、知らないといえば……知らないと言えるでしょうね。私が知っていることは、少なくともあの蔵にはない、ということくらいかしら。」

そう言って、彼女は身を翻します。

「それじゃあ……」

「あぁ、そんな悲しそうにしないで頂戴。場所の算段くらいついているわ。」

「じゃあ…!」

あなたは、とても嬉しくなりました。
なんせ、『それ』は、一年以上探し回っても見つからなかったからです。

「私が、その場所へ連れて行ってあげるわ。でも、条件があるの。」

「条件……?」

「ええ。と言っても、まああなたは、それを勝手にやってくれるでしょうけど。」

「……?」

どういうことでしょう。あなたは、まるで漫画のワンシーンのように首を傾げます。

「……まあ要するに、『条件の内容は気にしなくてもいいけれど、条件があることは常に覚えていて頂戴』ということよ。そういうわけだから、早速向こうに送っちゃうわね。」

彼女がそういうと、あなたはまた、目眩を感じ始めます。

「その眩暈の感覚を、よく覚えていて頂戴。きっと役に立つ時がくるわ。」

あなたは、それを聞いたら最後、ついに意識を失いました。



一人残った彼女は、独り言を溢す。

「彼がきっと、ひとときの安らぎとなり得るはず。幻想郷に貢ぐ酒の代わり、ってところかしら。」

「まあ、きっと悪いことにはならないわ。なんせーー」

叢雨蔓菜の末裔、だものねーー。
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