第17話 つれづれなるとき

文字数 456文字

又ふもとに、一のしばのいおりあり。すなわちこの山もりがおる所也。かしこに子童あり、ときどき来たりてあひとぶらふ。
 もしつれづれなる時は、これをともとして遊行す。かれは十歳、これは六十、その齢ことのほかなれど、心をなぐさむることこれ同じ。或いは茅花をぬき、いわなしをとり、ぬかごをもり、せりをつむ。或いはすそわの田居にいたりて、落ち穂をひろいてほぐみをつくる。
若しうららかなれば、峰によじのぼりりて、はるかにふるさとのそらをのぞみ、こはた山、ふしみのさと、鳥羽、はつかしをみる。勝地はぬしなければ、心をなぐさむるにさわりなし。
 あゆみわづらいなく、心とほくいたるときは、これより峰つづきすみ山をこえ、かさとりをすぎて、或いは石間にまうで。あるいはいしやまをおがむ。若しは又あはずのはらを分けつつ、せみうたの翁があとをとぶらい、たなかみ河をわたりて、さるまろまうちぎみがはかをたずねぬ。かえるさには、をりにつけつつさくらをかり、もみじをもとめ、わらびをおり、このみをひろひて、かつは仏にたてまつり、かつは家づとにす。
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