第6話 いにしえの賢き御代

文字数 253文字

世の乱れるる瑞相とかきけるもしるく、日を経つつ世の中うきたちて、人の心もおさまらず、民の憂へついにむなしからざりきれば、同じき年の冬、なおこの京に帰り給いにき。されど、こぼちわたせりし家どもはいかになりにけるにか、悉くもとの様にしもつくらず。
 伝えきく、いにしえのかしこき御代には、あはれみを以て国をおさめたまう。すなわち殿に茅ふきても、軒をだにととのえず。煙の乏しきをみ給うときは、限りある貢ぎ物をさえゆるされき。是、民をめぐみ、世をたすけ給うによりてなり。今の世のありさま、昔になぞらえて知りぬべし。
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