第20話 住まい

文字数 333文字

総べて世の人の、住処をつくるならひ、必ずしも事のためにせず。或いは妻子、眷属の為につくり、或いは親昵朋友の為につくる。或いは主君、師匠及び財宝、牛馬の為にさえこれを作る。
 われ今、身の為にむすべり、人の為につくらず。故いかんとなれば」、今の世のならひ、此の身のありさま、ともなうべき人もなく、たのむべきやつこもなし。縦ひろくつくれりとも、たれをやどし、たれをか据えん。
夫、人のともとあるものは、とめるをたふとみ、ねむごろなるをさきとす。かならずしもなさけあると、すなほなるとをば不愛、只糸竹花月をともとせんにはしかじ。
ひとのやつこたる物は賞罰はなはだしく、恩顧あつきをさきとす。更にはぐくみあわれむと、やすくしづかなるとをばねがわず、只わが身を奴婢とするにはしかず。
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