第13話 住まい
文字数 400文字
わがかみ、父かたの祖母の家を伝えて、ひさしく彼の所にすむ。その後縁かけて、身おとろえ、しのぶかたがたしげかりしかど、ついににやとどむる事を得ず。みそじあまりにして、更にわが心と一の庵を結ぶ。
是をありし住まいにならぶるに、十分が一也。部屋ばかりをかまえて、はかばかしく屋をつくるにおよばず。わづかに築地をつけりといえども、かどをたつるたづきなし。竹をはしらとして、車をやどせり。雪ふり風吹くごとに、あやうからずしもあらず。所、かわら近ければ、水難も深く、白波のおそれもさわがし。
すべてあられぬ世を念じすぐしつつ、心をなやませる事、三十余年也。其の間をりおりのたがいめ、おのずから短き運を悟りぬ。
すなわちいそじの春をむかえて、家を出で世をそむけり。もとより妻子なければ、捨てがたきよすがもなし。身に官職あらず。なにに付けてか執をとどめん。むなしく大原山の雲にふして、又五かえりの春秋をなん経にける。
是をありし住まいにならぶるに、十分が一也。部屋ばかりをかまえて、はかばかしく屋をつくるにおよばず。わづかに築地をつけりといえども、かどをたつるたづきなし。竹をはしらとして、車をやどせり。雪ふり風吹くごとに、あやうからずしもあらず。所、かわら近ければ、水難も深く、白波のおそれもさわがし。
すべてあられぬ世を念じすぐしつつ、心をなやませる事、三十余年也。其の間をりおりのたがいめ、おのずから短き運を悟りぬ。
すなわちいそじの春をむかえて、家を出で世をそむけり。もとより妻子なければ、捨てがたきよすがもなし。身に官職あらず。なにに付けてか執をとどめん。むなしく大原山の雲にふして、又五かえりの春秋をなん経にける。