病院(特別室)

文字数 377文字

 厳つい先客がいるが、幸い霊は見えてないようだ。
「すいぶん、元気なやつだ。30、いや40歳近いだろうか。テレビは見る、菓子は食べる。本当に病人か?」
 特別室には格子のない大きな窓がいくつかある。ベランダもある。飛び降りることは可能だ。ベッドの横の窓からなら突き落とすのも楽だろう。落ちたという場所とも一致する。部屋の中は見覚えがある気もするが、手術中に自分の姿を外から見ていたという体験談もよく聞く。
「ここにいるのも、飽きたよ。早く出してくれよ。」
 奥の部屋から声が聞こえる。もう一人いるのか。
「坊ちゃん、選挙間近の大事な時期なんですから、あまり議員を困らせないでください。やっとここへ入れたんですから。」
 部屋の男が、奥のやつに叫ぶ。
 こいつら、どっかの議員の息子と、そのボディーガードといったところか。病気で入院したわけではなさそうだ。
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登場人物紹介

武志

自分が死んだ理由を霊になって調べる

事務計算会社営業の係長補佐

主な仕事は電話番

運転は苦手でほとんどしない

酒は飲めない

将史

武志の兄

両親の死後、家業の買取屋を継ぐ

出張買取が多く、運転は得意

鈴木係長

武志の上司

気が弱く、酒好きで、おっちょこちょいのお調子者

議員の息子

親の秘書。議員を守るためなら死をもいとわない


看護師

武志を担当していた

気が弱い

保険会社の課長

取引先の武志をとても気に入って、担当に指名

武志の勤める会社社長の中学での先輩

スリの男

公園に住み着いている

武志と将史の父

一代で財を築いた

還暦

豪華客船の旅が夢

武志と将史の母

武志の友人

病院の掃除のおばちゃん

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