警察(取調室)

文字数 524文字

 中年の刑事と若い男がテーブルを挟んで向かい合わせで座っている。隅には制服の警察官がいる。
「お前が、特別室に最後に入ったのは監視カメラでわかってるんだ。」
 刑事の問いに、灰色のパーカーを着た若い男はうつむいたまま
「ですから、そのときはもう落ちてたんです。」
 と、ふてくされて答えた。
「その後、屋上に行ったな。」
「はい、行きましたよ。意識不明の患者ですよ。自分が落とした思われるじゃないですか。それに部屋からの転落となれば当分部屋も使えなくなるでしょ。それだと困るんですよ。だから、スリッパを屋上に置いて細工しました。何か、罪になりますか?」
「捜査妨害。他殺だったら、殺人幇助。」
 刑事は厳しい口調だった。
「お前の指紋が遺書にあったが、どうした。」
 なおも、刑事が問い詰める。
「拾ったんですよ。公園のゴミ箱で。現金かと思ったら遺書だったんです。ですけど病院のどこかで落としちまって。本当ですよ。新聞については、へやのゴミ箱にあったのを机におきましたよ。それだけです。」
 机の上の新聞記事によると、サイドブレーキはかかっておらず、助かった二人は助手席の窓を開け、水が十分溜まったところで、運転手席側のドアから脱出と書いてあった。
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登場人物紹介

武志

自分が死んだ理由を霊になって調べる

事務計算会社営業の係長補佐

主な仕事は電話番

運転は苦手でほとんどしない

酒は飲めない

将史

武志の兄

両親の死後、家業の買取屋を継ぐ

出張買取が多く、運転は得意

鈴木係長

武志の上司

気が弱く、酒好きで、おっちょこちょいのお調子者

議員の息子

親の秘書。議員を守るためなら死をもいとわない


看護師

武志を担当していた

気が弱い

保険会社の課長

取引先の武志をとても気に入って、担当に指名

武志の勤める会社社長の中学での先輩

スリの男

公園に住み着いている

武志と将史の父

一代で財を築いた

還暦

豪華客船の旅が夢

武志と将史の母

武志の友人

病院の掃除のおばちゃん

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