検問場所

文字数 513文字

 霊は便利だ。電車もバスも乗り放題。時には、タクシーの相乗りも自由。
 武志は事故を起こした当日に引っかかった検問の場所へ移動した。高速の入り口にほど近い交差点。師走の飲酒運転取り締まりだった。
 その日は、武志と将史の父親の還暦の誕生日だった。兄、将史が手配した料亭で武志と母親を加えた4人で祝った。料亭ともなれば、まだ子供の甥は連れてくるわけにもいかず、結果、将史の嫁も欠席だった。父親も将史も二人だけで話したいこともあったようだ。
 父親は一代で今の地位を築いた。最近の金価格の高騰で、買取り屋の父はかなり儲けた。将史は父親の跡継ぎとして、出張買取りに飛び回っている。工事や検問など、渋滞になりそうな所は十分知っているはずだ。保険の事務計算などを代行する会社の、電話番程度の仕事しかしていなかった武志とは違う。
 父親は還暦を向かえ、そろそろ隠居を考えていた。豪華客船での旅にでるのが夢だった。将史がちょくちょく売り上げをごまかして、ギャンブルに使っていることは、武志も父親も知っていた。父親は若いころ、ギャンブル好きの知人の連帯保証人になって苦労していた。「取り締まり場所に詳しい兄が検問に引っかかるなんて不自然だ。」
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登場人物紹介

武志

自分が死んだ理由を霊になって調べる

事務計算会社営業の係長補佐

主な仕事は電話番

運転は苦手でほとんどしない

酒は飲めない

将史

武志の兄

両親の死後、家業の買取屋を継ぐ

出張買取が多く、運転は得意

鈴木係長

武志の上司

気が弱く、酒好きで、おっちょこちょいのお調子者

議員の息子

親の秘書。議員を守るためなら死をもいとわない


看護師

武志を担当していた

気が弱い

保険会社の課長

取引先の武志をとても気に入って、担当に指名

武志の勤める会社社長の中学での先輩

スリの男

公園に住み着いている

武志と将史の父

一代で財を築いた

還暦

豪華客船の旅が夢

武志と将史の母

武志の友人

病院の掃除のおばちゃん

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