事故現場

文字数 425文字

 武志は両親が溺死した事故現場に移動した。
「お前の運転では心配だ。アルコールが抜けたら俺が運転するから近くの空き地で休んでいこう。」
 将史に促され脇道に入った。武志は真っ暗な細い道を、将史の誘導に従い、ワンボックスの大きい車をゆっくりと進めた。やがて、川のそばの小さな空き地で車を止めた。もたつく武志に代わり、将史が助手席から足を伸ばしてサイドブレーキを踏んだ。
「寝ててもいいが、エンジンは止めるなよ。」
 師走の車内だ。エアコン無しではいられない。久々の運転で緊張したのか、武志はすぐに眠ってしまった。
「ここから、記憶がない。まさかドライブに入れたまま寝ちまったってことはないよな。」
 運転に不慣れな武志だ。パーキングにするのを忘れたとしても不思議はない。そもそもシフトチェンジした覚えがない。ブレーキを踏んでいた足が離れ、自動車が川に落ちたというのだろうか?師走の川だ。両親を助けることはできなかっただろう。
「ぼくは兄に助けられた?」
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登場人物紹介

武志

自分が死んだ理由を霊になって調べる

事務計算会社営業の係長補佐

主な仕事は電話番

運転は苦手でほとんどしない

酒は飲めない

将史

武志の兄

両親の死後、家業の買取屋を継ぐ

出張買取が多く、運転は得意

鈴木係長

武志の上司

気が弱く、酒好きで、おっちょこちょいのお調子者

議員の息子

親の秘書。議員を守るためなら死をもいとわない


看護師

武志を担当していた

気が弱い

保険会社の課長

取引先の武志をとても気に入って、担当に指名

武志の勤める会社社長の中学での先輩

スリの男

公園に住み着いている

武志と将史の父

一代で財を築いた

還暦

豪華客船の旅が夢

武志と将史の母

武志の友人

病院の掃除のおばちゃん

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