第29話「すっきりした翌朝」
文字数 1,441文字
目覚めると、彼女が家にいる。
僕がリードを持たせてもらったが、柴犬は素直にいつも通り歩いてくれた。途中で、同じく犬の散歩をしている顔なじみのおばさんとはち会わせた。
今日は彼氏さんと一緒なのね。
お互いの犬がじゃれ合っていたが、おばさんは自分のリードを引っ張りながら言った。
またね。
僕らはソファーに座って一息ついた。犬も散歩に満足したようで、部屋の中にある小屋で休んでいた。
僕らはソファーに並んで座り、他愛もない話をした。彼女はコーヒーを飲んだりタバコを吸ったりしていた。彼女は灰皿の中にある長い吸い殻を見つけた。
僕らがタバコを吸い終わって火を消したところで、彼女はコーヒーのマグカップを机に置いて僕の方を向いた。
振り向くと、彼女は僕に口づけした。短い口づけだった。どちらから誘うでもなく自然と僕らは寝た。昨晩とは違い、僕らは落ち着いて丁寧にお互いを求め合った。
その後、また並んで横になっている時、彼女と同じように僕もタバコを吸ってみた。その間はお互い何も話さなかった。2人ともタバコを吸い終わって火を消すと、彼女は僕の腕に顔をうずめた。いつの間にか彼女は眠っていた。ゆっくりと呼吸しながら揺れる彼女の寝顔を見ているうちに僕も眠っていた。
先に目覚めた僕は、隣ですやすやと眠っている彼女の顔を眺めていた。彼女は僕の方に体を向け、赤ん坊のように安心した表情で目を瞑っていた。その寝顔があまりに愛おしかったので思わず頬を触ってみると、彼女はクスリと笑った。