第30話「思い出」
文字数 875文字
彼女は台所に行き、料理を始めた。僕はソファーに腰かけて、彼女の部屋を眺めていた。それからボールを投げて柴犬と遊んだりしながら料理の完成を待った。
しばらく待っていると料理ができたらしく、2枚の皿を不安そうに両手で抱えながら彼女がやって来た。メニューはオムライスだった。
彼女の手作りオムライスはとても美味かった。主張がなく庶民的で優しい味だった。
彼女は安心したようにオムライスを口に運んだ。やはり彼女はとても美味しそうにご飯を食べる。
そう言って僕の頬を小突く。そんなやり取りをしていると、僕は高校生の時に彼女と行った喫茶店を思い出した。コップの水を飲んでから彼女が言った。
彼女は再びオムライスを食べ始めた。それからは2人とも思い出に浸るように黙って食事した。
彼女は食器を台所に持って行き、2人分のコーヒーを持って戻ってきた。
そうして僕らは黙ってコーヒーを飲んだり、タバコを吸ったりして過ごした。彼女は自分の口元を触ってしばらく何かを考えてから言った。
彼女は僕の目を真っ直ぐ見た。
彼女はタバコを一口吸い、思考を整理してから話し始めた。