第10話「不気味な道」
文字数 631文字
どの喫茶店に行くかは聞かされていなかったので、僕は彼女に付いて行った。彼女は僕の前を歩きながらこちらに振り向いたり、少し歩きを緩めて僕の横を歩いたりしながら目的地に向かった。しばらく並んで歩き、少し不気味な細路地に入ったところで僕は声をかけた。
やはり彼女はたまに意味深なことを言う。そのまま進んでいくとさらに不気味な道になり、辺りはごみが散乱し、壁はスプレーの落書きだらけだった。
彼女は僕の目を見ながら答えた。
からかうように彼女は僕の頬を小突いた。また僕の鼓動は高鳴る。
“私が泣いちゃうわよ”
彼女はこういう個性的な話し方をする。
“どういうこと?”と聞きたかったが、どうせはぐらかされるだろうと思ったので止めにした。それから少し歩いたところで目的地に着いたらしく、彼女は立ち止まった。雰囲気のある老舗の喫茶店の方に彼女は体を向けた。