第37話「吹っ切れて日常」
文字数 467文字
僕の頬を小突く。
僕らは歩くのを止め、その場で優しく口づけした。再び手を握りながら並んで歩いていると、あの頃のバス停に着いた。
彼女はバスに近づいた。
高校生の時は、バスに乗る彼女に何かを言いたいのに言葉が出ず苦しんでいたが、今は言い残すことはなくスッキリしていた。不安も無かった。彼女は昔のように1番後ろの席に座り、小さく手を振っていた。今までで一番魅力的な笑顔だった。
“人は不完全だからこそ美しい”
僕は久しぶりにその言葉を思い出した。そうして僕らは大学生活に戻っていった。