第33話「突然の提案」

文字数 687文字

あなたが私の感情を取り戻したから再び世界に絶望することになった。あなたのせいよ。

だから、

責任取って私を幸せにして。

 こうして僕らは交際することになった。僕と彼女は時々会って近所を散歩し、喫茶店を巡り、彼女の家で愛し合ったりしながら過ごした。


 彼女は少しずつ大学にも通うようになった。アルバイトは辞めたままだが、そういった事情も両親に話せるようになっていた。


 3月になり、ある土曜日の夕方。いつものように川沿いを並んで歩いていると、彼女は思い出したように言った。

猫カフェに行きましょう。
いいけど、この辺にあったかな。
あなたの家よ。

ご両親に挨拶もしたいし。

"両親に挨拶"

その言葉を聞いた途端に鼓動が速くなった。

わかった。

いつにしようか?

今から。
今からだと遅くなるよ?
いいの。ちょうど私も実家に帰ろうと思っていたから。

 我々は電車に乗り、12個離れた僕の最寄り駅に向かった。僕らは隣に座ってしばらく話していたが、気がつくと彼女は僕の肩に頭をもたれて眠っていた。彼女の寝顔を眺めてから僕も眠った。


 彼女に頬を小突かれて僕は目覚めた。いつの間にか降りる駅の1つ手前まで来ていた。

いつまで寝てるのよ。
君が先に寝たんじゃないか。
あなたの隣にいると安心して眠ってしまうのよ。
 駅に着いて電車を降りると、僕の家に向かって歩き始めた。時刻は18時を回っていた。
3月でも夜は冷えるわね。
 彼女は僕の腕にしがみついた。僕らは体を寄せてお互いを温め合いながら歩いた。家の前に着くと、僕の緊張を察した彼女が笑いながら言った。
自分の家に帰るだけなのにどうして緊張するのよ。
それはだって、
ほら、先に行って。
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登場人物紹介

“不完全”な僕。世界から色が消え、ただ時が過ぎるのを待っている。

”完全”なクラスメイトの女の子。僕とは真逆の存在。

僕の母。父と2人で猫カフェを経営している。

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