第19話 ガイウス ②

文字数 1,227文字

 さて、その「典雅の審判員」をどうやって「ガイウス」に落としこもうか。

 ――ええいもういいやいいや、名前借りて理想の人物作っちゃえ。

 世に言う、キャラ改変です。
 史実(と言われている史料)を「小説」としてみた場合、歴史小説は「二次創作」みたいなものだと私は思っています。
 なので本来、あんまり登場人物の「解釈違い」はやっても「改変」は、好きではないのです。

 です、が、やっちゃった。
 まぁ一人くらいそんな人がいてもいいかなとか、ちょっと自分に甘くなってしまいました。
 しかもキーパーソンで。
 それを言えばオクタヴィアがキリスト教徒だったなんて話もないしね。今更かと開き直りました。

 なので割りと、ガイウスに関してはほぼほぼ創作です。
 ビテュニア総督だったのは事実ですが、そのあとナポリでネロと出会ったなんてエピソードはありません。
 ネロ不在時に政治を任されたのはペトロニウスではなく、ティゲリヌスだったようです。
 清廉潔白な正義漢でもなく、オクタヴィアとも接点はありません。
 有名な貴族、知識人、趣味がいい、ネロの友人――「ガイウス」の元にした設定は、これくらいかもですね。

 ルキウス同様ガイウスも正義の人、と設定すると、さらさらとお話ができました。
 オクタヴィアはきっと、オトのことは苦手でもガイウスなら大丈夫でしょう。だとすれば三人で会う機会も多いはず。
 ルキウスは悩んだと思います。男として生きてきた自分でさえ、ガイウスに惹かれている。ならばオクタヴィアが惹かれたって無理もない。
 ガイウスから見ても、男ということになっている自分よりもオクタヴィアに惚れても仕方がない。
 嫉妬はガイウスとオクタヴィア、それぞれに向けられたもの。だから支離滅裂にも思える言動になってしまったのではないか。

 史料に残る、オクタヴィアへの妊娠の嫌疑、濡れ衣ではなく事実だとしたら?
 ポッパエアの出産とされている子を、オクタヴィアの子だということにしたら?

 するするとピースがはまっていくパズルを作っているようでした。
 こう言うと引かれてしまうかもしれませんが、モチベーション上げるためというのもあり、私、よく自画自賛します。
 「えっ、ちょっと待ってあたし天才じゃね?」みたいなこと呟きます。考えたことがピタッとはまったときとか、長編1本書き上げたときとか。

 自分が読みたいものを書くのだから、とても自分好みの小説が出来上がるわけですよ。
 なのでたまに、完結した作品はもちろん、書きかけの小説も読み返したりします。
 とくに書きかけのを読み返したときに陥る現象なのですが、「あー面白かった、続き読みたいなぁ」「え、いや待って、読みたいなぁじゃなくて自分じゃん早く書け」みたいなね。

 この「背徳者」のストーリー展開が決まったときも、テンション爆上がりの「イエアァア!」みたいな状態でした。
 嬉々として悲劇を書いてるくせに、ハッピーエンド厨と言ってもあんまり説得力はないですね。
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