第10話 ネロ ⑥
文字数 1,812文字
「背徳者」を書くにあたって、もうひとつ、忘れてはならない作品があります。
偶然書店で見かけた、キレイなイラストが表紙の小説。アニメージュ文庫の作品です。
スーファミのゲームソフトになるくらいだから、有名で人気もあったのだろうと思います。私の周囲ではなぜか、誰も読んでなかったけど……。
「永遠のフィレーナ」です。
作品をご存知の方であれば、ああなるほど影響受けてるんだろうなと、ピンとくるのではないでしょうか。
詳しいストーリーは割愛しますが、男装の麗人、戦うヒロイン、ファンタジー、この3つがお好きな方にはおすすめです。
舞台は最初は古代ローマのイメージがあり、剣闘士のようなバトラーという奴隷がいます。後にはSFちっくな壮大な舞台、お話になっていくのですが、私は個人的に初期の方が好き。
で、このバトラーとして育った男装のヒロイン、フィレーナ。なんやかんやあって、同じく奴隷の女の子、リラと偽装結婚します。
この2人が、なんとなく、いわゆる百合っぽい。
でも露骨な表現があるわけではなく、フィレーナには実りはしなかったけど好きな男性らしき人ができたりするし、周りの男性陣も、男だと思ってるはずのフィレーナに執着したり――
ね、モロに影響を受けているのです。
なので、ルキウスと結婚するオクタヴィアとはほんのり百合ちっくな、良好な関係でいてほしかったのです。
けど、史料を読む限りは――ねぇ?
とりあえずオクタヴィアの人物設定は、史料でも一貫して描かれていた貞淑な女性にしました。どれを読んでも、悪いこと一個も書かれていないのですからそれ以外の人物像は想像できません。
そんな女性を嫌いになるなんて、根性曲がりでなければ無理。ルキウスは嫌いになれるはずがない。
男として生活する自分は仕方ない、けれどオクタヴィアは? 女である自分と結婚させられてしまうなんてと、可哀想に思うのでは?
そういう、優しい主人公でいてほしい。だから、オクタヴィアを遠ざけたのは彼女のためを思ってのこと――というのはどうだろう。
弟のブリタニクスに関しても、実はちょっと迷いました。
自分の言いなりにならないネロを廃し、義子ブリタニクスを皇帝にしようと企むアグリッピナ。それを阻止するために、ネロがブリタニクスを毒殺した――というのが定説です。
けれど、ネロとブリタニクス、とくにいがみ合っていたという記録はありません。
記録がないということは、フィクション作家としてはねつ造し放題です。(おい)
ちょっと年上の親戚のお兄ちゃん。子供は大好きでしょう。
ならきっと、ブリタニクスはルキウスになついてたはず。心優しきルキウスが、自分になついてくる可愛い子供を嫌うはずがない。
弟を可愛がってくれるキレイなお兄さんなら、オクタヴィアが好きになっちゃってもいいよね?
――まぁ、こんなノリで一途に恋するオクタヴィア像ができました……。
ブリタニクスについて迷ったのは、ルキウスが弟として彼を可愛がっていたのではなく、ほんのり初恋じみた淡い想いを抱いていた、みたいなのも悪くないなと思ったのです。
けど、なんだか複雑になりそうなのでやめました。
ともかくルキウスとブリタニクスの仲が良好であれば、ブリタニクスが成人すれば帝位を譲ろうとするでしょう。ルキウスも高貴の出ではありますが、なにせブリタニクスは前帝の子、正当性は彼にあります。
なにより、ルキウスは女性。皇帝になる資格はそもそもないのですから。
そうなると、ブリタニクスを邪魔に思うのはアグリッピナでしょう。すでにクラウディウスを毒殺した彼女が、ためらうとは思えません。
自分のせいで可愛い義弟が殺された。もしこの時点でルキウスがアグリッピナの仕業だと気づいていれば、母子の断絶はすぐに訪れたことでしょう。
けれど史実では、もっと後になっての崩壊でした。ならばこの時点では気づかなかったとしなければなりません。
正直、ルキウスが「聡明」である設定ならば、気づかないの無理があるよなぁとは思ったのですが……もしかしたら自分の派閥の人間の暴走ではないか、そう考えることで決着をつけました。
だってほら、自分の母親が子供を殺すなんて心優しき善良なルキウスが考えるはずないし、ね!(苦しい)
まぁこんな感じで考えていけば、つじつま合うはず! ってことで次はヒロイン、オクタヴィアについて詰めて考えます。
偶然書店で見かけた、キレイなイラストが表紙の小説。アニメージュ文庫の作品です。
スーファミのゲームソフトになるくらいだから、有名で人気もあったのだろうと思います。私の周囲ではなぜか、誰も読んでなかったけど……。
「永遠のフィレーナ」です。
作品をご存知の方であれば、ああなるほど影響受けてるんだろうなと、ピンとくるのではないでしょうか。
詳しいストーリーは割愛しますが、男装の麗人、戦うヒロイン、ファンタジー、この3つがお好きな方にはおすすめです。
舞台は最初は古代ローマのイメージがあり、剣闘士のようなバトラーという奴隷がいます。後にはSFちっくな壮大な舞台、お話になっていくのですが、私は個人的に初期の方が好き。
で、このバトラーとして育った男装のヒロイン、フィレーナ。なんやかんやあって、同じく奴隷の女の子、リラと偽装結婚します。
この2人が、なんとなく、いわゆる百合っぽい。
でも露骨な表現があるわけではなく、フィレーナには実りはしなかったけど好きな男性らしき人ができたりするし、周りの男性陣も、男だと思ってるはずのフィレーナに執着したり――
ね、モロに影響を受けているのです。
なので、ルキウスと結婚するオクタヴィアとはほんのり百合ちっくな、良好な関係でいてほしかったのです。
けど、史料を読む限りは――ねぇ?
とりあえずオクタヴィアの人物設定は、史料でも一貫して描かれていた貞淑な女性にしました。どれを読んでも、悪いこと一個も書かれていないのですからそれ以外の人物像は想像できません。
そんな女性を嫌いになるなんて、根性曲がりでなければ無理。ルキウスは嫌いになれるはずがない。
男として生活する自分は仕方ない、けれどオクタヴィアは? 女である自分と結婚させられてしまうなんてと、可哀想に思うのでは?
そういう、優しい主人公でいてほしい。だから、オクタヴィアを遠ざけたのは彼女のためを思ってのこと――というのはどうだろう。
弟のブリタニクスに関しても、実はちょっと迷いました。
自分の言いなりにならないネロを廃し、義子ブリタニクスを皇帝にしようと企むアグリッピナ。それを阻止するために、ネロがブリタニクスを毒殺した――というのが定説です。
けれど、ネロとブリタニクス、とくにいがみ合っていたという記録はありません。
記録がないということは、フィクション作家としてはねつ造し放題です。(おい)
ちょっと年上の親戚のお兄ちゃん。子供は大好きでしょう。
ならきっと、ブリタニクスはルキウスになついてたはず。心優しきルキウスが、自分になついてくる可愛い子供を嫌うはずがない。
弟を可愛がってくれるキレイなお兄さんなら、オクタヴィアが好きになっちゃってもいいよね?
――まぁ、こんなノリで一途に恋するオクタヴィア像ができました……。
ブリタニクスについて迷ったのは、ルキウスが弟として彼を可愛がっていたのではなく、ほんのり初恋じみた淡い想いを抱いていた、みたいなのも悪くないなと思ったのです。
けど、なんだか複雑になりそうなのでやめました。
ともかくルキウスとブリタニクスの仲が良好であれば、ブリタニクスが成人すれば帝位を譲ろうとするでしょう。ルキウスも高貴の出ではありますが、なにせブリタニクスは前帝の子、正当性は彼にあります。
なにより、ルキウスは女性。皇帝になる資格はそもそもないのですから。
そうなると、ブリタニクスを邪魔に思うのはアグリッピナでしょう。すでにクラウディウスを毒殺した彼女が、ためらうとは思えません。
自分のせいで可愛い義弟が殺された。もしこの時点でルキウスがアグリッピナの仕業だと気づいていれば、母子の断絶はすぐに訪れたことでしょう。
けれど史実では、もっと後になっての崩壊でした。ならばこの時点では気づかなかったとしなければなりません。
正直、ルキウスが「聡明」である設定ならば、気づかないの無理があるよなぁとは思ったのですが……もしかしたら自分の派閥の人間の暴走ではないか、そう考えることで決着をつけました。
だってほら、自分の母親が子供を殺すなんて心優しき善良なルキウスが考えるはずないし、ね!(苦しい)
まぁこんな感じで考えていけば、つじつま合うはず! ってことで次はヒロイン、オクタヴィアについて詰めて考えます。