第9話 ネロ ⑤

文字数 1,561文字

 
 今更ですが、ちょっと記述がややこしくなりがちなので、拙作の主人公ネロは、作品中でも使っている「ルキウス」と、調べた史実に基づくことに関しては「ネロ」と表記します。

 さて、ネロについて多少調べたところで、ルキウスの人物設定をしようと思いました。
 お話の登場人物なのですから、美形がいい。(私的には美形の方が嬉しい)
 アポロンだとかマルスだとかにたとえられてたのだから、もう絶世の美形にしてしまおう。
 で、そもそも女の子にするのが前提なのだから、身長はものすっごく高くなくていい。女性にしては長身、男性にしては普通くらいな。
 現代日本人の感覚で言えば、ルキウス170cm、オクタヴィア155cm程度をイメージしております。(ちなみに当時のローマ人は全体的に小柄だったらしく、大柄と言われていたカエサルも170cmくらいだったようです。なので実寸イメージだとルキウス160cmくらいでしょうか)

 歌も、めっちゃうまい方がいい。絶賛は皇帝への忖度と言われているけど、実力によるものだったってことにしよう。
 演説はうまい。しかも幼少期からセネカに哲学、帝王学をつめこまれていれば当然、優秀であるはず。
 有名な「パンとサーカス」、御しやすいローマ市民の性質を理解していなければできないことだし。
 アグリッピナを反面教師として育ったせいで清くあろうとする、正義の人。

 ――とても「暴君」の名を冠せられるとは思えない人物ができあがりました。

 まぁ、出発点はそこだったのだし! 成功です。(私的には)

 が、そこで詰みました。
 始まりは誰か歴史上の人物を女の子にしたい、どうせなら史実を踏襲しながらお話を組み立てたい、でした。
 主人公にするなら、悪役にはしたくない。
 でも、どうやったって擁護できないようなことをやらかしていたりするのですよね。
 それが主に、オクタヴィアに対する所業です。

 ネロとオクタヴィアは政略結婚でした。
 きっと2人は(ブリタニクスも加えて3人)親戚で幼馴染のような立ち位置だったのではないでしょうか。
 けれど、ネロはオクタヴィアに一切関心を示さず、彼女の侍女、解放奴隷のアクテを恋人にします。
 まぁ、失礼にも程がある。
 もっともオクタヴィアにしても、ネロは愛情を傾けられる相手ではなかったでしょう。父はネロを皇帝にするために、ネロの母に殺されたのですから。
 そして、ブリタニクス殺害。彼の死亡において、もっとも得をするのはネロでした。直接手を下したにせよ部下の暴走にせよ、ネロのせいで弟が死んだことに変わりはないのですから。
 しかもオクタヴィアを石女として離婚していながら、不義の子を宿していたなどと罪を追加する。
 流刑に処しただけではなく、オクタヴィアの次に結婚した妻、ポッパエアにそそのかされて自害を命じたと記録されています。

 ――いやいや、無理でしょよこれ。
 ルキウスが女だったから、オクタヴィアには関心を抱かなかった。それは成り立つ。
 けどアクテの話は? ポッパエアの言いなりになった逸話については?
 なにより正義の人が、なんら落ち度がなかったオクタヴィアへの所業としては絶対やっちゃダメだってば。

 それだけではありません。アグリッピナとの母子相姦、そして殺害。
 ポッパエアも、親友オトの妻だったのを奪ってしまっています。
 そもそもオトとの関係を見て、女の子にしちゃおうかと考えたのです。ならオトとポッパエアを離婚させるまではともかく、オトの方を手元に残さなきゃおかしくない?
 しかも後にはポッパエアは妊娠、出産しています。女同士じゃ子供できなくない?
 さらにポッパエアの死について、ネロが妊娠中の彼女を蹴飛ばしてしまったから、なんて説もある。
 正義の人が絶対やっちゃ以下略。

 ――あれ、無謀だったかな?
 
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