第19話

文字数 1,741文字

 ついさっきまでアメリカのオレゴンに住むアメリカ人と今でいうオンライン飲みをしていた。
「アメリカじゃあ四〇万人コロナで死んでるなんて言ってるが大丈夫か? 兄弟」
「大丈夫。ネットでほとんどやりくりが利くしね」
 という友人。彼はオレゴンに四店舗のファーストフード店とPWという写真の加工会社を経営している。ちなみにロックダウンの影響で持ち帰りの多いファーストフード店の方は例年の売上の一二〇パーセント、写真の方も順調らしい。店内の飲食は全面禁止らしいが。
「何でも第二次世界大戦の死者数を超えたって話だが…… 」
「まあ、戦争中に死ぬのは一八~二〇歳とか若い人間だしね。コロナで死ぬのは九〇歳だとか、別に今日死ななくても明後日には死ぬかもしれない年寄りだ」
 ジョンソン&ジョンソンが作っているワクチンが承認されればガラリと変わるかもしれないと言う。冷凍保存もしなくて良く、一回で接種が終わるらしい。ファイザー等のワクチンだけでは収まらないだろうなって話だ。従来の半病人にして抗体を作るという方法ではなく遺伝子に変化を与えるワクチンが主流になるだろうって事。
日本の報道とアメリカの報道の仕方をそれぞれ話していて、似たようなもんだなってのが感想。
LAやニューヨーク辺りでは感染や死亡者が多いのだが、往来自由なフロリダは死者も少ないとの事。結局、感染して帰って来た家族が家の中で伝染す事例が多いらしい。
ちなみにそれが理由でオレゴンなどの中規模都市の土地や家屋が値上がりしていて買った時五〇〇〇万だった家が今、一億するとの事。ニューヨーク辺りは暴落しているらしい。

アメリカの重症患者は二三〇〇〇人を超えるのだが、日本と違って民間の病院も受け入れているのでまだマシ、インフルエンザでも医療崩壊はするしねと言っていた。

途中、彼の息子が組み立てキッドのパーツが足りないと友人に話しかけてきた。何でも七万もした物らしく、彼の息子がパーツが一袋足りないなんて言っていた。見た所、デカいガメラの玩具みたいな物で部屋中にパーツが広げられている。

アメリカでは保証が出るので下手にバイトするより保証の方がいいので文句はあまり出ないようだが、行動の自由を束縛される事には不満があるようでデモとかもあるらしい。日本のように一銭も払わず自粛しろと言った日にはとっくの昔に暴動が相次いでいるだろう。
報道等については日本もアメリカもほとんど同じようだ。
「昔から欧米に合わせるってのが日本の伝統だからな。だから同じような事言うんだろうね」
 と友人は言う。友人はあまりテレビを見ないようにしているが、ネットもダメだという。要はネットである検索をしたら、それに付随した話題が次々と出てくる。ネットをよく見る連中は結局、自分でより狭い認識に支配されていく。それを殆どの人間が分かっていない。
「その点、中国が強いと思うのは、それらを国が規制している点だろうね。アメリカだと批判の記事を検索すればそれに準じた記事ばかりが出てきて、結局、それが正解、正義だと思い込んでしまう」
 と言う。確かにそうではある。中国大嫌いなアメリカ人が言うのだから当たらずとも遠からずって事だろう。

しばらくすると彼の息子が又、やっぱり無いと話しかけてきた。
「金持ってんだから、パーツの一つぐらい買ってやれよ。買わないと息子がぐれるぞ」
 と私が言うと。
「だって買ったばかりだぞ」
 と言っていると、デカい箱の中をひっくり返す息子。何のことはない、出てきた。子供ってそんなモノだ。

「ところで大統領が変わってどう? トランプ支持者の暴動もあったと聞くが」
「まあ、あいつらは馬鹿。トランプとバイデンは真逆な人間なのでそれはそれで良かったかもな。みんながバイデンは人の良いお爺ちゃんと言ってるよ」
「しかし、痴呆の気がないか? 」
「嫌、気じゃなくて明らかにボケてるよ」
 アメリカって懐の深い国だな…… 。

そのうち昔話で延々、四時間のオンライン飲みになったのだが、意気消沈しようが高揚しようが本人次第であって、人数が問題ではないが、病床が足りないとか貧困の問題は少なくとも解決しない事には世界から馬鹿扱いされるのは間違いない。
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