第6話

文字数 2,448文字

 今日、よく行くディスカウントのT○○○Lに行くと、台車にダンボール積みのままカップラーメンを買って行く人がいた。ネクタイをしめたサラリーマンらしき男女三人なのだが、台車二〜三車山盛り分のカップラーメン支払額は五万超である。
 後ろにいたオバサンは支払額を聞いて感嘆の声を上げた。様子からして普通の客は増税前の買い置き分だろうと思うのであろうが、一、二種類の商品をそれだけの量買うのはおかしい。おまけにダンボールに記入している賞味期限は来年の二月初め。社員訓練の為に食うというのなら分からなくはないが、普通しない。私はすぐにピンときた。恐らくメーカーの人間がダンピング防止の為に買い占めたのだろうって。
 たまにスーパーは卵一パック一〇円などと破格のセールをする事がある。これは店側が仕入れ額を切って客寄せの為に行う行為。だから数量限定でしかやらない。ちなみに酒類は原価を切って売ってはならないという法律がある。だから原価未満の安売りは出来ない。よくディスカウントが酒屋の価格より破格に安い金額で売っている場合があるが、あれは原価自体違うのである。酒のディスカウントの定義は現金払いで発注ロットがメーカー別に決まっている。仮に「手形で払いたいんだが? 」なんて言うと「おととい来なさい! 」とメーカーから言われる。小さな酒屋だとディスカウントで買って売った方が儲かる位だ。
 だが、食品の場合、ゆるい。早くから流通形態の崩壊している業界なので、ダンピングし放題、仁義なき業界である。メーカーの本音としては「買ってくれる客が良い客」でしかないのだが、そうもいかない。今回のメーカー買い取りは、ほぼ間違いなく競合店からのクレームであろう。「あんな価格で売りやがって、うちに高く売ってんだろ? 舐めてんのか? やめたんど!! 」といった電話が来たのだろう。ちなみにこれは食品業界に限った話ではない。昔、某ボイラーメーカーの商品が安売りに出された際、ボイラーメーカーは大人数で開店前に並び、数百万円に及ぶボイラーを買い取りに行っていた。(見てた客は一体何があったんだ? と驚いていた)
 間違いなく増税は消費者以上に販売店が怯えている。未曾有の不景気は既に予言されているようだ。(九九円で売っているカップラーメン位いいじゃん。ケチくせえな。恐らく安売りをすぐやめると思っていたら、一週間を超えたのでまずいと思ったんだろうな)

 よく「お客様は神様」という。それを私は聞く度に「どれだけ暴利を取ってんだよ」と思う。大抵、そんな事をいうのは飲食店や小売店。原価率三〇パーセント〜四〇パーセント以下の店。健康食品に至っては二〇パーセントを切るのは当たり前。訪問販売があんなにキツイ目にあって滅びないのは原価が驚く程低い為。保険に至っては紙切れなので人件費、経費だけだろうし、公務員に至っては国民の税金なので原価も糞もない。まあ、その代償が「サービスです」と言い訳されなくとも、儲けない企業は潰れるしかないので「我社は赤字でも頑張っています」なんて会社は「我社はアホです」と宣言しているようなものだが。
 
 では日本の企業はそんな事にいつも浮かれているか? というとそんな訳はない。
 好景気に浮かれたいのは山々だが不景気になって三〇年近い。そしてその殆どが中小企業、町工場みたいな会社企業だ。元請け企業から「この値段で作れなきゃ、別な会社と取引したんど」と脅されては、つめようもない工場原価を何とか工夫し凌いでいる会社も多い。そんな苦労をしている会社は決して「お客様は神様」なんて偽善は吐かない。
 じゃあ、大企業はどうなんだ? って事だが。 
 
 恐らくこれを読んでいる人のほとんどは行った事がないであろう世界的な商社「伊藤忠」。当たり前だがアポイントがあるか、商談等の用事がない事には普通入れない。 まず青山にある本社は回転式の玄関ドアが一〇以上並んでいる。ちなみにドアを潜ると各ドアに警備員が立っており、手荷物検査を受ける。なかには爆弾を持って入る輩もいる恐れがあるからだろう。 そこでドコドコの部署の誰々と約束がある事を告げると、すぐに内線で確認され通される。一階の広いロビーには壁にモニターがついていて、色んな国のビジネスマンやら民族衣装を着た人がいる。まさに人種の坩堝だ。
 この会社では年間数百億動かす部署も極一部の部署なのである。目的のオフィスに行くと、応接間に通される。その際、ドアは必ず開放されたままにされる。それは会社での取り決めらしく、盗聴器や爆弾を仕込まれたりしない為だと思われる。
 開放された先に見えるのはディスクに向かう社員達なのだが、一様に若い。まあ、中小企業と違う点は「学生の頃、勉強の出来た子達」って事だろうが。
 やって来た部署の長。若くて長身ハンサムな体育系男性。後に友達のアメリカ人に聞くと「あの人は五ヶ国語喋れるど」と言っていた。エリートには違いない。面談している時はドアを閉めるのだが、時間制限が決まっているのだろうか? 一定時間を過ぎるとドアを開けたまま担当者が退出する。危機管理からかもしれない。あれだけの商社になると、密室のままでは人質にとられる恐れや殺傷される恐れもある。まあ、中小ではまずない行動ではある。

 商社も色々で、丸○なんかは入社してしばらくすると丸○人間に変身する。アメリカ人も言っていたが、丸○の人間はすぐ分かるらしい。偉そうに話すからである。某楽○は「社員は皆、優秀」だと褒めていた。「でも行方不明や失踪する子が多いんだよね。足の引っ張り合いがひどいからね」なんて言っていた。
 中小が一年であげる利益を数分で作ってしまう企業である。只、あの仕組みを中小が作れと言われても絶望的に無理な話だ。
 おっと又、悪口を書き始めるとキリがないのでヤメようっと。それはそうとT○○○Lはメーカーと戦い続けて欲しいものだ。応援するぞ頑張れ。
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