第1話

文字数 3,019文字

 さっきテレビを見てたら、香港のデモやってる中心人物が逮捕されたってやっていた。
 見ると二〇位の若い女の子だ。翌日には釈放されたようで、インタビュアーが「逮捕された事についてどう思います? 」なんて質問している。若い女の子は日本語で答えた。
「逮捕されるのは三度目なんですけど、起訴されたのは初めてです」
 ほお、三回もパクられたのか。法至上主義の日本では考えられない事だ。
 法自体、国が勝手に決めた事で、正義がこっちにあると思えば簡単に崩壊するようだ。
 
 日本人にとって警察に逮捕され、検察に罪状認定、罰金請求されるなど、とても後ろめたい。決して「三食保証、衣食住に不足なし。病気になっても安心。運動会や慰問会もあり。おまけに日給五〇〇〇円保証」などとは刑務所も広報活動はしない。その分、不景気になると制作費が抑えられる為、警察全面協力の元、警察関連のドラマが多くなるようだ。まあ、呆れるほど善人が犯罪を犯し、悉く反省するところが笑わせるが。(そもそも犯罪者の反省など見た事がない)彼らのGOALは法至上主義の徹底である事は間違いない。
 毎年変わる民法に比べ、刑法はほとんど変わらない。ハッキリ言って刑法とは犯罪者の人権を守る法である。被害者の無念は永遠に晴らせない。又、加害者の情報は絶対警察に聞いたところで教えてくれない。「個人情報保護法」ってやつだ。ところが手段はある。弁護士に頼んで民事訴訟を起こすのである。弁護士に対しては警察も情報開示の義務が生じる。(相手が分からない事には裁判にもならない。何てたって司法最強なのだ)
 せめてもの報復は金を取る事位だろう。とはいえ犯罪者の殆どは支払いに応じない。(無い袖は振れない。取れるもんなら取ってみろ)って感じなので、地道に根気よく回収するしかない。(ちなみに延滞分は金利を乗せて、再度、裁判も起こせる)只、絶対に裁判所は回収はしてくれないので、自力で何とかするしかない。一昔前なら債権をヤクザに売って幾らか金にする事も出来たが、暴対法が出来てからそれは不可能になった。
 
 犯罪を犯す犯さないといった大事ではなく、身近に起こりうる場合の事を書こう。
 
 例えば、交通事故の場合。予期して事故に合う人はほぼいない。仮に後ろからぶつけられたら、まず一〇〇パーセント追突した車の過失となる。それぞれに任意保険に入ってはいるだろうが、保険会社同士の話し合いや被害者との示談交渉で補償額は決まる。その際、分かっていないとならないのは、基本、保険会社は金は払いたくないって事だ。さすがに喜んでいっぱい払いますなんて保険会社は存在しない。
 
 これからは経験談。後ろから追突された私は整形外科に入院した。すると保険屋がすぐにやって来て話を始めた。
そこで渡されたのが一枚の紙であった。見ると補償額の一覧である。こういう仕組みですって感じだ。
「ところで働けないんだが、休業補償はしてくれるのか? 」
 こっちは自営業者である。仕事をしない事には収入がない。
「全部終わってからでないと支給出来ません」
 と言う。何だ、それ? 取り敢えず入院費や治療費は病院の請求に応じ、払うようなのだが示談書に判子を押すまで何も出来ませんと言うのだ。
「商店やお店をされている経営者の方も同じです」
 と言う。ふ〜ん、そうか。ハナから素人と舐めているのが見え見えである。実際、一年中そんな事をしてるプロの保険屋に太刀打ちは出来ないのだが。
 
 翌日、私は保険屋の上司を呼び出し、文句を言ったのだが、素人の戯言である事に進歩がない。仕方ねえな、調子が戻って病院から出れるようになったら弁護士のところに行ってみよう。
 
 それから一ヶ月後、私は弁護士事務所に行った。こんな事言うんだけど本当? って聞くと「そりゃあ、保険会社は適当に言いますわな。ところでどこの保険会社? 」「○○共済」「ああ、共済って名前のつく保険会社は払いが悪いからね」へえ、そうなの?
 ちなみに保険屋から渡された紙を弁護士に見せると「あ〜これ。 保険屋が勝手に書いてるだけだから参考にもなりませんよ。弁護士価格って別に存在するから」と言う。だから間違っても示談書に判子は押さないようにと釘を刺された。
 弁護士が言うには、ひっくるめて取ってやるから、出来るだけ永く治療を続けて下さいという事だった。
 
 着手金で一〇万ちょっとだろうか。金の無い貧乏人には法テラスなどを使って月賦にも出来るらしい。成功報酬はパーセントが決まっていて、決着し保険会社から弁護士事務所に振り込まれた時点で引かれる。まあ、心配する事はない。全部引っ括めた金額に慰謝料他全部上乗せして取ってくれる。
 
 事故の場合、一つの目安として自賠責保証の一二〇万ってのがある。一二〇万の補償額を超えた分は任意保険で払わねばならない。よって保険会社は一二〇万以内で終わらせようとする。病院に電話をして「そろそろ退院させてもいいんじゃね? 」って感じで、整形外科のドル箱である交通事故患者は垂涎の客ではあるのだが、保険会社ともうまくやらねばいけない。(ちなみにどんな奴でも入院させる整形外科病院があったのだが、夜になると酒を飲みに出る患者がいて、おまけに事故を起こすといった事件があり、市内の整形外科の殆どは患者が夜中外に出れないようになった。その外科病院は今は閉鎖されたのだが、そりゃそうだろと皆言っている。)
 交通事故は保険証も要らない(使わない)ので、一二〇万って金額もすぐに超える。だから任意保険は入らないとマズい。又、弁護士特約も月額になおすと一〇〇円ちょっとだろうから入っておいた方が良い。
 
 それからは月に一度位、弁護士事務所に領収書を持って行ったりする手間が生じる。それを事務所の事務員が計算書の作成などをしていく。途中、弁護士に頼んだと分かった保険会社は手の平を返したように一月分の休業補償を振り込んできた。司法最強である。弁護士と話をしてると領収や通院状況を質問し、金の計算を始める。
 
 二ヶ月にもなると、私もそろそろ終わらせたいと言うのだが、弁護士は「まあ、焦る必要はない」と言う。
 最初は舐めた保険屋に怒りを覚えたのが始まりだが、いつまでも引きずる根気は私にはない。日常の仕事や生活もあるので、通院もほとんどしなくなった。結局、事故から半年もした頃、そういえばあれどうなったんだろう? って感じで弁護士と会った。そろそろ治療も終わらせたいんだが。
 
 弁護士が計算書を出し「じゃあ、これで請求を出して、恐らくこの金額の半分で示談かな」って話であった。ある意味、いつもの事なんだろう。四〇〇万で請求出して、じゃあ半分で示談って事でって感じだ。
 元々、面倒臭い上に時間もかかる裁判など起こしたい奴はどこにもいないのだ。弁護士は合法的な示談屋なのだ。
 
 実際、結果どうだったかというと、弁護士に頼んだ方が明らかに金は取れるって事。素人がプロの保険屋と渡り合うのは無理である。  
 
 物事のほとんどを性善説で語られる事の多い、平和ボケの日本ではあるが、まず手始めにテレビを消してみてはどうだろう? 随分、時間が永くなるはず。それ以前に旧約聖書がそもそも世界平和など謳っていない事実を知らない輩は救いようがないが。
 
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