第9話

文字数 3,957文字

そういえば最近、ネットで色んなものが見れる為、偶然に日本書紀の原文を見つけた。全面漢字で書かれていて、古典に疎い私は「これを中国人の知り合いに見せてみよう」と閃いた。
事務所に行くと中国人の事務員がいたので、スマホに読み込み見せたのだが、中国人の彼女曰く
「これ中国の学校で習う古典ね。大体、意味分かるけど、日本人には分からないんじゃない? 」と言われた。う~ん、ほぼ分からないな。
 よく考えてみれば、日本書紀以前、日本に文字といえば記号のような象形文字みたいなものしかなかったのだ。文字は文化の基本的要素、記録だけではなく思考につながるのだが。
それに関連するが、大笑いしたのがネット上に多数存在する日ユ同祖論だ。
何でも日本人の祖先はユダヤ人らしい。その根本がユダヤ人と日本人は優秀だからだとの事。
おいおい、日本が馬で走ってた時代、欧米では機関車が走っていたぞ。日本最古の書である日本書紀でさえ、中国文化から習った文字で書かれているのにな。
ネット上の日ユ同祖論では、ドイツのホロコーストはユダヤ人優秀さに対する嫉妬から起きたらしい。誰だ、そんな事言い始めたのは? 
戦後間もない頃の教育では「ドイツではユダヤ人の持つ選民意識に敵意を感じていた」って話もあったが、そこは歴史の途中で削られたらしい。
今の日本では根拠のない選民意識が蔓延している。経済的に落ちぶれ始めた防波堤、頼みの綱はユダヤ人か? 大体、そんな事を言うのは子供の頃勉強出来なかった大人だろうが。

 ちなみに彼らのいう優秀なユダヤ人とは白人系ユダヤ人のようだ。確かにノーベル賞をたくさん取っているのは白人系ユダヤ人、キリストの肖像画でさえ白人だ。
三〇〇〇年前にエジプトを追い出されたユダヤ人はカナンの地を目指した。死海文書や聖書にも色んな肌の色の人種がいたと書かれているので限定は出来ないが、現在のイスラエルや死海周辺を考えれば、まず中東の人であった事は間違いない。聖職者を含め白人だらけってのは奇異だ。
大河の周辺で世界中に文明が起き、文化が生まれたのだろうが、統制をとる為に同じ価値観を持つ宗教が必要だったのは想像に難くない。旧約聖書に書かれているのは民族繁栄の為の訓戒であったり、異端に対する制裁だったりする。決して世界平和でないどころか、異教徒は殺しても良い、それが神の意志だともされる。宗教の本懐は同じ価値観を持つ者による世界征服だろう。
日ユ同祖論ではエホバが日本に生まれるって予言があるらしい。おいおい、エホバって絶対神ヤハウェの別称だぞ。宗教によりアラーになったり、キリストが言う主の事でもある。人間を作ったとされる絶対神が日本で生まれてくるなんて、世界中から「どうしようもない馬鹿だな」と笑われる。

世界に一つだけの花思想は勝手だが、少子化もある事だし、世界一厳しい移民法を改正して新しい血を入れないと、いつまでも劣性遺伝を繰り返す訳にはいかないだろう。
 ちなみに黄色人種と白人や黒人の混血の相性は良い。身近にも国際結婚した夫婦が何組かいるのだが、男女を問わず綺麗な子がうまれている。「本当にお前が産んだのか? 」と聞いた事さえある。血は遠い方が良いようだ。エキゾチックというより和洋折衷って感じかな。日本人同士では不可能な事。後、生まれた時からネイティブな言葉も身につくしな。こんな島国でアクセクするよりずっと楽も出来る。

PS.ついでに
 今日、知人の家に行くと、何やら玄関側の面に足場が架けてある。あれ? 壁の塗装でもしてるのかな? なんて思って近づくと二階にベランダのように木が敷いてある。はて?
知人に聞くと、屋根をちょっと修理する為に架けたらしいのだが、気に入ったのか? 崩さずにベランダを増設して使っているらしい。おいおい、これから一生工事中のような外観の家で暮らすつもりだろうか?
趣味悪いぞ、センスの欠片もねえなと言いたいところだが、一〇も上の先輩だったので、本人が気づくまで放っておく事にした。そのうち世間との差異に気づき改心するやもしれぬ。
今回、訪れたのには理由がある。五〇〇リットルの冷蔵庫の処分を手伝ってくれと言われたからだ。重くて動かんと言うので「そんな事ないだろ、入れたんだから出せるさ」って言った手前もあった。
台所に行くと、人の背より高い冷蔵庫があった。しかし、下に車輪がついているので動かない事はないようだ。ってキッチンとの間が通らないだろ? 嫌、測ったから出るはずだと知人は言う。元建築屋の習性だろうか、何でもスケールで測る癖があるのだが、老いからか扉がアール状に膨れている事実を見逃している。結局、隣の冷蔵庫を移動し外まで出したのだが、積めるかな? って言うので私は横倒しにしてトラックの荷台に引っ掛け押した。テコの応用で一〇〇キロ位の物なら、一人でも簡単に積める。こんな物、力で持ち上げようって方が間違っている。どうせリサイクル券買って集荷場に持って行って捨ててもらう物だ。傷がつこうが構わない。
結局、ついでに息子の部屋にある小さい冷蔵庫も一緒にと言うので二台の冷蔵庫をトラックに乗せ運ぶ事になった。
集荷場に向かう途中で助手席の知人は最近のニュースについて話し出した。
教師同士のイジメ事件だ。教師が教師をイジメてたらしいのだが、謝罪会見で加害者側がまるで被害者めいた発言をしたらしく世も末だなと言う。果たしてそうだろうか?
「大学を出て、すぐに『先生』と呼ばれる人々に人徳を求めたって無理。大昔から教師の実年齢+生徒の年齢÷2=教師の精神年齢って言われてたものだ」
 と答えた。何でそんな事を言い切れるかというと、実は昔、学校向けに教科書の販売をしていた事がある。教師の精神年齢の話は教材会社では常識だ。実際、小学校、中学校、高校と教師の精神年齢差は歴然であった。聖職者であろうはずもない、根拠自体ない幻想だ。
まあ、教師に限らず、職場には職場なりの伝統や雰囲気、教育があって馴染まない事には円滑に仕事は出来ない。楽な仕事もあれば、キツイ仕事もある。頑張っているのに儲けられない会社も沢山ある。途中、急速に傾く会社だって多い。
知人はずっとパネル製造会社をやっていた。元々、真面目な技術者だったのだが、度重なる不況や取り巻く環境に翻弄され続けた人だ。付き合いは事業を始めた頃からで、途中、一度倒産した事もあり、私も随分危害を被ったのだが、その後も付き合いが続いている稀な人。
しかし、万事は塞翁が馬なのかもしれないが、最近は随分落ち着いている。パネル工場を手放して引き継ぎ先が決まったのもあるが(なんと新しく事業を始めたのも別の知人であった。世間は狭すぎる)日向にある親の実家が売れて金が入ったのが原因らしい。
一時間程で冷蔵庫廃棄作業は終わったのだが「これお礼」と言って五〇〇〇円くれた。手伝ってやるから幾らかよこせとは言っていたものの、ガソリン代一〇〇〇円でもいいやって思っていたのだが。
金に困った経験のある人は金を大事にするという考えがあるが、あれは疑わしい。例えば苦労して貯金一〇〇万も無い人が突然、遺産や保険金で三〇〇万手にいれたとしよう。すると一時的に金の呪縛が解かれた錯覚を持つ。今度は三〇〇万あるからって気分になってしまう。よく考えれば三〇〇万なんて日本人の生活からすれば一年位で使い切ってしまう金額なのだが。
景気の根源はそれなのかもしれない。持っていれば使うのだが、目に見えて持ち金が増えない以上、消費しようとは思わない。

思ったより早く終わったので知人と別れ、仕事をしようと車を走らせていたら、後ろからクラクションを鳴らされた。今流行りの煽り運転だろうか? であれば戦闘準備をせねばなるまい。幸い仕事で使うバールやモンキーレンチあらゆる物が車に載っている。いつでもおいで。
ふとバックミラーを見ると後輩夫婦であった。なんだ、エキサイティングな状況は回避された。(そもそもドライブレコーダに頼って警察に泣きつく奴は腰抜け。もし女子供の同乗者がいたらどうする? 彼らに危害が及ぶ恐れもある。弱い者を守れぬ男は存在理由などないわ。仮に「死んでも法を守りなさい」っていう親がいれば、それは親ではない。もし、体力に自信がないのならバット位は積んどくべきだ。(命を守る行動を取ってください…… )グローブとボールでも一緒に積んどけばアリバイには十分だろう)

その後、すぐ近くのディスカウントストアーの駐車場に入り話をする事に。
いつものように何してんの? って話から、後輩が。
「最近、テレビでもCMしてる過払い金請求しようかな? 」
 聞いたところ、結構、今まで払っているらしい。
「でも、過払い金請求したら、そのカード使えなくなるぞ」
 と私は言った。当たり前だ、過払い金をよこせと弁護士を使って戦うのに、カード会社もそんな面倒な奴と付き合いはしたくない。もう一つはそれで完済出来るかどうか? 系列のカード会社のカードは作れないだろうし、そこら辺も考えておかないとな。まるで何のリスクもないような宣伝って多いがテレビをつければ組織販売やサラ金、パチンコ屋だの胡散臭いものだらけだ。最近はそんな人生の落とし穴的な会社が「感謝、勇気、繋がり」と挙ってイメージCMを流している。
 貧乏人が澱んだ精神の元、世の中の偽善に付き合おうとするから、ストレスになり捻れるのだ。それどころじゃねえだろ。
 まあ、どうでもいいが。
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