第9話

文字数 2,613文字

 「参中ファイト」

 ~M谷化学反応~
 さあここは理科室、授業は理科の実験であります。
男女混合の6名ずつに分かれてのグループにおいて、実験が今まさに行われようとしております。
僕は大変不本意ではあるのですが、M谷と同じグループになってしまいました。
決して僕が望んだわけではありません、出席番号順という、理不尽な法の不備とでも申しましょうか。
各グループ実験開始に備えまして、必要な器材を集めている最中であります。
 おーっと、ここでM谷が立ち上がった!!
意気揚々と、俺が1人で済ませるからお前たちは下がっていろと、そう言いたいのか非常に気持ち悪く腰をくねらせた動きで、手をプラプラさせております。
担当教師の元に出向いていき、この実験を仕切るのはお前じゃない、俺がルールなんだと、俺が取り仕切るのだと、背中が語っております。
 数分が経過しました。
さあさあM谷が戻ってきたぞ、両手いっぱいに、大量のビーカーを抱えて戻ってまいりました。
そのビーカーの中身は、蒸留水であります。
何と6個のビーカーすべての中身が、蒸留水で満たされております。
確か各グループにつき、蒸留水は1個ずつでよかったはずではなかったか、何故6個も蒸留水を持ってきたのか!?
まったくもって意味がわかりません!
はっきり言って邪魔であります!!
 それを目にした同じグループの女子、M田が物申します。
「蒸留水、こんなにいらないじゃないのよ。」
するとその発言に、M谷の目つきが明らかに変わりました。
「何?貴様!貴様貴様貴様ーーーーー!!」
M谷の低い沸点に触れてしまったのでしょうか、たちまち大激怒であります。
そうしてそのままにM谷、M田の下敷きをひったくりました!!
そのまま自らの膝に勢い良く振り下ろし、あろうことかM谷、M田の下敷きを叩き割ってしまいましたーー!!
何という暴挙!
何というお馬鹿さん!!
「何するのよ!!」
これにはM田も黙っていません、M谷を思い切り突き飛ばしました!!
平均的な女子の腕力M田の突き飛ばしに、M谷は思いのほか吹っ飛んでいます。
予想外の反撃だったのか、もう完全に怒ったとM谷、M田の首をあろうことか締めにかかりました!!
M谷のネックハンギングツリーが、M田に炸裂してはいますが、腕力が足りないのか持ち上げることはできていません。
こうなるともう、地獄絵図であります。
M田は泣き出し、同じグループの女子2名によってM谷の暴虐から引き剥がされました。
そのままM田をたしなめながら、保健室に連れて行くようであり、退場と相成りました。
M谷はといいますと、当然のごとく教師に呼び出されお説教タイムに突入、クラス中の女子からの凄まじいブーイングの嵐にさらされております。
 残された僕は、もう1人の同じグループの男子と、何事もなかったかのように、ひたすら実験を行っていったのでありました。


 ~調理実習のM谷消失マジック~
 土曜日の午前中の家庭科室では、今まさに調理実習が開始されようとしております。
この日のお題はハンバーグ、またも男女数名ずつのグループに分かれまして、調理開始であります。
そして幸か不幸か、多分に後者と思われますが、僕はまたしてもM谷と同じグループになってしまいました。
神はまたも、僕に試練を与えようとおっしゃるのでありましょうか?
 さあ今日も何かをやらかす気満々のM谷が、今ロープに足をかけ颯爽と登場であります。
エプロン姿が気持ち悪い、マッドサイエンティストにしか見えません。
しかしM谷の登場に、同じグループの女子連中も黙ってはおりません。
早々にM谷が巻き起こすでありましょう危機の可能性を察知したのか、調理班から外すフォーメーションを形成し、M谷は皿洗いでもやっていろ、後片付け担当に追いやることに成功しましたのは、まさしく女の執念のなせる業と申しましょうか、大変かしこいであります。
その甲斐もありましょうか、調理はことのほか順調に進んでおります。
食欲をそそられる良い匂いに包まれて、丹念に焼き上げられましたハンバーグが今、完成いたしました。
付け合わせを作っていた僕も、これにはホッと胸を撫で下ろしたところであります。
手を合わせまして、さあいただきましょう。
 おーっとだがここで、M谷の食べ方が非常に汚いーー!!
クチャクチャと音を盛大に立てながら咀嚼し、皿の周りには食べかすを撒き散らかしております!!
これには同じくグループの男女共、激しくげんなりだ!!
食欲がなくなるので皆一様にM谷から目を逸らしております。
そのような状況下におきましても、せっかく作ったハンバーグをおいしく食べなければならないのは、ある種の拷問のようであります!!
それでも何とか無事に食事を済ませ、残す行程は後片付けのみとなりました。
 ここまでおとなしくさせられておりましたM谷ですから、やはりここで明らかに張り切りだしたぞ!
1人で皿を壊さんばかりに、激しい皿洗いをこなしているようであります!!
僕はこうなってしまいましては、出来る限り知らんぷりを決め込みまして、他の皆と一緒に傍観していくよりほかはありません。

 すべての行程が終わりまして、調理実習も無事に終了かというところでありますが、ここで家庭科の教師が口を開きました。
「3班、お皿が2枚足りませんよ。」
これは一体どうしたことでありましょうか、僕らのグループの返却されました皿の数が足りないというのであります。
こと後片付けにおきましては、皿にはM谷しか触れてはいないはずでありまして、それが足りないということの意味しますところは。
僕も含めましたグループの全員と、教師やクラス中の視線が、M谷の方に注がれました!!
「お・・・俺は何も、し知らへんどすえ・・。」
明らかに目が泳いでいる!!
明らかに嘘をついいている!!
 不可解な事態に発展いたしましたが、家庭科教師が問い詰めましたところ、皿洗い中にM谷が2枚の皿を割ってしまい、証拠を隠滅したとのことであります。
案の定M谷が座っておりました座席の机の隙間から、割れた皿が2枚出て来たのであります。
うわあー姑息だ、卑怯者の所業であります。

 M谷よ、君は本当に一体何故、グループ活動というものをまともにできないのでありましょうか!?

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登場人物紹介

僕(本田)・・・1997年4月から2000年3月まで参中に通い、ありとあらゆるトラウマを背負う。野球部所属。

Y下・・・同級生男子、野球部を通して出会った終生の親友。

O田・・・同級生男子。天然な性格で癒し系、僕の終生の親友3人衆の1人。

S木・・・同級生男子。プロ野球の知識が豊富な僕のプロ野球仲間で、終生の親友3人衆の1人。

T中先生・・・野球部の顧問であり社会科の教師。鬼の厳しさを持っており、僕は戦々恐々の思いを抱く。

M谷・・・入学式で倒れたところを僕が助けたがために、付きまとわれる羽目に。僕の参中での3年間の命運を、ある意味大きく握って狂わせた元凶たる同級性男子。

S倉・・・同級生男子で不良グループの中心的人物。何かと理不尽な暴力が絶えない人物。

O倉・・・S倉と共に不良グループの中核を担っていた同級生男子。一方的な肉体言語を持って、学内を闊歩している。

OS・・・同級生女子。僕が恋焦がれていた女子だった。

K田先生・・・ハゲ頭の音楽教師。個性的な強烈なキャラを持ったオッサン。

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