10.第一回戦・入場

文字数 2,068文字

「さ~あ、始まりました妖精王国と魔神王国の代表戦!


司会は私、リーン・クリケットがお送りさせていただきます!」

実況まで!
「それでは選手入場!


まずは魔神王サイド・・・時空神アナザの直系神属!


女神アーマ・シュクレイム!」





あ・・・わ、す、すごい観客・・・





いきなりアーマからか!



アーマが出てきたのは別乃世たちがいる観覧席の下の出入口。

通路がそのまま闘技場のリングへと繋がっていた。








・・・・・・





緊張しているな・・・
そりゃあそうだ。

これだけの大舞台だからな。

多かれ少なかれ、普通はああなる。

むぅ・・・
「続けて妖精王サイド!


フェアリア王城勤務のメイド、コニー・リトルキャーロット!」





・・・・・・





・・・メイド?
「さてこのリトルキャーロット。

ただの一メイドではありますが、魔神王とは浅からぬ因縁があり、エントリーしております!」

え?
「魔神王への書簡や贈答品を贈り届けたのが、何を隠そう彼女の幼い弟バーニィくん。


魔神王がシカトしたため、きちんと仕事はこなしていたのに上司からサボりを疑われて泣かされたとのことです!」

おねーちゃーん、がんばってー





・・・・・・(ぐっ)





「おおっ!

弟バーニィくんからの応援に、無言のサムアップで答えました!


これはやる気が伺えます!」

ああ、お菓子を持ってきてくれたとかいうウサギさん?

俺のせいではないと言いたいところだが、そうもいかないもどかしさ・・・


非常に申し訳ない。





あの方のお姉さんでしたか・・・


申し訳ありませんでした。

後ほど、あらためてきちんとしたお詫びをさせていただきたいと思います。

ん?いいよ、べつに。

私も弟も全然気にしてないし。

え?
何だか知らないけど、そういうことにしておくようにと王様から言われてるのよね。
え?え?
理由は分からないけど、私をあなたと戦わせたかったみたい。


・・・まぁ、どうせろくでもない理由に決まってるけどね。

そ、そんなことは・・・

(私に合わせた対戦相手を用意して下さったんでしょうか?)





「さぁ、かわいい弟の雪辱戦!


気になる対戦ルールは、実は私も知らされてはおりません!

知るのは我等が国王のみ!


ダイヘルム王、御解説願います!」

うむ。


・・・道具方!

「決戦の場」を持てい!

「「あいさー!」」
「おお、ダイヘルム王の号令で、裏方の皆さんが何やら運んで来ました!


あれは・・・部屋のセットでしょうか?」




リーンが言ったとおり、屈強な男たちがガラガラと運んできたのは車輪が付いた芝居のセット。

 

寝室だろうか?

大きめのベッドと簡易なテーブル、あとは落ち着いた調度品が飾られている。


それとまったく同じ部屋がもうひとつ。



・・・何?室内戦?
シチュエーションは早朝!

朝の目覚めから始まり、昼食前までとする!

・・・ん?
制限時間は一時間!

何を行っても自由である!

あの・・・戦うのでは?
制限時間終了後!


判定により、より多くの「いちゃらぶ」ポイントを獲得した側を勝者とする!


以上だ!





・・・いちゃらぶ?
・・・ほ~ら、ロクでもない理由だった。





・・・やらかしましたわ、あのお馬鹿。

誰か、この後の進行予定表を持ってきて!

あ、いえそれが・・・

試合や開会・閉会の予定時刻が書かれているだけでして・・・


詳細についてはダイヘルム王しか知りません。

・・・やられた。





あのー・・・

これで本当に勝負をするおつもりで?

おう!


ワシがルールだ!


文句のあるヤツはいるか!?

「異論?あろうはずがない!」


「さすがは我らがダイヘルム王!」


「コレを待っていた!」

えっ、すんなりいっちゃうの!?





・・・ここ最近の闘技場使用状況を。
あ、はい!

こちらです!

・・・「恋人バトル」、「教師と生徒」、「久し振りに会った幼馴染み」・・・

何ですかこれは?

あ、はい。

最近好評の夜の部ですね。


日中の血肉飛び散るバイオレンス路線とはうって変わってプラトニックなのがウリです。

私の見ていない間にそんなことを・・・

主催は?

残念ながら素性までは・・・

仮面を被った謎の紳士、「オオカブト」氏です。

・・・ダイヘルムですよね、それ。
え、いや、その~、わたしからは何とも・・・
国民が勝手にやっているのならばいざ知らず、国王が率先してこのようなことを・・・


隣国に知れたら恥ですわ・・・

あの~、それがですね、隣国のこくお・・・いや、それなりの身分の方々もお忍びでよく観戦に来られておりましてですね。


仮面を被って「オオカブト」氏と歓談しておられたりしています。

・・・世も末ですわ。





えーと・・・つまり私はどうすれば?
「あのセットの中で」「あんたんとこの王様と」「思う様にイチャイチャ」すればいいのよ。
・・・・・・!







舞台は整った!

ゆくぞ、魔神王!



ダイヘルムが玉座に設置された水晶玉に手をかざす。

すると、観覧席から闘技場に続く光の階段が二対現れた。



・・・勝負とあらば仕方ない。



意を決し、階段へ一歩踏み出す別乃世。



え?え?



それを確認し、満足げに笑みを浮かべるダイヘルム。



そうだ魔神王。

それでこそ、だ。



続くダイヘルムもまた、闘技場への階段を踏みしめる。



アーマ・・・



その歩みに、淀みはない。



・・・いちゃらぶるぞ!!!







ええええええええ!?
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登場人物紹介

【魔神】

 別乃世・望(コトノヨ・ノゾム)


 世を憂い、異世界への転生を強く望んだ男。

 女神・悪魔・天使の力をその身に受け「魔神」と化す。

 その後は魔界の一角に領土を与えられ、一国一城の主となる。

【女神】

 アーマ・シュクレイム


 時空神アナザを主神とする女神。

 「魔神」別乃世・望を生み出すきっかけとなった責を問われて神界から魔界へ。

 別乃世・望の監視兼補佐役として送り込まれるが、実質追放処分である。


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【悪魔】

 トリカラ・マイウー


 強欲を司る地獄の第六団に所属する悪魔。

 死霊を操る邪法を司り、結果として「魔神」誕生のきっかけを創ることとなった。

 別乃世・望を監視する任を受け外交員として送り込まれるが、実質左遷である。

 

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【天使】

 メンタイ・ハクマイナー


 唯一神に仕えていた元天使。

 別乃世に力を奪われ魔界に身を堕としたが、神への信仰は失われてはいない。

 力を取り戻し、天界へ還る日を夢見る。


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【ゾンビ・クィーン】

 阿波津・玲子


別乃世に噛まれることによりゾンビと化した残虐少女。

他人の生命を屁とも思わぬ性根から、自らも多くのゾンビを生み出した。

天使との戦いで魔界に堕ち、別乃世の屋敷で使用人として無理矢理働いている。

【悪魔祓い】

 シスター・カッドロゥ


天使メンタイ・ハクマイナーに仕える使徒。

秀でた身体能力に神霊術を組み合わせ、幾多の悪魔を葬り去ってきた。

阿波津・玲子に食われ、魔界に堕ちた今も従順に神への忠誠を誓っている。

【妖精王】

 ヘラクレイス・ダイヘルム


平和主義の妖精王国フェアリア・フォーレストの王。

重い甲冑を身に纏いながらも暴風魔法を駆使した飛翔方法で高速移動を可能とする。

拳で殴る派。酒と女をこよなく愛する道楽王。

【妖精女王】

 モルフォリア・インセクリーフ


妖精王国フェアリア・フォーレストの女王。

彼女が国を回していると言っても過言ではない。

沈着冷静・常識派。

【小妖精】

 エフェメロ・プテラ


専ら伝令に使われる手のひら大の小妖精。

色々と雑い。

【実況解説妖精】

    リーン・クリケット


フェアリア・フォーレスト闘技場の専業実況解説。

風鈴のように透き通った、非常に良い声の持ち主。

【兎型メイド】

 コニー・リトルキャーロット


フェアリア城で働く獣人メイド。

基本は人型で生活するが、激しい運動の際には兎娘と化す。

弟大好きっ子。

【お使い兎】

 バーニィ・リトルキャーロット


コニーの弟。

人間年齢に換算すると10歳前後。

真面目に仕事に取り組むが、何かしらの失敗はするタイプ。

【闇の精霊】

 クラインノウン・ナロゥフレイド


魔界のさらに深部に潜む闇の精霊・シェイドの末裔。

縁あってダイヘルムに忠誠を誓い、フェアリアの守護衛兵長を勤める。

騎士道精神に溢れる騎士の鑑のような淑女。

【ソードマスター】

 フィラデルフィア・ウォルザンパー


妖精王国建国初期の英雄の一人。

並ぶ者無き剣の達人と称され、その斬撃は空をも斬り裂く。

【ウィザード】

 サンディエゴ・ノウルーウィー


妖精王国建国初期の英雄の一人。

あらゆる魔術の祖と言われ、近代に残る数々の魔術の基礎を作った男。

【ナックルカイザー】

 ダラス・ガイナーズ


妖精王国建国初期の英雄の一人。

剣と魔法の入り乱れる戦乱の世を拳一つで渡り抜いた無手の拳王。

【古の卑しき魔王】

 コクオブラァ


妖精王国の王家にのみ伝えられし伝説の魔王。

英雄と並び称された4人の戦士達によりフェアリア・フォーレストの地に封印されていた。


その身は幾度滅ぼされようと蘇る、つまりは不死身である。

(フェアリア・フォーレスト女王、モルフォリア・インセクリーフ述)

【妖精国騎士団長】

  ヘイヤリッパー・ホワイトライン


  クラインノウンと双璧を成す、妖精王国攻めの要。

二刀を操る剣の達人。

忠義に厚く、すこぶる真面目。

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