13.第二回戦・天使の咆哮、闇の計略
文字数 4,527文字
二回戦ともなれば慣れたもの。
両組共に、滞りなく書斎のセットに入り込む。
意を決し、書斎に添えられた事務机に座る別乃世。
クラインノウンに促されるまま、別乃世は机に置かれていた書類の束をぱらぱらとめくってみる。
別乃世から差し出された書類の束をぱらぱらとめくる。
その内容は、特に理解に苦しむ特殊な専門用語もなく、学生程度の知識で十分に読み取れる報告書である。
試合開始の合図から暫く別乃世サイドのやり取りに耳を傾けていたダイヘルムが、鎧をがっちゃんがっちゃん言わせながら席に着く。
ダイヘルムが外した籠手をハクマイナーが受け取る。
女性部下に対するこの要望!
まさにセク・ハラ発言だ!
しかし、どういうつもりだダイヘルム!
秘書対決でセク・ハラ行動は得点に繋がらないことは明白!
これは一体・・・いや?
そうか・・・これはまさか・・・!」
「どうしたダイヘルム!」
「一戦取られて焦ったか?」
そう!
最終的に観客からの投票で勝敗の決まるこのシステム!
確かに相手の動きは封じられるがヘイトを集めては意味がない!
それに気付かぬはずはないが・・・
何か考えがあるのかダイヘルム!」
びーーーーーーー(じゅっ)
不意にダイヘルムに向けられた人差し指から放たれた光線。
額に命中したそれは肉の焼ける音と共に焦げ跡を作った。
びーーーーー
びーーーーー
びーーーーー
(じゅっじゅっじゅっ)
最終的には両の手の指をフルに使った10本の光線が逃げ回るダイヘルムを追い回す。
が、狭いセットの中では思うように避けられない。
結局のところ、ダイヘルムは亀のようにガードを固めるしかなくなった。
右手から発する光線を止め、別の術を発動する。
すると、ダイヘルムの周りの空間を囲うように、いくつもの小さな楕円形の歪みが現れる。
そして、その歪みに接した光線は、くんっと折れ曲がり、ガードを固めるダイヘルムの死角を突いてその身を焼き焦がす。
そう。
空間に現れた歪みは空気中の水分を凝縮して作り出したレンズ。
それを利用して光線を幾重にも屈折させ、ダイヘルムの守りをすり抜けその身を焼き焦がす。
繰り出される光線により、あの妖精王ダイヘルムが一方的に焼かれております!
ハクマイナー当人は精霊術と断言しておりましたが・・・
恥ずかしながら私、このような術は見たことがありません!
女王さま、解説を!」
ああ、はいはい。
光の要素の薄い魔界でそれを利用しようという発想に行き着いたのが、まずは中々素晴らしい。
それに加えて水の精霊を同時に操るあの手腕。
魔界で使うからこそあの程度の威力で済んでいますが、相応の場所で戦えばかなりの脅威となり得ることでしょう。
私の気も少しは晴れました」
「結局黙々と仕事こなしてたのと、国王焼いてただけじゃねぇか!」
「仕方なく採点はしてやったが・・・期待してたのと全然違うぞ!」