3.犯人は誰だ

文字数 1,559文字

しかしなぁ、本当にどうしたものか。
ちなみに、戦いになれば勝ち目はないぞ。

100%貴様の国は滅ぶ。

なんせ、兵すらいない上に貴様自身の戦闘力も皆無だからな。


無論、アタシは負けるつもりはないから向こうが泣いて謝るまでゲリラ戦を仕掛けるが。

あ、まぁ期待してたわけじゃあないけど、助けてはくれないんだな。

当然だ。

貴様の領地に居を構えてはいるが、アタシもアーマも外国人だ。

ヘタにでしゃばれば、ややこしくなる。

国なんかは正直どうでもいいが、負けたら痛くされそうだしなぁ・・・

謝って許してくれるなら、是非謝りたい。

ですが、当面相手方が何に対して怒っているのか分かりませんからね。
謝ることすらできんわけだ。
どうにもそこが引っ掛かるんだが・・・

向こうからの書簡は届いていないのか?

しょかん?



と、そこへ「こんこん」、と扉をノックする音。

そして返事をする間もなく勢い良く扉が開け放たれる。



はぁい♪
阿波津・玲子?

何のようだ。



現れたのは阿波津・玲子。

一月前の一件でゾンビとなって悪行を尽くした結果、別乃世と共に魔界へ堕ち、今現在はこの屋敷の使用人として働いている。



あ、私がお茶菓子をお願いしておいたんです。
美味しいクッキー、持ってきたよ?
お、すまんな。
 どういたしまして、ご主人さま♪
・・・なんだ、存外メイドが板についてるじゃあないか。

さすがはアタシの眷属だ。

大量食人鬼を屋敷に置いて行かれたときにはどうなることかと思ったが・・・

今のところは何とか食われずに済んでる。

ご主人さま、臭くて不味そうだから。
臭くはないわ!
ああ、でも本当に困りましたね。

時間もありませんし・・・


なんとかなるかは分かりませんが、とにかく妖精王に会いに行ってはどうでしょう?

戦争を回避するつもりならば、それもありだ。

移動時間を考えれば、すぐにでも出るべきではある。


アタシとしては一戦交えたいところだが、誰が後ろから糸を引いたか分からん状態では素直に楽しめん。

うむ、美味いなコレ(ぽりぽり)。
でしょ?
貴様・・・

一番の当事者が呑気に菓子など食いおって・・・

・・・・・・(ぽりぽり)
でも、美味いぞこれ(ぽりぽり)。
ええ、本当に(ぽりぽり)。
まぁ・・・確かに美味い(ぽりぽり)。



そんな場合ではないと思いつつも、ついついクッキーに手が伸びる。

議論を止め、しばしクッキーを楽しむ一同。


―――が、ふとトリィの手がぴたりと止まる。



美味いが・・・ちょっとまて。
(ぽりぽりぽり・・・)

どうした?

・・・貴様、これをどこで仕入れた?
いやオレは?

アーマが買ってきてくれたんじゃないのか?

え?

いえ、私じゃないですよ?

(ぽりぽりぽり)

魔界でこんな上等な菓子、そうそう手に入らんはずだ。


おい、阿波津・玲子。

これをどこから持ってきた?

これ?

なんだか、知らない人が持ってきてくれたの。

え?
マジかそれは。
・・・・・・(ぴたっ)
・・・なるほど、どんな風体のヤツだった?
えっとねぇ、うさぎさん?
う、うさぎさん?
二足歩行の?
うん、そうそう。
二足歩行?
なるほどな・・・
トリィ・・・?

なんだ、どうした?

今の話で何か分かったのか?

おい、阿波津・玲子。

一緒に渡されたものがあるはずだ。

どこにある?

え~?

あったかなぁ・・・?

書簡だ。

おそらく筒状のものに入れられていたはずだ。

しょかん?

・・・って、さっきも言っていたな、そういえば。

何だそれ?

簡単に言えば、まぁ手紙のことだ。

ちょっと上等な、な。

書簡と贈り物、って・・・

まさかトリィ・・・?

それしかあるまい。

阿波津・玲子、妖精王からの書簡を持ってこい。

え?
ああ、あの棒、ね?

あったあった♪

どこにある?

まさか・・・捨てた、か?

あー・・・・・・
おいっ、どうなんだ?
・・・・・・
・・・・・・
(・・・・・・ぽりぽりぽり)
・・・大丈夫!

(きっと)あるよ?

・・・ないな、これは。
ちょっとぉ!?
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登場人物紹介

【魔神】

 別乃世・望(コトノヨ・ノゾム)


 世を憂い、異世界への転生を強く望んだ男。

 女神・悪魔・天使の力をその身に受け「魔神」と化す。

 その後は魔界の一角に領土を与えられ、一国一城の主となる。

【女神】

 アーマ・シュクレイム


 時空神アナザを主神とする女神。

 「魔神」別乃世・望を生み出すきっかけとなった責を問われて神界から魔界へ。

 別乃世・望の監視兼補佐役として送り込まれるが、実質追放処分である。


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【悪魔】

 トリカラ・マイウー


 強欲を司る地獄の第六団に所属する悪魔。

 死霊を操る邪法を司り、結果として「魔神」誕生のきっかけを創ることとなった。

 別乃世・望を監視する任を受け外交員として送り込まれるが、実質左遷である。

 

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【天使】

 メンタイ・ハクマイナー


 唯一神に仕えていた元天使。

 別乃世に力を奪われ魔界に身を堕としたが、神への信仰は失われてはいない。

 力を取り戻し、天界へ還る日を夢見る。


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【ゾンビ・クィーン】

 阿波津・玲子


別乃世に噛まれることによりゾンビと化した残虐少女。

他人の生命を屁とも思わぬ性根から、自らも多くのゾンビを生み出した。

天使との戦いで魔界に堕ち、別乃世の屋敷で使用人として無理矢理働いている。

【悪魔祓い】

 シスター・カッドロゥ


天使メンタイ・ハクマイナーに仕える使徒。

秀でた身体能力に神霊術を組み合わせ、幾多の悪魔を葬り去ってきた。

阿波津・玲子に食われ、魔界に堕ちた今も従順に神への忠誠を誓っている。

【妖精王】

 ヘラクレイス・ダイヘルム


平和主義の妖精王国フェアリア・フォーレストの王。

重い甲冑を身に纏いながらも暴風魔法を駆使した飛翔方法で高速移動を可能とする。

拳で殴る派。酒と女をこよなく愛する道楽王。

【妖精女王】

 モルフォリア・インセクリーフ


妖精王国フェアリア・フォーレストの女王。

彼女が国を回していると言っても過言ではない。

沈着冷静・常識派。

【小妖精】

 エフェメロ・プテラ


専ら伝令に使われる手のひら大の小妖精。

色々と雑い。

【実況解説妖精】

    リーン・クリケット


フェアリア・フォーレスト闘技場の専業実況解説。

風鈴のように透き通った、非常に良い声の持ち主。

【兎型メイド】

 コニー・リトルキャーロット


フェアリア城で働く獣人メイド。

基本は人型で生活するが、激しい運動の際には兎娘と化す。

弟大好きっ子。

【お使い兎】

 バーニィ・リトルキャーロット


コニーの弟。

人間年齢に換算すると10歳前後。

真面目に仕事に取り組むが、何かしらの失敗はするタイプ。

【闇の精霊】

 クラインノウン・ナロゥフレイド


魔界のさらに深部に潜む闇の精霊・シェイドの末裔。

縁あってダイヘルムに忠誠を誓い、フェアリアの守護衛兵長を勤める。

騎士道精神に溢れる騎士の鑑のような淑女。

【ソードマスター】

 フィラデルフィア・ウォルザンパー


妖精王国建国初期の英雄の一人。

並ぶ者無き剣の達人と称され、その斬撃は空をも斬り裂く。

【ウィザード】

 サンディエゴ・ノウルーウィー


妖精王国建国初期の英雄の一人。

あらゆる魔術の祖と言われ、近代に残る数々の魔術の基礎を作った男。

【ナックルカイザー】

 ダラス・ガイナーズ


妖精王国建国初期の英雄の一人。

剣と魔法の入り乱れる戦乱の世を拳一つで渡り抜いた無手の拳王。

【古の卑しき魔王】

 コクオブラァ


妖精王国の王家にのみ伝えられし伝説の魔王。

英雄と並び称された4人の戦士達によりフェアリア・フォーレストの地に封印されていた。


その身は幾度滅ぼされようと蘇る、つまりは不死身である。

(フェアリア・フォーレスト女王、モルフォリア・インセクリーフ述)

【妖精国騎士団長】

  ヘイヤリッパー・ホワイトライン


  クラインノウンと双璧を成す、妖精王国攻めの要。

二刀を操る剣の達人。

忠義に厚く、すこぶる真面目。

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