9.開戦
文字数 3,206文字
翌日。
普段は兵士の休憩場所として使われているそこで、一堂は声が掛かるのを待っていた。
昨日あの後・・・
案内されたのは町外れに設置された大規模なコロシアム。
そこに用意された控え室で、別乃世たちは呼び出しが掛かるまで待機を命じられている。
遠くから聞こえるざわめき。
その道を怯えも不安も感じさせず、ただ淡々と歩みを進める別乃世。
光の指すそこに一歩踏み出すと同時に、割れんばかりの歓声が別乃世に浴びせられた。
「あいつが魔神王か!」
「随分と弱そうなヤツだな」
「ナメた真似しやがって、やっちまえ!」
いや、歓声ではなく怒声、罵詈雑言のようだ。
声のした方を見やると、そこには悠然と佇むダイヘルムの姿が。
別乃世の出てきた通路は闘技場の二階に広がる観覧席の中でも特等席、本来は王と王妃が座るであろう二つの玉座が設置された場所であった。
ダイヘルムの一声により、うってかわって会場が静寂に包まれる。
「面と向かって歯向かってこれるヤツなんていないわな」
「おう、オレもそう思ってた」
「ああ、普通やろうとも出来るとも思わん、これは盲点だったな」
「おう、オレもそう思ってた」
「闘技場に招き入れたんだ、そりゃそうだろう」
「あれだあれ、あれをやるんだよ」
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!
先程のものとは違う、侮蔑も怒りもない純粋な称賛の叫びが闘技場を埋め尽くす。
「きた!」
「おう、当然だ」
双方三名ずつ出し、戦いを行う!
時間制限は一試合一時間、優劣を決めるのはお前たちだ。
手元に魔杖は行き渡ってるな?
試合が終わったあとに「勝った」と思った方の名前を念じろ!
集約された数が後ろのパネルに表示される!
言われて別乃世が後ろを見上げると、そこには巨大な掲示板がそびえ立っていた。
「しかもガチの決闘だ!」
「国同士の決闘なんか、何百年ぶりだ?」
こうして。
魔神王と妖精王の戦いの火蓋は斬って落とされた。