12.第二回戦・入場

文字数 1,605文字

「それではまいります!

まずは魔神王サイド!


所属不明、経歴不明!

ついでにフル・ネームも秘密とのこと!


全てが謎に包まれた知的美女・・・

ハクマイナー!」

「・・・・・・」





フルネーム言ったらダメなのか?
どこから天使と知れるやも知れませんからね。


上級の魔属であれば天使の名に詳しい者もいるかもしれません。

それを恐れてのことでしょう。

それはそれで偽名じゃいかんのか?
天使ですからね、嘘は駄目なのでしょう。





「そして続くこちらは有名人!


魔界の深淵からの使者!

騎士団長と双璧をなす我が国の守りの要!


闇を司る精霊騎士、クラインノウン・ナロゥフレイド!」

・・・貴女ですか。
・・・貴様が相手か。

楽しめそうだ。





しかし、何か普通に出てきたな。

一回戦の有り様からして、絶対に出てこないと思ってたんだが。

ああ、控え室には勝敗しか伝えてないからな。

試合内容については全く知らんはずだ。

ああ、なるほど・・・





「両者の間に緊迫した空気が漂っております!

正に一触即発!


ではダイヘルム王、二回戦のルール説明をお願いします!」

「うむ。

一回戦は思わぬ展開により手に汗握る戦いであった・・・」





・・・まぁ、色々と予想外ではあったな。
うぅ・・・





「故に第二回戦についても、それに負けぬよう趣向を凝らしたいと思う。


此度の両者、共に武力については証を立てるまでもなく特上級





ふ・・・
勿体なき御言葉・・・





「その武勇を魅せるも大いに結構。


だが闘技場において、ただ武力を争うは些か飽きもあろう。


折角のこの舞台、この二人にしかできない戦いを見せて貰いたいとは思わぬか?」

「一理ある!」


「意義なし!」


「ならばどうする妖精王!」

「故に!此度二人が競い合うのは『気品』、そして『知性』!


より優雅に、より美しく仕事をこなした者を勝者とする!」

「おお!」


「アレか!」


「悪くはない」





・・・つまり?





秘書対決だ!


両者にはそれぞれワシらの秘書として仕えてもらい、その仕事ぶりに対する評価により勝敗を決する!」





・・・秘書?
秘書?





「だが試されるのは秘書としての能力であり、日頃からの忠誠を競うものではない。


故に『慣れ』という要因を排除するため、互いの仕える王をクロスチェンジするものとする!」





クロス?
チェンジ?





・・・もう知りませんわ。
ま・・・まぁまぁ女王さま。

王様的にも気を遣って、割と控え目の試合内容を選んでおられますよ?

これで?控え目?


普段のあなた方が何をしているのか、これまでの間何をしてきたのか・・・


後でみっちりと精査させていただきます。

(あ。いらないこと言っちゃった)





「即ち!

ハクマイナーはワシを、クラインノウンは魔神王を補佐し、その能力を示して貰う!」





なるほど・・・承知。
・・・本気でそのような勝負を?
自信がないか?

ならば早々に手を挙げることだな。


試合が始まってからでは恥をかくだけだぞ?

・・・何を馬鹿なことを。

私が言ったのは「そのような容易い事で勝敗を決しても?」という意味です。


貴女の方こそ勝ち目はありません。

降参するならお早めにどうぞ?

「両者に異存はないようだな。


ならば開始だ!


道具方!

次のステージをもてい!」

「「「おぅらーい!」」」



ダイヘルムの合図を受け、再び現れた裏方たちが第一回戦のセットをがらがらと片付け、また別の裏方達が新しいセットをがらがらと運んでくる。



「見てのとおり、次の舞台は書斎だ!」



動きに幅を持たせるためであろう、運ばれてきたのはスペースに余裕のある書斎。


事務作業を行うための立派な机と、来客用の応接テーブルがひとつ。


壁際には本がぎっしりと詰められた本棚が並んでいる。



「制限時間は先程と同じく一時間!


シチュエーションは昼食後から夕方頃まで!


終了後、良かったと思う方に点を入れよ!


以上!」





あ、何かすんなりと始まってしまったな。
意外と素直に承諾されましたね、ハクマイナーさん。
まぁ、こうなっては仕方ない。

行ってくるぞ、アーマ!

あ、はい!

頑張ってください、別乃世さん!

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登場人物紹介

【魔神】

 別乃世・望(コトノヨ・ノゾム)


 世を憂い、異世界への転生を強く望んだ男。

 女神・悪魔・天使の力をその身に受け「魔神」と化す。

 その後は魔界の一角に領土を与えられ、一国一城の主となる。

【女神】

 アーマ・シュクレイム


 時空神アナザを主神とする女神。

 「魔神」別乃世・望を生み出すきっかけとなった責を問われて神界から魔界へ。

 別乃世・望の監視兼補佐役として送り込まれるが、実質追放処分である。


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【悪魔】

 トリカラ・マイウー


 強欲を司る地獄の第六団に所属する悪魔。

 死霊を操る邪法を司り、結果として「魔神」誕生のきっかけを創ることとなった。

 別乃世・望を監視する任を受け外交員として送り込まれるが、実質左遷である。

 

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【天使】

 メンタイ・ハクマイナー


 唯一神に仕えていた元天使。

 別乃世に力を奪われ魔界に身を堕としたが、神への信仰は失われてはいない。

 力を取り戻し、天界へ還る日を夢見る。


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【ゾンビ・クィーン】

 阿波津・玲子


別乃世に噛まれることによりゾンビと化した残虐少女。

他人の生命を屁とも思わぬ性根から、自らも多くのゾンビを生み出した。

天使との戦いで魔界に堕ち、別乃世の屋敷で使用人として無理矢理働いている。

【悪魔祓い】

 シスター・カッドロゥ


天使メンタイ・ハクマイナーに仕える使徒。

秀でた身体能力に神霊術を組み合わせ、幾多の悪魔を葬り去ってきた。

阿波津・玲子に食われ、魔界に堕ちた今も従順に神への忠誠を誓っている。

【妖精王】

 ヘラクレイス・ダイヘルム


平和主義の妖精王国フェアリア・フォーレストの王。

重い甲冑を身に纏いながらも暴風魔法を駆使した飛翔方法で高速移動を可能とする。

拳で殴る派。酒と女をこよなく愛する道楽王。

【妖精女王】

 モルフォリア・インセクリーフ


妖精王国フェアリア・フォーレストの女王。

彼女が国を回していると言っても過言ではない。

沈着冷静・常識派。

【小妖精】

 エフェメロ・プテラ


専ら伝令に使われる手のひら大の小妖精。

色々と雑い。

【実況解説妖精】

    リーン・クリケット


フェアリア・フォーレスト闘技場の専業実況解説。

風鈴のように透き通った、非常に良い声の持ち主。

【兎型メイド】

 コニー・リトルキャーロット


フェアリア城で働く獣人メイド。

基本は人型で生活するが、激しい運動の際には兎娘と化す。

弟大好きっ子。

【お使い兎】

 バーニィ・リトルキャーロット


コニーの弟。

人間年齢に換算すると10歳前後。

真面目に仕事に取り組むが、何かしらの失敗はするタイプ。

【闇の精霊】

 クラインノウン・ナロゥフレイド


魔界のさらに深部に潜む闇の精霊・シェイドの末裔。

縁あってダイヘルムに忠誠を誓い、フェアリアの守護衛兵長を勤める。

騎士道精神に溢れる騎士の鑑のような淑女。

【ソードマスター】

 フィラデルフィア・ウォルザンパー


妖精王国建国初期の英雄の一人。

並ぶ者無き剣の達人と称され、その斬撃は空をも斬り裂く。

【ウィザード】

 サンディエゴ・ノウルーウィー


妖精王国建国初期の英雄の一人。

あらゆる魔術の祖と言われ、近代に残る数々の魔術の基礎を作った男。

【ナックルカイザー】

 ダラス・ガイナーズ


妖精王国建国初期の英雄の一人。

剣と魔法の入り乱れる戦乱の世を拳一つで渡り抜いた無手の拳王。

【古の卑しき魔王】

 コクオブラァ


妖精王国の王家にのみ伝えられし伝説の魔王。

英雄と並び称された4人の戦士達によりフェアリア・フォーレストの地に封印されていた。


その身は幾度滅ぼされようと蘇る、つまりは不死身である。

(フェアリア・フォーレスト女王、モルフォリア・インセクリーフ述)

【妖精国騎士団長】

  ヘイヤリッパー・ホワイトライン


  クラインノウンと双璧を成す、妖精王国攻めの要。

二刀を操る剣の達人。

忠義に厚く、すこぶる真面目。

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