6.妖精王ヘラクレイス・ダイヘルム

文字数 2,181文字

ま、待ってください!

私たちは、その、話し合いに・・・

観光と偽って、か?
それは中々痛いところを突く。
ほら、なんか拗れてるじゃん!
貴様らの与する魔神の国と我がフェアリア・フォーレストがどのような状況か、知らぬはずもあるまい。


主力とされている悪魔と神魔・・・

後ろの女は分からぬが、かなりの力を感じるな。

只者ではあるまい。

ご心配なく。

私と致しましては、特にこの国に用事はありません。
菓子はいいのか?
む・・・

あとは何だ、何の力も感じない・・・

そこの男は奴隷か何かか?

え、どれい?
奴隷制度を認めぬ我が国に、奴隷を連れ込もうとはどこまでも嘗めた真似を。
あー、ちょっと・・・
主力二名に未確認戦力一名。

自国に残したまともな戦力など魔神のみであろう?


その程度で我が国の、1000の精鋭部隊を何とかできるとでも?


貴様ら程度で我が王城を落とせるとでも思うてか!

すいません、その最後の戦力、魔神がここに。
・・・む?

後ろの女か?

男であると聞いているが・・・

いや、そこの奴隷の方だ。
奴隷じゃないですよ、トリィ!
・・・貴様が?魔神?
はい、そう呼ばれております。
・・・貴様、自国に残した戦力はどうなっている?
使用人のゾンビ数名と客人?が一名。
・・・・・・
・・・・・・
嘗めておるのか貴様!
いや、嘗めているというか、謝・・・
おっと!(どかっ)
痛い!

何!?

こんなザコと話をする必要はない。

どうせ、こいつらは王城に招き入れるしかないんだからな。

雑魚・・・だと?

煽らないで、トリィ!

もう・・・


衛兵さん、ご無礼は申し訳ありませんでした。

ですが、話し合いに来たというのは偽りのない事実です。

どうか、王にお目通りを・・・

それが叶うと思うのか?

今に増援がくる。

貴様らは町に入ることすら叶わぬわ。

伝れ~い!
む。
来たか。

王様からの指令!

「客人を王城へご案内するように」!

以上!

ん・・・?
な・・・

ま・・・まて、それは確かか!?

もち!
馬鹿な、王は一体何を・・・あ!

いやまさか、さすがにそんな・・・

おい、結局どうなんだ?

行っていいのか?

それとも・・・王の命令を無視してアタシたちを追い返すか?

ぐ・・・致し方あるまい。

だが、追加の伝令だ。


未確認戦力一名と魔神王の同行あり。

城門の門番にその旨伝え、再度指示を仰げ。


加えて城までの案内を命ずる。

こいつらを連れていけ!

へー、魔神王?

どれどれ?

はい、魔神王?です。
・・・・・・

ら、らじゃー!

何その残念なものを見る目!







良かったですね。

何とか王様に会えそうです。

あとは誠心誠意謝れば、きっと許してくれますよ!

しかし何だ、門番の剣幕の割には随分あっさり通れたな。
平和主義を謳う国の国王だ。

話し合いに来たという使者を追い返す訳にもいくまい。

仮に闇討ちを危惧していたとしても、大国としては国民ゼロの弱小国家に畏れを成したとも言えんだろう。


結局のところ、奴らは通すしかないんだよ。

あ~まぁ、そうねぇ・・・

まぁいいけど。

・・・何だ?

言いたいことがあるなら言ってみろ。

うん、いいのいいの。

王様に直接会ってみれば分かるから♪

そう言われると気になる・・・
あ、城門が見えてきましたよ!



立派にそびえ立つ城門。

その前には、先程と同じように鎧に身を包んだ衛兵が一人。



魔神王一向だな。

話は聞いている。

では王の元へ・・・

その前に伝れ~い、追加!
む?







――――――
――――――







何やら話し込んでおられますが・・・

大丈夫でしょうか?

ここまで来たら、もう選択肢はあるまい。

拒否するというであれば、力づくで入るまでだ。

聞こえるところでそういう発言はやめて!

―――お待たせした。

確認を終えたので、改めて歓迎する。


城内の案内は引き続きこの者が行うので、付いて行って頂きたい。

あ、大丈夫みたいです!
ちっ・・・
そういう態度、本当にやめて!
じゃあ、わたしに付いてきてね~
よろしくお願いします。



小さな妖精に案内され、王城の中を進む。

やがて一向は大きな扉の前に辿り着く。



は~い。

謁見の間、ご到着~



門の前には黒い人影、いや「影そのもの」といった何かが立っていた。



来たか、魔神王。

我等が王はこの中でお待ちだ。

うぉ、しゃべった!
こ、別乃世さん、失礼ですよ?
ほう、珍しい。

闇の精霊シェイドだな。

ああ、すまん。

ついびっくりて、申し訳ない・・・


精霊というと・・・

妖精とはまた別物なのか?

構わんよ、無駄口も不要。

さっさと中に入れ。


間違っても粗相を働こうなどと思うな。

・・・最も、貴様らでは束になっても王には敵わんだろうがな。

ほう?
トリィ、また・・・!

乗らないでください。

お邪魔します。


ごごごごご・・・・・・


重い音を立てながら扉が開く。

そのまま中に入ると、そこにはぐるりと見渡すほどの広い空間が広がっていた。


赤い絨毯が敷き詰められた床に、十メートルはあろうかという高い天井。

そして、部屋の奥で玉座に鎮座する一人の老騎士。





言葉を発するまでもなく、その身から滲み出る重圧。

紛れもない、あれこそが―――



あれが―――?
ああ、アタシも直接見たことはないが間違いない。
妖精王ヘラクレイス・ダイヘルム―――


がちゃん


・・・



重厚な鎧の音を響かせて、王が身を起こす。

その眼はじっくりと別乃世を見据えていた。



あ―――



別乃世が言葉を発しようとした、その瞬間。



キサマかッ!!!

ワシの手紙に返事も寄越さずバックレおったコワッパは!!!



一瞬速く、妖精王の放った怒声が謁見の間にこだました。



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登場人物紹介

【魔神】

 別乃世・望(コトノヨ・ノゾム)


 世を憂い、異世界への転生を強く望んだ男。

 女神・悪魔・天使の力をその身に受け「魔神」と化す。

 その後は魔界の一角に領土を与えられ、一国一城の主となる。

【女神】

 アーマ・シュクレイム


 時空神アナザを主神とする女神。

 「魔神」別乃世・望を生み出すきっかけとなった責を問われて神界から魔界へ。

 別乃世・望の監視兼補佐役として送り込まれるが、実質追放処分である。


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【悪魔】

 トリカラ・マイウー


 強欲を司る地獄の第六団に所属する悪魔。

 死霊を操る邪法を司り、結果として「魔神」誕生のきっかけを創ることとなった。

 別乃世・望を監視する任を受け外交員として送り込まれるが、実質左遷である。

 

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【天使】

 メンタイ・ハクマイナー


 唯一神に仕えていた元天使。

 別乃世に力を奪われ魔界に身を堕としたが、神への信仰は失われてはいない。

 力を取り戻し、天界へ還る日を夢見る。


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【ゾンビ・クィーン】

 阿波津・玲子


別乃世に噛まれることによりゾンビと化した残虐少女。

他人の生命を屁とも思わぬ性根から、自らも多くのゾンビを生み出した。

天使との戦いで魔界に堕ち、別乃世の屋敷で使用人として無理矢理働いている。

【悪魔祓い】

 シスター・カッドロゥ


天使メンタイ・ハクマイナーに仕える使徒。

秀でた身体能力に神霊術を組み合わせ、幾多の悪魔を葬り去ってきた。

阿波津・玲子に食われ、魔界に堕ちた今も従順に神への忠誠を誓っている。

【妖精王】

 ヘラクレイス・ダイヘルム


平和主義の妖精王国フェアリア・フォーレストの王。

重い甲冑を身に纏いながらも暴風魔法を駆使した飛翔方法で高速移動を可能とする。

拳で殴る派。酒と女をこよなく愛する道楽王。

【妖精女王】

 モルフォリア・インセクリーフ


妖精王国フェアリア・フォーレストの女王。

彼女が国を回していると言っても過言ではない。

沈着冷静・常識派。

【小妖精】

 エフェメロ・プテラ


専ら伝令に使われる手のひら大の小妖精。

色々と雑い。

【実況解説妖精】

    リーン・クリケット


フェアリア・フォーレスト闘技場の専業実況解説。

風鈴のように透き通った、非常に良い声の持ち主。

【兎型メイド】

 コニー・リトルキャーロット


フェアリア城で働く獣人メイド。

基本は人型で生活するが、激しい運動の際には兎娘と化す。

弟大好きっ子。

【お使い兎】

 バーニィ・リトルキャーロット


コニーの弟。

人間年齢に換算すると10歳前後。

真面目に仕事に取り組むが、何かしらの失敗はするタイプ。

【闇の精霊】

 クラインノウン・ナロゥフレイド


魔界のさらに深部に潜む闇の精霊・シェイドの末裔。

縁あってダイヘルムに忠誠を誓い、フェアリアの守護衛兵長を勤める。

騎士道精神に溢れる騎士の鑑のような淑女。

【ソードマスター】

 フィラデルフィア・ウォルザンパー


妖精王国建国初期の英雄の一人。

並ぶ者無き剣の達人と称され、その斬撃は空をも斬り裂く。

【ウィザード】

 サンディエゴ・ノウルーウィー


妖精王国建国初期の英雄の一人。

あらゆる魔術の祖と言われ、近代に残る数々の魔術の基礎を作った男。

【ナックルカイザー】

 ダラス・ガイナーズ


妖精王国建国初期の英雄の一人。

剣と魔法の入り乱れる戦乱の世を拳一つで渡り抜いた無手の拳王。

【古の卑しき魔王】

 コクオブラァ


妖精王国の王家にのみ伝えられし伝説の魔王。

英雄と並び称された4人の戦士達によりフェアリア・フォーレストの地に封印されていた。


その身は幾度滅ぼされようと蘇る、つまりは不死身である。

(フェアリア・フォーレスト女王、モルフォリア・インセクリーフ述)

【妖精国騎士団長】

  ヘイヤリッパー・ホワイトライン


  クラインノウンと双璧を成す、妖精王国攻めの要。

二刀を操る剣の達人。

忠義に厚く、すこぶる真面目。

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