6.妖精王ヘラクレイス・ダイヘルム
文字数 2,181文字
ま、待ってください!
私たちは、その、話し合いに・・・
貴様らの与する魔神の国と我がフェアリア・フォーレストがどのような状況か、知らぬはずもあるまい。
主力とされている悪魔と神魔・・・
後ろの女は分からぬが、かなりの力を感じるな。
只者ではあるまい。
ご心配なく。
私と致しましては、特にこの国に用事はありません。
あとは何だ、何の力も感じない・・・
そこの男は奴隷か何かか?
奴隷制度を認めぬ我が国に、奴隷を連れ込もうとはどこまでも嘗めた真似を。
主力二名に未確認戦力一名。
自国に残したまともな戦力など魔神のみであろう?
その程度で我が国の、1000の精鋭部隊を何とかできるとでも?
貴様ら程度で我が王城を落とせるとでも思うてか!
・・・む?
後ろの女か?
男であると聞いているが・・・
こんなザコと話をする必要はない。
どうせ、こいつらは王城に招き入れるしかないんだからな。
煽らないで、トリィ!
もう・・・
衛兵さん、ご無礼は申し訳ありませんでした。
ですが、話し合いに来たというのは偽りのない事実です。
どうか、王にお目通りを・・・
それが叶うと思うのか?
今に増援がくる。
貴様らは町に入ることすら叶わぬわ。
王様からの指令!
「客人を王城へご案内するように」!
以上!
馬鹿な、王は一体何を・・・
あ!いやまさか、さすがにそんな・・・
おい、結局どうなんだ?
行っていいのか?
それとも・・・王の命令を無視してアタシたちを追い返すか?
ぐ・・・致し方あるまい。
だが、追加の伝令だ。
未確認戦力一名と魔神王の同行あり。
城門の門番にその旨伝え、再度指示を仰げ。
加えて城までの案内を命ずる。
こいつらを連れていけ!
良かったですね。
何とか王様に会えそうです。
あとは誠心誠意謝れば、きっと許してくれますよ!
しかし何だ、門番の剣幕の割には随分あっさり通れたな。
平和主義を謳う国の国王だ。
話し合いに来たという使者を追い返す訳にもいくまい。
仮に闇討ちを危惧していたとしても、大国としては国民ゼロの弱小国家に畏れを成したとも言えんだろう。
結局のところ、奴らは通すしかないんだよ。
うん、いいのいいの。
王様に直接会ってみれば分かるから♪
立派にそびえ立つ城門。
その前には、先程と同じように鎧に身を包んだ衛兵が一人。
魔神王一向だな。
話は聞いている。
では王の元へ・・・
何やら話し込んでおられますが・・・
大丈夫でしょうか?
ここまで来たら、もう選択肢はあるまい。
拒否するというであれば、力づくで入るまでだ。
―――お待たせした。
確認を終えたので、改めて歓迎する。
城内の案内は引き続きこの者が行うので、付いて行って頂きたい。
小さな妖精に案内され、王城の中を進む。
やがて一向は大きな扉の前に辿り着く。
門の前には黒い人影、いや「影そのもの」といった何かが立っていた。
ああ、すまん。
ついびっくりて、申し訳ない・・・
精霊というと・・・
妖精とはまた別物なのか?
構わんよ、無駄口も不要。
さっさと中に入れ。
間違っても粗相を働こうなどと思うな。
・・・最も、貴様らでは束になっても王には敵わんだろうがな。
重い音を立てながら扉が開く。
そのまま中に入ると、そこにはぐるりと見渡すほどの広い空間が広がっていた。
赤い絨毯が敷き詰められた床に、十メートルはあろうかという高い天井。
そして、部屋の奥で玉座に鎮座する一人の老騎士。
言葉を発するまでもなく、その身から滲み出る重圧。
紛れもない、あれこそが―――
重厚な鎧の音を響かせて、王が身を起こす。
その眼はじっくりと別乃世を見据えていた。
キサマかッ!!!
ワシの手紙に返事も寄越さずバックレおったコワッパは!!!
一瞬速く、妖精王の放った怒声が謁見の間にこだました。
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