5.妖精王国フェアリア・フォーレスト

文字数 1,754文字

ところで・・・

行くのはいいが、妖精王国側の軍隊が国境まで来てるんじゃなかったか?


素通りできるとも思えんが。



地平の見える荒野を進み、一同は国境へと向かう。

目指す先は無論、妖精王国フェアリア・フォーレスト。



ああ、国境と言っても貴様の国には境界となる壁もなければ関所もないからな。

どこからでも攻め放題のザル状態だが、逆に言えば中からも自由に出られる状態だ。


相手の軍も街道に陣を敷いているに過ぎんからな、少し迂回するだけで問題なく通れる。

それは助かるが、ザル状態か・・・
領土はあれど、何があるわけではありませんからね。

特別警戒する必要はないとは思いますが、気になるようでしたら検討しましょう。

知らんうちにヘンなのに住み着かれても困るからな。

事が済んだら対策を考えよう。

ところで・・・

またしても、何故私まで?

目の届かんところに天使なんぞを放っておけるか。

何をされるか分かったものじゃない。

それはそれとして、天使が大っぴらに魔界をうろついてても大丈夫なのか?
羽根やらなんやら隠していただいているので大丈夫でしょう。
・・・・・・
でも、何だかんだ言いながらも大人しく付いて来てくれたな。
私としても、預かり知らぬところで貴方に死なれては困りますからね。

貴方の内に取り込まれている私の神性、回収させて頂かなければなりません。

お手数をお掛けして申し訳ない。
・・・貴様、さては妖精共の菓子目当てだな?
(ぴくっ)

・・・何を言いますやら。

俺としては正直、阿波津・玲子を置いて来てることの方がよっぽど不安なんだが。
まぁ、そこはシスターも残して来てるからな。

互いに牽制しあって何とかなると考えよう。

・・・帰ったら、食われてるかもな。
そ、そんな・・・
バカなことを。

私の使徒が、あの程度の魔物に遅れをとるなどあり得ません。


むしろ、あのゾンビが浄化されていることを危惧しておきなさい。

それはそれで、あと腐れなくスッキリしていい。
鬼か貴様。







みんないなくてヒマだなぁ。

シスターちゃん、どこかな~?

遊びましょ?

(て、天使さま・・・)

ぶるぶる







・・・お、あれが妖精王国の軍隊か?



見れば、遠くにテントの密集した野営地がある。

はっきりとは見えないが、大勢が集まっていることが伺い知れた。



ああ、あれだな。
どれぐらい集まってるんでしょうね。
あれなら大体1000ぐらいか。

貴様一人にご苦労なことだ。

攻め込まれたらカケラも残らんな。
まぁ実際のところは、アタシやアーマを数に入れての兵数だろうがな。
逆にいうと、あれだけいればトリィも倒せると。
楽勝とは言わんが負けはない。
まぁまぁ。

あちらがこちらに気付いた様子もありませんし、早く行きましょう。

うむ、戦う気はサラサラないからな。









その後、幾度かの休憩・野営を挟みながらも問題なく、開戦前日の昼頃には妖精王国に辿り着いた。



さて、なんとか辿り着いたが・・・



フェアリア・フォーレストの入り口に辿り着いた一行。

だが街は高い壁に覆われており、入り口となる門の前には一人の衛兵が佇んでいた。









さて、どう言って入ったものか・・・

正直に名乗るべきか?

開戦を前日に控えた敵国の王がか?

それを入れる阿呆がいるか?

フェアリアは観光都市でもありますので、特に審査などなく入国できるはずです。

観光に来たと言えば通してくれるでしょう。

う~ん、でもどうかなぁ・・・

中に入って後でバレるより、今ここで洗いざらいブチ撒けた方が拗れないんじゃないかなぁ?

とはいえ、町の入り口で足止め食らうのも時間のムダだ。

どうせ王城の門番と問答することになるんだ、ここはさっさと通過しよう。

そういうものか?

でもなぁ・・・

大丈夫ですよ。
いいからさっさと行くぞ。







―――おい通るぞ、観光だ。

ご苦労様です。
お邪魔します・・・
・・・・・・
―――待て!!!
え?

伝令、飛べ!


要警戒対象悪魔「トリカラ・マイウー」及び神魔「アーマ・シュクレイム」を補足!

至急応援を求む!

らじゃー!
あ、その、ちょ・・・
まっ・・・!



別乃世たちが静止の言葉を発する間もなく。


伝令を命じられた小さな妖精が町の中―――

おそらく王城へ向かってすっ飛んで行った。



あ・・・

・・・・・・これは、また、何と言うか・・・


予想外だな。

だからいったじゃん!!!
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登場人物紹介

【魔神】

 別乃世・望(コトノヨ・ノゾム)


 世を憂い、異世界への転生を強く望んだ男。

 女神・悪魔・天使の力をその身に受け「魔神」と化す。

 その後は魔界の一角に領土を与えられ、一国一城の主となる。

【女神】

 アーマ・シュクレイム


 時空神アナザを主神とする女神。

 「魔神」別乃世・望を生み出すきっかけとなった責を問われて神界から魔界へ。

 別乃世・望の監視兼補佐役として送り込まれるが、実質追放処分である。


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【悪魔】

 トリカラ・マイウー


 強欲を司る地獄の第六団に所属する悪魔。

 死霊を操る邪法を司り、結果として「魔神」誕生のきっかけを創ることとなった。

 別乃世・望を監視する任を受け外交員として送り込まれるが、実質左遷である。

 

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【天使】

 メンタイ・ハクマイナー


 唯一神に仕えていた元天使。

 別乃世に力を奪われ魔界に身を堕としたが、神への信仰は失われてはいない。

 力を取り戻し、天界へ還る日を夢見る。


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【ゾンビ・クィーン】

 阿波津・玲子


別乃世に噛まれることによりゾンビと化した残虐少女。

他人の生命を屁とも思わぬ性根から、自らも多くのゾンビを生み出した。

天使との戦いで魔界に堕ち、別乃世の屋敷で使用人として無理矢理働いている。

【悪魔祓い】

 シスター・カッドロゥ


天使メンタイ・ハクマイナーに仕える使徒。

秀でた身体能力に神霊術を組み合わせ、幾多の悪魔を葬り去ってきた。

阿波津・玲子に食われ、魔界に堕ちた今も従順に神への忠誠を誓っている。

【妖精王】

 ヘラクレイス・ダイヘルム


平和主義の妖精王国フェアリア・フォーレストの王。

重い甲冑を身に纏いながらも暴風魔法を駆使した飛翔方法で高速移動を可能とする。

拳で殴る派。酒と女をこよなく愛する道楽王。

【妖精女王】

 モルフォリア・インセクリーフ


妖精王国フェアリア・フォーレストの女王。

彼女が国を回していると言っても過言ではない。

沈着冷静・常識派。

【小妖精】

 エフェメロ・プテラ


専ら伝令に使われる手のひら大の小妖精。

色々と雑い。

【実況解説妖精】

    リーン・クリケット


フェアリア・フォーレスト闘技場の専業実況解説。

風鈴のように透き通った、非常に良い声の持ち主。

【兎型メイド】

 コニー・リトルキャーロット


フェアリア城で働く獣人メイド。

基本は人型で生活するが、激しい運動の際には兎娘と化す。

弟大好きっ子。

【お使い兎】

 バーニィ・リトルキャーロット


コニーの弟。

人間年齢に換算すると10歳前後。

真面目に仕事に取り組むが、何かしらの失敗はするタイプ。

【闇の精霊】

 クラインノウン・ナロゥフレイド


魔界のさらに深部に潜む闇の精霊・シェイドの末裔。

縁あってダイヘルムに忠誠を誓い、フェアリアの守護衛兵長を勤める。

騎士道精神に溢れる騎士の鑑のような淑女。

【ソードマスター】

 フィラデルフィア・ウォルザンパー


妖精王国建国初期の英雄の一人。

並ぶ者無き剣の達人と称され、その斬撃は空をも斬り裂く。

【ウィザード】

 サンディエゴ・ノウルーウィー


妖精王国建国初期の英雄の一人。

あらゆる魔術の祖と言われ、近代に残る数々の魔術の基礎を作った男。

【ナックルカイザー】

 ダラス・ガイナーズ


妖精王国建国初期の英雄の一人。

剣と魔法の入り乱れる戦乱の世を拳一つで渡り抜いた無手の拳王。

【古の卑しき魔王】

 コクオブラァ


妖精王国の王家にのみ伝えられし伝説の魔王。

英雄と並び称された4人の戦士達によりフェアリア・フォーレストの地に封印されていた。


その身は幾度滅ぼされようと蘇る、つまりは不死身である。

(フェアリア・フォーレスト女王、モルフォリア・インセクリーフ述)

【妖精国騎士団長】

  ヘイヤリッパー・ホワイトライン


  クラインノウンと双璧を成す、妖精王国攻めの要。

二刀を操る剣の達人。

忠義に厚く、すこぶる真面目。

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