17.最終局面・共闘
文字数 3,219文字
どうやらトリカラ・マイウーの呼び出した怨霊が暴走!
それを二人で協力して止める模様!
果たしてうまく成功するのか!?
保証はありません!
観客席の皆さま方、逃げるのならば今のうちです!」
そうしてトリィの手に現れたのは光の槍。
トリィが正面から巨人に話し掛け、気を引いている間に死角から懐に潜り込んだモルフォリアが炸裂魔弾を巨人の胸部に叩き込む。
その爆炎冷めやらぬうちにその内に飛び込むトリィだったが・・・
そこにあるはずの「核」の気配がまるで感じられない。
周囲の「壁」が低く呻き声を上げている。
否、壁ではない。
巨人の身体を成すのは無数の怨霊の集合体である。
モルフォリアが開けたこの空洞も、程なく何事もなかったかのように新たな怨霊により埋められるのだろう。
このままここに止まれば、自らも巨人に取り込まれる。
その前に脱出しようと外に飛び出すトリィだったが、巨人の体内を出たところで何者かに足首を掴まれた。
トリィを捕らえたのは、巨人の胸部から「生えた」ひとりの怨霊。
英雄と呼ばれた拳王、ナックルカイザー。
掴んだ足首を力任せに振り回す。
思わぬ力にトリィの身体は宙で踊り、そのままの勢いで巨人の胸部に叩きつけられる。
それを合図に巨人から沸き出る無数の怨霊。
トリィの身体にまとわりつき、巨人の内部へと引きずり込もうとする。
トリィの怒号と共に四散する怨霊の群れ。
捕まれていた足首は叩きつけられた際に離されてはいるが、このまま大人しくトリィが飛び立つのを見過ごすものとも思えない。
トリィとて近接戦闘の自信はあるが、相手はナックルカイザーとまで呼ばれる英雄の一人。
果たしてどこまで通じるものか。
まずは小手調べと、手にした光の槍をナックルカイザー目掛けて突き出す。
体を捌いてそれを掻い潜り、右のカウンターを繰り出す・・・
つもりであったがそこは怨念、両足が巨人の胸部と一体化していることを計算に入れる知能はないのだろう。
いわば垂直の壁から身体を生やして身体を起こしている状態のナックルカイザー。
固定された足首が思うように動かずヘンに捻ってバランスを崩し、そのままブランと巨人の胸部から垂れ下がる形となった。
じたばたもがくナックルカイザーの、無防備に晒された背中を突くトリィ。
苦痛の呻きと共に、空に溶け行くナックルカイザー。
近接格闘の王・・・
まともにやり合えばかなりの脅威となったはず。
どのようなやり取りがあったかは見えませんでしたが、出会い頭に倒せたのは僥倖でしたわね。
巨人の大気を震わす唸り声と共に、英雄の一人「ウィザード」がその額から生えてきた。
ウィザードが何事かを呟くと、巨人の頭上を中心にどす黒い暗雲が広がり始める。
いち早く判断を下したモルフォリアに従い、二人は別乃世達のいる観覧席へと身を引いた。
間一髪、トリィ達が観覧席に入るとほぼ同時に、闘技場を覆い尽くした暗雲から稲光がちらつく。
稲妻が一斉に迸る。
それは逃げ場もない程に闘技場を埋め尽くした。
見てのとおりの無差別広範囲雷撃魔法ですわ。
術士を中心として一面に稲妻を放つ対軍魔法。
敵への殲滅力もさることながら、味方に対する被害も甚大となる可能性があることから外法・禁術として扱われている魔法です。
今止めを刺しておかねば・・・
トリカラ・マイウー、今しがたの雷撃で奴の体表はズタズタです。
あれならば核の位置を探るのも容易なのでは?
呆れて弛緩しきった気持ちを入れ換えて、改めて巨人に目をやるトリィ。