お髭(ひげ)のニール (8) 作戦成功
文字数 1,347文字
第一投、これは外れました。力の加減が分からずに、窓まで届かなかったのです。芯が筒になっているおかげで、一階の屋根に引っ掛る事なく、コロコロと落ちてきます。ニールは左で髭を押さえつつ、トイレットペーパーの芯を拾い上げます。
第二投、これも外れます。窓のついている壁に当たってしまいました。なかなか上手く行きません。
そして満を持した三投目、神様に願いが通じたのか、今度は見事に窓へと命中しました。しかも強すぎず弱すぎず、絶妙な振動が窓ガラスに伝わります。
マリア、気づいて!
良く考えてみれば、マリアが二階にいる保証なんて何にもありません。ただ、この時のニールには、そんな事に気づく余裕すらなかったのです。
でも神様は、ニールの味方をなされました。彼が三度落ちてきたトイレットペーパーの芯を拾い上げる頃、二階の窓が開いたのです。そこから、両方の肩に三つ編みの髪をぶら下げた女の子が顔を出しました。
彼女が窓の下を見ると、紙袋をスッポリかぶった異様な子供が立っていて、何やら一生懸命に手を振っています。驚いたマリアは、慌てて窓を閉めてしまいました。
それはそうでしょう。彼女からすれば、突然に窓に何かが当たったと思って外を見ると、得体の知れない存在がこちらに向かって、必死に手をバタバタさせているのですからね。
ニール、大ピンチ。
普通の子供なら、ここでお家の人に急を知らせに行くところです。でもマリアは、ちょっと変わっていました。物凄く好奇心旺盛で、知識の泉に、いつも浸っていたいと思うような女の子だったんです。そこでマリアは勇気を振り絞って、再び窓を開けました。
その時の、ニールの喜びようったらありませんでした。マリアが窓をピシャリと閉めた時には、この世の中が終ってしまったかのような気分になっていたのですからね。
さっきは嬉しさのあまり、ただブンブンと手を振っていただけでしたが、よく考えてみれば、それで彼女がニールだって事に気づくはずもありません。彼は素早くそれを悟って、今度は彼の方も勇気を振り絞り、紙の袋を頭から外しました。
「ニール! どうしたの? その恰好は何?」
驚きと好奇心に満ちた声で、マリアが二階から尋ねます。
「マリア、お願い。降りて来てくれない?」
ニールはマリアのお家の人に気づかれないよう、出来るだけ静かに、でも力強く言いました。
その時マリアは、とても変な事に気がつきます。ニールが左手で何か黒い塊を握っていて、それをアゴから離そうとはしないのです。マリアは、頭のいい子です。一瞬で、異常な事態が起こっているのだと理解をしました。もっともそれを後押ししたのは、人並み外れた好奇心だったんですけどね。
マリアは、すぐに階段を下りて、ニールの元へと向かいます。幸運にも、お家にいた彼女の母親は裏のお庭で洗濯をしていて、娘が急いで表へ出ていったのに気づきませんでした。
「ニール?」
玄関ドアを開け放ったマリアは、キョトンとします。ニールの姿が、どこにも見えないのです。
「ニール、どこ?」
もう一度、彼女が声をかけると、お家から少し離れた茂みがガサっと音を立て、そこから小さな腕がニヨッキリと飛び出しました。そしてこっちへ来てとばかりに、おいでおいでをしています。マリアは急いで、そちらの方へと向かいました。
第二投、これも外れます。窓のついている壁に当たってしまいました。なかなか上手く行きません。
そして満を持した三投目、神様に願いが通じたのか、今度は見事に窓へと命中しました。しかも強すぎず弱すぎず、絶妙な振動が窓ガラスに伝わります。
マリア、気づいて!
良く考えてみれば、マリアが二階にいる保証なんて何にもありません。ただ、この時のニールには、そんな事に気づく余裕すらなかったのです。
でも神様は、ニールの味方をなされました。彼が三度落ちてきたトイレットペーパーの芯を拾い上げる頃、二階の窓が開いたのです。そこから、両方の肩に三つ編みの髪をぶら下げた女の子が顔を出しました。
彼女が窓の下を見ると、紙袋をスッポリかぶった異様な子供が立っていて、何やら一生懸命に手を振っています。驚いたマリアは、慌てて窓を閉めてしまいました。
それはそうでしょう。彼女からすれば、突然に窓に何かが当たったと思って外を見ると、得体の知れない存在がこちらに向かって、必死に手をバタバタさせているのですからね。
ニール、大ピンチ。
普通の子供なら、ここでお家の人に急を知らせに行くところです。でもマリアは、ちょっと変わっていました。物凄く好奇心旺盛で、知識の泉に、いつも浸っていたいと思うような女の子だったんです。そこでマリアは勇気を振り絞って、再び窓を開けました。
その時の、ニールの喜びようったらありませんでした。マリアが窓をピシャリと閉めた時には、この世の中が終ってしまったかのような気分になっていたのですからね。
さっきは嬉しさのあまり、ただブンブンと手を振っていただけでしたが、よく考えてみれば、それで彼女がニールだって事に気づくはずもありません。彼は素早くそれを悟って、今度は彼の方も勇気を振り絞り、紙の袋を頭から外しました。
「ニール! どうしたの? その恰好は何?」
驚きと好奇心に満ちた声で、マリアが二階から尋ねます。
「マリア、お願い。降りて来てくれない?」
ニールはマリアのお家の人に気づかれないよう、出来るだけ静かに、でも力強く言いました。
その時マリアは、とても変な事に気がつきます。ニールが左手で何か黒い塊を握っていて、それをアゴから離そうとはしないのです。マリアは、頭のいい子です。一瞬で、異常な事態が起こっているのだと理解をしました。もっともそれを後押ししたのは、人並み外れた好奇心だったんですけどね。
マリアは、すぐに階段を下りて、ニールの元へと向かいます。幸運にも、お家にいた彼女の母親は裏のお庭で洗濯をしていて、娘が急いで表へ出ていったのに気づきませんでした。
「ニール?」
玄関ドアを開け放ったマリアは、キョトンとします。ニールの姿が、どこにも見えないのです。
「ニール、どこ?」
もう一度、彼女が声をかけると、お家から少し離れた茂みがガサっと音を立て、そこから小さな腕がニヨッキリと飛び出しました。そしてこっちへ来てとばかりに、おいでおいでをしています。マリアは急いで、そちらの方へと向かいました。