昇らない お日さま (15) 西の森の洞くつへ

文字数 1,008文字

「もちろんですとも、パーパスさま。たとえ大宇宙が明日壊れてしまうとあたなさまが仰っても、私は大人しくそれに従うでしょう」

お日さまはそう言って、パーパスの瞳を見つめ返しました。目の前の老人に、全幅の信頼を寄せているしるしです。

パーパスはヒゲをなでつけお日さまの答えに満足すると、元いたところ、すなわちお月さまのいる場所へと急いで戻っていきました。

そしてお日さまの言い分をお月さまに伝えると、

「まぁ、それは本当ですの? まったく本当ですの?」

と、お月さまは青い光を煌々と発して喜びました。

「では、この場を動いてくれるかの?」

お月さまはパーパスの言葉をもちろん承知して、西の空へと消えていきます。さぁ、少しずつですが東の空が白んできました。お日さまがもうすぐやって来ます。

「では、最後の仕上げといこうか」

パーパスはそう言うと、天上で杖を高くつき出し魔法の呪文を唱えます。そしてすぐに「ある場所」を突きとめました。パーパスは、魔法の杖に命じます。

「ヴォルノース西の森の隠れ洞窟へ」

杖は少しブルっと震え、主人が言った場所へと向かいました。本当はいったん影の森の魔法のお家に戻って、昼食をとってから行こうかとも思いましたが、せっかちなパーパスは仕事をこなす方を選んだのです。帰ったら、またシュプリンに怒られそうです。遅くなるならなるで、知らせておいてもらわないと困ると言って。

「急げや急げ、ワシの杖。シュプリンの小言はご免だぞ」

パーパスは杖をせかします。主人の命を聞いたのかどうかは分かりませんが、杖はほどなく目的地の洞窟の前へと降り立ちました。

パーパスは風に乱れたヒゲをなおしながら、

「ここに全ての真実がある」

と、言うと、真暗な穴の中へと進みます。もちろん、杖の先に光の魔法をほどこして。

洞窟の入り口から曲がりくねった道を百メートルも歩いたでしょうか、突然やってきた怪しい光に叫んだ者がいます。

「なんだ? なんだ? この光はなんだ?」

声の主は、ゴクラクチョウでした。

「お前が、月と太陽の間でメッセンジャーを務めていたゴクラクチョウだな? いや、答えんでもわかってる。ワシの探索魔法が間違えるはずがない」

パーパスが杖の光っていない方の側を地面に突きさし、洞窟の奥で丸まっていたゴクラクチョウを照らします。

「あなたは、どちら様でしょう? 僕は打ちひしがれているのです。放っておいてくれませんか」

光に照らされた美しい鳥が答えました。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み