お髭(ひげ)のニール (11) ドッジの挑戦
文字数 1,444文字
「おぉ、それが”髭生え薬”で、のびたって髭か。いや、立派なもんだねぇ、旦那」
時代劇の口調をまねたドッジが、ニールの顔を繁々と見つめます。
「あんまり、見ないでよ。恥ずかしいじゃないか」
ニールが両手で、トイレットペーパーの芯に巻きつけてある髭を覆いました。
「ドッジ、やめなさいよ。ニールが可哀想じゃない」
マリアが、大人びたところを発揮します。
「なんだい、お姉さんぶっちゃってさ。結局、マリアだって、何にも役には立っちゃいないんだろ?
お前の魔法と同じだな」
ドッジが、フンとばかりに言い返します。
「な、何よ。それとこれとは話が別じゃない。それに私の魔法は、ちゃんと役に立ってるわ」
マリアが、半ベソをかきながら抗議しました。マリアは博学だし、背伸びをするタイプなんですが、ちょっと泣き虫でもあるんですよね。
そうそう、それからもう一つ。ドッジの言葉通り、マリアは既に魔法が使えるようになっています。つい最近の事ですが、三人の中では一番先に魔法が発現したのを、大いに自慢していました。きかん坊のドッジには、それがチョット気に入りません。
「ヘンだ。あんな魔法、一体なんの役に立つって言うんだよ」
ガキ大将が、マリアにアゴを突き出します。
「だって、ちゃんと……」
マリアが、いよいよ泣き出しそうになった時、
「もう、やめなよドッジ。あんまりひどい事を言っちゃダメだ」
ニールが、割って入ります。
「だって、本当の事だし!」
ドッジが、言い返します。
「何よ、ドッジなんて、まだ魔法が使えないじゃない。使える分だけ、私の方がずうっとマシなんですからね」
ニールの援護を受けて、マリアが俄然、勢いづきました。
「フ、フン! お、俺だってすぐに、つ、使えるようにならぁ。き、きっと雷を落とす魔法とか、火の玉を発射する凄い魔法をさ」
ドッジは反論しますが、ニールはドッジの態度に少し違和感を覚えます。
「ま、今はとにかくニールの髭だ。頭でっかちのお嬢ちゃんにはお手上げみたいだし、今度は俺様の出番だな」
ガキ大将は、何かを誤魔化すように話題を元に戻しました。マリアも納得はしていませんが、ドッジの言う通り、今はニールの髭を何とかしなくてはなりません。言い返したい思いをグッとこらえて、彼女も立派なお髭の生えた友だちの方を振り返ります。
ニールが、トイレットペーパーの芯に巻きつけたお髭を解くのを確認したドッジは、
「んじゃま……」
とばかりに両手を前に突き出して、握ったり開いたりをし始めました。何か、とても嫌な予感がします。
案の定、ドッジがおもむろに、ニールのお髭を目指して手をのばしてきたのを見て、お髭の持ち主はサッと身をかわします。
「なんだよ。逃げるな」
ドッジが、口を尖らせます。
「逃げるな、じゃないよ。お前、両手でボクの髭を引っ張って、それで引き抜こうとしてないかい?」
ニールの抗議を含んだ質問に、ドッジが「まぁな」と答えます。
「あんた、バカ? それで抜けるくらいなら、とっくにやってるわよ!」
先ほどまでベソをかきかけていたマリアが、ここぞとばかりに反撃しました。
「いや、だからさ。とりあえずだよ、とりあえず。それで、様子を見てからだな……」
言い返したドッジですが、何も考えていなかったのは明らかです。
「じゃあ、ハサミとかないのかよ」
ドッジが、至極当然の次の一手を言いかけた時、
「それも試し済み。ね、ニール。だけど駄目だったんでしょう。二、三本、切れただけで」
先ほどの事情聴取から得た情報を、自慢げに披露しながら、マリアが言いました。
時代劇の口調をまねたドッジが、ニールの顔を繁々と見つめます。
「あんまり、見ないでよ。恥ずかしいじゃないか」
ニールが両手で、トイレットペーパーの芯に巻きつけてある髭を覆いました。
「ドッジ、やめなさいよ。ニールが可哀想じゃない」
マリアが、大人びたところを発揮します。
「なんだい、お姉さんぶっちゃってさ。結局、マリアだって、何にも役には立っちゃいないんだろ?
お前の魔法と同じだな」
ドッジが、フンとばかりに言い返します。
「な、何よ。それとこれとは話が別じゃない。それに私の魔法は、ちゃんと役に立ってるわ」
マリアが、半ベソをかきながら抗議しました。マリアは博学だし、背伸びをするタイプなんですが、ちょっと泣き虫でもあるんですよね。
そうそう、それからもう一つ。ドッジの言葉通り、マリアは既に魔法が使えるようになっています。つい最近の事ですが、三人の中では一番先に魔法が発現したのを、大いに自慢していました。きかん坊のドッジには、それがチョット気に入りません。
「ヘンだ。あんな魔法、一体なんの役に立つって言うんだよ」
ガキ大将が、マリアにアゴを突き出します。
「だって、ちゃんと……」
マリアが、いよいよ泣き出しそうになった時、
「もう、やめなよドッジ。あんまりひどい事を言っちゃダメだ」
ニールが、割って入ります。
「だって、本当の事だし!」
ドッジが、言い返します。
「何よ、ドッジなんて、まだ魔法が使えないじゃない。使える分だけ、私の方がずうっとマシなんですからね」
ニールの援護を受けて、マリアが俄然、勢いづきました。
「フ、フン! お、俺だってすぐに、つ、使えるようにならぁ。き、きっと雷を落とす魔法とか、火の玉を発射する凄い魔法をさ」
ドッジは反論しますが、ニールはドッジの態度に少し違和感を覚えます。
「ま、今はとにかくニールの髭だ。頭でっかちのお嬢ちゃんにはお手上げみたいだし、今度は俺様の出番だな」
ガキ大将は、何かを誤魔化すように話題を元に戻しました。マリアも納得はしていませんが、ドッジの言う通り、今はニールの髭を何とかしなくてはなりません。言い返したい思いをグッとこらえて、彼女も立派なお髭の生えた友だちの方を振り返ります。
ニールが、トイレットペーパーの芯に巻きつけたお髭を解くのを確認したドッジは、
「んじゃま……」
とばかりに両手を前に突き出して、握ったり開いたりをし始めました。何か、とても嫌な予感がします。
案の定、ドッジがおもむろに、ニールのお髭を目指して手をのばしてきたのを見て、お髭の持ち主はサッと身をかわします。
「なんだよ。逃げるな」
ドッジが、口を尖らせます。
「逃げるな、じゃないよ。お前、両手でボクの髭を引っ張って、それで引き抜こうとしてないかい?」
ニールの抗議を含んだ質問に、ドッジが「まぁな」と答えます。
「あんた、バカ? それで抜けるくらいなら、とっくにやってるわよ!」
先ほどまでベソをかきかけていたマリアが、ここぞとばかりに反撃しました。
「いや、だからさ。とりあえずだよ、とりあえず。それで、様子を見てからだな……」
言い返したドッジですが、何も考えていなかったのは明らかです。
「じゃあ、ハサミとかないのかよ」
ドッジが、至極当然の次の一手を言いかけた時、
「それも試し済み。ね、ニール。だけど駄目だったんでしょう。二、三本、切れただけで」
先ほどの事情聴取から得た情報を、自慢げに披露しながら、マリアが言いました。