お髭(ひげ)のニール (13) 激流へ
文字数 1,412文字
「いや、聞こえる。何かが鳴いているような……」
ニールはそう言うと、足に絡まないよう、長いお髭を手に持って、サッと表に出て行きました。このあたり、マリアの好奇心にも引けを取りません。開き直ったニールには、もう恰好がどうのこうのなんて関係ないんです。
すぐさま小屋の外へ出たニールとマリアは、音のする方角がどちらなのかを確かめます。二人は両手を両耳の後ろへ当てて、熱心に探索しました。
「川の方じゃない?」
一歩早くそれに気がついたマリアが、ニールの方を向いて確認します。ニールも、数本の木々の向こうにある河原の方へ顔を向けました。
「そうだ。川の方だ」
二人は発見した音の方角へ、急いで走っていきました。もっとも、ニールはお髭を手に持ち直してからだったので、マリアより少し遅れてしまいます。
「どこかしら?」
早速に河原へ到着したマリアが、音の出所を探し当てようと、辺りをキョロキョロと見回しました。でも、発見する事がなかなか出来ません。昨日、雨が降ったので、川の水はいつもより勢いを増し、その音が彼女の探索を邪魔していたのでした。
遅れて来たニールもマリアと合流し、音の正体を探します。
「何か、動物の鳴き声だ。そうだ。犬だ、犬の声だよ」
ニールが叫びました。普通ならチョットかっこイイ場面ですが、彼は今、アゴから長い髭をダラりとのばした変な子供なのですから、もし他の人がその場にいたら、クスクスと笑っていたかも知れません。
「犬? でもどこに……」
マリアが、尋ねます。
「川だ、川の中。真ん中へんにある石のところ!」
ニールが答えました……と言いたいところですが、この言葉を発したのはドッジでした。二人よりかなり遅れてやって来た上に、手にはお菓子の袋を持っています。隠れ家の小屋に保管していたのですね。
素早く小屋を飛び出した二人にとってみれば、何かトンビに油揚げをさらわれたような事になってしまいました。でも、世の中こんなものかも知れませんね。
「川だって!?」
ニールが。ドッジの指さす方に顔を向けました。
「あ、犬だ。子犬!」
マリアも。声を上げます。
ここで三人が、目の当たりにした光景を説明しますね。
川幅の一番広い所、だいたい十五メートルといったところでしょうか、中央付近に五十センチくらいの長さがある岩が頭を突き出しています。そこに小さい板切れが引っ掛っていて、それに子犬がしがみついて鳴いているのです。
「どうして、あんな所に子犬がいるの?」
マリアが、持ち前の好奇心を発揮します。
男子二人の方を振り向いての問いかけに、
「俺が、知るわけないだろ!」
ドッジが、困ったように答えました。
一方、ニールの方は、
「ボ、ボクにだって、わから……」
と言いかけて、ふと言葉を途切らせます。板切れに必死につかまっている子犬をよく確認すると、何やら見覚えのある犬なのです。
「あっ、あの時の!」
「え、何?」
「何だ、何だ?」
ニールの思わぬ言葉に、マリアとドッジが怪訝な表情を見せました。
皆さんは、覚えていらっしゃいますか? ニールがマリアのお家へ行く途中に出会った子犬の事を。そうなんです。今、三人の目の前にいる子犬は、正にラッティーと呼ばれていたその子犬でした。
あ、もしかして……。
ニールの、脳みその中にある歯車が動き始めます。
ボクはあの犬と橋の所で出会った。多分、あの後、飼い主の男の子は河原で犬と遊んだんじゃないのかな。そして何かの拍子に、子犬が流されてしまった……。
ニールはそう言うと、足に絡まないよう、長いお髭を手に持って、サッと表に出て行きました。このあたり、マリアの好奇心にも引けを取りません。開き直ったニールには、もう恰好がどうのこうのなんて関係ないんです。
すぐさま小屋の外へ出たニールとマリアは、音のする方角がどちらなのかを確かめます。二人は両手を両耳の後ろへ当てて、熱心に探索しました。
「川の方じゃない?」
一歩早くそれに気がついたマリアが、ニールの方を向いて確認します。ニールも、数本の木々の向こうにある河原の方へ顔を向けました。
「そうだ。川の方だ」
二人は発見した音の方角へ、急いで走っていきました。もっとも、ニールはお髭を手に持ち直してからだったので、マリアより少し遅れてしまいます。
「どこかしら?」
早速に河原へ到着したマリアが、音の出所を探し当てようと、辺りをキョロキョロと見回しました。でも、発見する事がなかなか出来ません。昨日、雨が降ったので、川の水はいつもより勢いを増し、その音が彼女の探索を邪魔していたのでした。
遅れて来たニールもマリアと合流し、音の正体を探します。
「何か、動物の鳴き声だ。そうだ。犬だ、犬の声だよ」
ニールが叫びました。普通ならチョットかっこイイ場面ですが、彼は今、アゴから長い髭をダラりとのばした変な子供なのですから、もし他の人がその場にいたら、クスクスと笑っていたかも知れません。
「犬? でもどこに……」
マリアが、尋ねます。
「川だ、川の中。真ん中へんにある石のところ!」
ニールが答えました……と言いたいところですが、この言葉を発したのはドッジでした。二人よりかなり遅れてやって来た上に、手にはお菓子の袋を持っています。隠れ家の小屋に保管していたのですね。
素早く小屋を飛び出した二人にとってみれば、何かトンビに油揚げをさらわれたような事になってしまいました。でも、世の中こんなものかも知れませんね。
「川だって!?」
ニールが。ドッジの指さす方に顔を向けました。
「あ、犬だ。子犬!」
マリアも。声を上げます。
ここで三人が、目の当たりにした光景を説明しますね。
川幅の一番広い所、だいたい十五メートルといったところでしょうか、中央付近に五十センチくらいの長さがある岩が頭を突き出しています。そこに小さい板切れが引っ掛っていて、それに子犬がしがみついて鳴いているのです。
「どうして、あんな所に子犬がいるの?」
マリアが、持ち前の好奇心を発揮します。
男子二人の方を振り向いての問いかけに、
「俺が、知るわけないだろ!」
ドッジが、困ったように答えました。
一方、ニールの方は、
「ボ、ボクにだって、わから……」
と言いかけて、ふと言葉を途切らせます。板切れに必死につかまっている子犬をよく確認すると、何やら見覚えのある犬なのです。
「あっ、あの時の!」
「え、何?」
「何だ、何だ?」
ニールの思わぬ言葉に、マリアとドッジが怪訝な表情を見せました。
皆さんは、覚えていらっしゃいますか? ニールがマリアのお家へ行く途中に出会った子犬の事を。そうなんです。今、三人の目の前にいる子犬は、正にラッティーと呼ばれていたその子犬でした。
あ、もしかして……。
ニールの、脳みその中にある歯車が動き始めます。
ボクはあの犬と橋の所で出会った。多分、あの後、飼い主の男の子は河原で犬と遊んだんじゃないのかな。そして何かの拍子に、子犬が流されてしまった……。