扉の奥の秘宝 (19) 最後の挑戦
文字数 1,252文字
その隣で苦笑いをしながら、無邪気な骨董仲間を眺めるニールのパパ。
完全に盛っているというか、そもそも何処からどこまでが本当なんだ、この人の話は……。マルロンも、すっかり乗せられちまって。
ただ、パパも余り偉そうな事は言えません。だって、つい先日パパがこの店から買った「癒しの剣」も、本当かどうかわからない眉つばものの話に乗せられて、つい手を出してしまったのですからね。しかしその時、ママから大目玉を食らったので、今回は少し冷静に話を聞けるのでした。
「鍵開け勝負も気になるけど、フューイの部屋の前にいた兵士って、何者なんでしょう? もちろん秘宝に何か関係あるんですよね。 なぁ、セディ―。君はどう思う?」
マルロンがクッキーのカスを唇の横に付けながら、パパに意見を求めます。
「まぁ、話の内容を考えれば、その兵士の目的は……」
「おっと、そこまで。そいつを言っちまうのはルール違反っていうか、興醒めってもんだ」
ゼペックが、慌ててパパを止めました。
このまま話を盛り上げ、客がその結末に興奮している気持ちを利用して、商売をスムーズに進めるのが店主の作戦です。それを邪魔されたのではたまりません。
ただ、パパが比較的冷静なのを見て、ゼペックは対象をマルロン一人に絞る事に決めました。
「話もラストスパート。耳の穴かっぽじって、特と聞いてくんな」
店主の鋭い視線が、まるで獲物を狙うタカのように、憐れな客マルロンに注がれます。
フューイは、これまで四回挑戦して歯が立たなかった扉を前に、たたずみます。でも、決してセンチメンタルな気分に浸っているわけではありません。この錠前が彼の求めるものであるか否かを、冷静に判断しようと鋭い目つきで扉を見つめます。
フューイはいつもの如く、台に腰を落ち着けて、最後の勝負に挑み始めました。
どれだけの時間が経ったでしょうか。
ジリリン、ジリリン。
ライバルの様子を廊下の曲がり角から眺めていたゾルウッドの耳に、カード型魔道具が発するアラーム音が鳴り響きました。お昼の休憩時間です。
「おおい、昼飯だよ」
ゾルウッドの声に、フューイは掛けていた台から腰を上げます。
「へへっ、どうだい。あと四時間を、残すばかりになったけどさ」
曲がり角で、若い細工師を出迎えたゾルウッドが声をかけます。少なくとも自分の負けは無くなったとばかりに、余裕の表情を見せていました。
「充分だ」
フューイはそっけなく答えましたが、その声には明らかな自信が感じられます。
「へぇ、そりゃ結構」
その返答に、フューイは少し虚を突かれました。その言葉には、ウソが無いように思えたからです。
オレが鍵を開けてしまったら、この男には一銭も入らない。参加費がもらえるのは、あくまで二人とも失敗した場合に限られる。鍵開け勝負は、もう諦めてしまったという事なのか。オレの見立てでは、ここ二回くらいはそれなりに攻略していそうな感じがあったのに……。
本来なら他人の事など気にもかけないフューイでしたが、いささか普通ではない日々に、心も少しずつ変化をしてきたようですね。
完全に盛っているというか、そもそも何処からどこまでが本当なんだ、この人の話は……。マルロンも、すっかり乗せられちまって。
ただ、パパも余り偉そうな事は言えません。だって、つい先日パパがこの店から買った「癒しの剣」も、本当かどうかわからない眉つばものの話に乗せられて、つい手を出してしまったのですからね。しかしその時、ママから大目玉を食らったので、今回は少し冷静に話を聞けるのでした。
「鍵開け勝負も気になるけど、フューイの部屋の前にいた兵士って、何者なんでしょう? もちろん秘宝に何か関係あるんですよね。 なぁ、セディ―。君はどう思う?」
マルロンがクッキーのカスを唇の横に付けながら、パパに意見を求めます。
「まぁ、話の内容を考えれば、その兵士の目的は……」
「おっと、そこまで。そいつを言っちまうのはルール違反っていうか、興醒めってもんだ」
ゼペックが、慌ててパパを止めました。
このまま話を盛り上げ、客がその結末に興奮している気持ちを利用して、商売をスムーズに進めるのが店主の作戦です。それを邪魔されたのではたまりません。
ただ、パパが比較的冷静なのを見て、ゼペックは対象をマルロン一人に絞る事に決めました。
「話もラストスパート。耳の穴かっぽじって、特と聞いてくんな」
店主の鋭い視線が、まるで獲物を狙うタカのように、憐れな客マルロンに注がれます。
フューイは、これまで四回挑戦して歯が立たなかった扉を前に、たたずみます。でも、決してセンチメンタルな気分に浸っているわけではありません。この錠前が彼の求めるものであるか否かを、冷静に判断しようと鋭い目つきで扉を見つめます。
フューイはいつもの如く、台に腰を落ち着けて、最後の勝負に挑み始めました。
どれだけの時間が経ったでしょうか。
ジリリン、ジリリン。
ライバルの様子を廊下の曲がり角から眺めていたゾルウッドの耳に、カード型魔道具が発するアラーム音が鳴り響きました。お昼の休憩時間です。
「おおい、昼飯だよ」
ゾルウッドの声に、フューイは掛けていた台から腰を上げます。
「へへっ、どうだい。あと四時間を、残すばかりになったけどさ」
曲がり角で、若い細工師を出迎えたゾルウッドが声をかけます。少なくとも自分の負けは無くなったとばかりに、余裕の表情を見せていました。
「充分だ」
フューイはそっけなく答えましたが、その声には明らかな自信が感じられます。
「へぇ、そりゃ結構」
その返答に、フューイは少し虚を突かれました。その言葉には、ウソが無いように思えたからです。
オレが鍵を開けてしまったら、この男には一銭も入らない。参加費がもらえるのは、あくまで二人とも失敗した場合に限られる。鍵開け勝負は、もう諦めてしまったという事なのか。オレの見立てでは、ここ二回くらいはそれなりに攻略していそうな感じがあったのに……。
本来なら他人の事など気にもかけないフューイでしたが、いささか普通ではない日々に、心も少しずつ変化をしてきたようですね。