お髭(ひげ)のニール (1) ニールの悩み
文字数 1,292文字
ここはヴォルノースの南の森。ヒト妖精の男の子、ニールのお家です。
ボクは、どんな魔法が使えるようになるのかな。
お天気のいい、ある日の午後。居間のソファーでママが置いていったクッキーを頬張りながら、ニールはそんな事をぼんやりと考えていました。
ヴォルノースの住人は、例外なく魔法を使えます。ただ、種族によって使える魔法は大きく変わるんですね。
ヒト妖精は一部の人たちを除いて、大した魔法は使えません。そうですね、皆さんの世界で言えば、たわいもない奇術に見える程度の魔法です。
そして顔が動物、体が人間のケモノ妖精は、その動物が元々持っている能力に則した魔法を使える場合が多いようです。馬ならば足が早い、狐ならば化ける事が出来るなどなど……。
最後にもう一つの種族、ハネ妖精は、文字通り背中に薄い羽が生えている妖精で、多分、みなさんの感覚から言えば、一番”妖精らしい”姿をしている人たちです。背丈は前二者よりも小さい場合が殆どな代わりに、使える魔法は強力なものが多くなります。ただ、体力的には一番弱い種族となります。
さて、この魔法。ヒト妖精の場合は、だいたい六歳から十歳の間に使えるようになります。ただし、どんな魔法が使えるかは全く分かりません。親兄弟、はたまた一族が使える魔法とは、全く関係がありません。それだけに楽しみでもあり、心配でもあるのです。
ニールのママは、水や泡、風の精霊を操る事が出来ます。でも大した働きは出来ません。台所の洗い物、お掃除の時など、家事に利用できる程度のささやかな魔法です。でも、ヒト妖精の殆どは、このくらいの魔法しか使えないのが普通です。
一方、パパは、かなり特別な魔法が使えます。何せ、両足の下に緑色の光る輪を出現させて、空中を歩けるのですからね。大したものです(これが、ママにはチョット気に入りません)。
※ 「パパの魔法」参照。
https://ncode.syosetu.com/n0236iv/47
ニールは八歳ですから、魔法が発現するちょうど中間の頃。友だちの半分くらいは、既に魔法が使えるようになっています。だから、ニールとしてはチョット焦ってもいるのですね。「ボクはもしかしたら、一生魔法が使えないのかも知れない」なんて、子供ながらに苦悩してるんです。
パパやママに相談しても「パパは、十歳になってから、魔法が使えるようになったよ」とか「必ず使えるようになるから、心配いらないわ」とか、ニールにとっては、ちっとも慰めにならない事しか言ってくれません。
ニールは目の前のクッキーを、あっという間に平らげます。子供ながらに、プチ焼け食いといったところでしょうか。
だけどお菓子を食べてしまったニールは、途端に手持無沙汰になりました。パパもママも、今は家にいないのです。パパはお仕事へ行ったきりですし、ママも近所の奥様同士の会合に出かけています。
さすがに、八歳になったニールを連れて行くのは、気が引けたのでしょう。見え透いたご機嫌取りのクッキーを置いたっきり、息子に留守番を頼みます。街から少し離れた所にあるこのお家に、見知らぬお客があるとは思えないとの判断からでした。
ボクは、どんな魔法が使えるようになるのかな。
お天気のいい、ある日の午後。居間のソファーでママが置いていったクッキーを頬張りながら、ニールはそんな事をぼんやりと考えていました。
ヴォルノースの住人は、例外なく魔法を使えます。ただ、種族によって使える魔法は大きく変わるんですね。
ヒト妖精は一部の人たちを除いて、大した魔法は使えません。そうですね、皆さんの世界で言えば、たわいもない奇術に見える程度の魔法です。
そして顔が動物、体が人間のケモノ妖精は、その動物が元々持っている能力に則した魔法を使える場合が多いようです。馬ならば足が早い、狐ならば化ける事が出来るなどなど……。
最後にもう一つの種族、ハネ妖精は、文字通り背中に薄い羽が生えている妖精で、多分、みなさんの感覚から言えば、一番”妖精らしい”姿をしている人たちです。背丈は前二者よりも小さい場合が殆どな代わりに、使える魔法は強力なものが多くなります。ただ、体力的には一番弱い種族となります。
さて、この魔法。ヒト妖精の場合は、だいたい六歳から十歳の間に使えるようになります。ただし、どんな魔法が使えるかは全く分かりません。親兄弟、はたまた一族が使える魔法とは、全く関係がありません。それだけに楽しみでもあり、心配でもあるのです。
ニールのママは、水や泡、風の精霊を操る事が出来ます。でも大した働きは出来ません。台所の洗い物、お掃除の時など、家事に利用できる程度のささやかな魔法です。でも、ヒト妖精の殆どは、このくらいの魔法しか使えないのが普通です。
一方、パパは、かなり特別な魔法が使えます。何せ、両足の下に緑色の光る輪を出現させて、空中を歩けるのですからね。大したものです(これが、ママにはチョット気に入りません)。
※ 「パパの魔法」参照。
https://ncode.syosetu.com/n0236iv/47
ニールは八歳ですから、魔法が発現するちょうど中間の頃。友だちの半分くらいは、既に魔法が使えるようになっています。だから、ニールとしてはチョット焦ってもいるのですね。「ボクはもしかしたら、一生魔法が使えないのかも知れない」なんて、子供ながらに苦悩してるんです。
パパやママに相談しても「パパは、十歳になってから、魔法が使えるようになったよ」とか「必ず使えるようになるから、心配いらないわ」とか、ニールにとっては、ちっとも慰めにならない事しか言ってくれません。
ニールは目の前のクッキーを、あっという間に平らげます。子供ながらに、プチ焼け食いといったところでしょうか。
だけどお菓子を食べてしまったニールは、途端に手持無沙汰になりました。パパもママも、今は家にいないのです。パパはお仕事へ行ったきりですし、ママも近所の奥様同士の会合に出かけています。
さすがに、八歳になったニールを連れて行くのは、気が引けたのでしょう。見え透いたご機嫌取りのクッキーを置いたっきり、息子に留守番を頼みます。街から少し離れた所にあるこのお家に、見知らぬお客があるとは思えないとの判断からでした。