扉の奥の秘宝 (2) 秘密の場所

文字数 1,095文字

「もう! あれほど言ったのに」

手に掴んだ子供服を店内カゴに入れながら、ママが咆哮します。

ママには、悪い予感がありました。

”パパはきっと、あそこに言っているに違いない”

そこは先ほど申し上げた「ママの天敵」となる場所です。でも仕方がありません。今日は家族連れも多く、その場所までパパを探しに行っていたら、安売りの目玉品はすぐになくなってしまいます。

「パパったら、覚えてらっしゃい」

ママの瞳の奥に、メラメラと燃え上がる炎が現れました。まぁ今は、その熱情を買い物に振り向ける方が賢明かも知れません。

さて、この店「ラッキー・エンカウンター」。地上三階建ての建物なのですが、実は知る人ぞ知る秘密の店が併設されています。パパの行き先もそこなのです。どこか知りたいですか? ではこれから皆さんを、その場所までご案内いたしましょう。

リサイクルショップの一階、それも奥の方にまるで目立たない場所があります。雰囲気も何だか暗くて、ちょっと寄り付きたくないなという一角です。でも近くまで行くと、人一人がやっと通れるようなドアがあり、ガチャリと開ければ地獄の底へと続くような石の階段が設置されていました。

勇気をもって階段を降り始めると、不思議な事に地下一階に相当する場所がありません。どんどん深いところへと繋がっているようです。実はリサイクルショップの倉庫は地下一階にあるのですが、この階段では彼の地へ行く事は出来ません。

地下二階に相当する位置まで階段を降りて行くと、そこには重厚な木の扉があって「会員制。この先、生半可な素人は立ち入るべからず」と書かれたプレートが貼ってあり、扉の上の壁には「エンシャント・ケイブ」とレリーフの施された重厚な金属製の看板が埋め込まれています。

何やら不気味な威圧感がヒシヒシと伝わって来る扉です。

さぁ、では取っ手を掴み、扉を開けてみましょう。

ギィ~ッという重々しい響きと共に、扉が向こう側へと動きます。果たしてそこには……。

入り口を抜けると、いきなり大きな空間が広がります。メインの照明はうす暗く、まるで中世の地下倉庫のような雰囲気です。しかし、決して怪しげな印象ではありません。壁際には大きな棚が幾つも設置されていて、それに加え部屋の中には大小のワゴンやテーブルがところせましと据え付けられていました。また補助照明を至る所に設置しており「ある商品たち」を明々と照らし出しています。

その商品……、剣や槍、モーニングスターなどの少し珍しい武器類をはじめ、鎧、兜、盾などの防具類、中には使用目的が全く分からない謎のアイテム郡もありました。そういった物が、棚やテーブルに陳列しておりました。
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