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文字数 1,328文字
廊下もまた黒く煤け、壁に刻まれた太陽、月、星の紋様が、赤、青、白の光を放つばかり。
足を床から離したまま、空中を滑る。
両開きの、見るからに重たげな扉。
空間がひらけたのが空気の流れでわかった。
視界を塞ぐものがなくなり、エントランスの薄暗がりが眼前に広がった。
兵士はこんな会話をしていた。
天井近くまで飛び上がる。
翼が火を噴いた。二人の兵士の間に着地した火焔はたちまち両者を呑み、溶かした。
階段の上には石床の焦げ跡以外に何も残らなかった。
またも体当たりで突破すると、その先の無人の広間のどこかから、兵士の叫びが聞こえた。
ある者は小銃を
既にその手が触れんばかりの距離に迫っていた兵士は、創出された『
紋様の騎士は奥に長く伸びた広間を駆け抜け、全ての兵士を薙ぎ、払い、貫き、敵兵の供給源たる紋様を、壁ごと破壊した。
生命なき者の死。
消えた騎士を追うように、イグネフェルは翼で空を切る。
緑のない中庭の、乾いた土を強く蹴る。
月を目指して舞い上がった。
狂った、無人の城塞を囲む城壁、その上へ。
それが二人を押しつぶすのを確認し、方向を変えたイグネフェルは、城塞の主郭を見つけた。
その最上階には、先ほどはなかった灯りが
大きく迫る灯り、その前に立ちはだかるガラスから身を守るべく、突入の直前翼で体を覆う。
転がって衝撃を分散し、片膝立ちになって翼を開く。