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文字数 854文字

……

…………

………………。

それでよぉ。

どうだぁ? お前んとこの女房の腹はよぅ?

…………………………。
それがよぉ〜。

もうこぉんなに膨らんでよぉ。中のチビが腹を蹴飛ばすんだとよ。

もうすぐ終わる生の営み。
どうもよ、腹ん中いてもわかるみてぇでよ。俺が父親だってよ。

俺が近くに寄ると反応が違うんだってよ!

元気よく暴れるってなあ!

うっはぁ、そりゃ可愛くてたまんねぇや!
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『思考する』

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『思考する。

それだけが僕の自己創造の手段』

認識する。
虚空に浮かぶ城塞の、窓から漏れる灯という灯。

城壁及び砦に居並ぶ兵士たちのカンテラの灯。

誰も空からの侵入者に気付かない。

見下ろす庭。

石造りの建物の、その一階の開け放たれた窓から漂う酒の匂い。魚の匂い。貝の匂い。香草の匂い。

(かまど)の匂い。

人の匂い。

そうそう、お前んとこはどうだよ?
おお?

うちの坊主かよ。

聞けよ、ようやくハイハイするようになってよぉ。こないだの非番で帰ったときなんかもニッコニコで俺のほうにハイハイしてきてよぉ!

もう可愛いのなんの――。

認識する。
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『僕は魔女と魔女の味方を殺すために()る』

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『たぶん――』

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『――そういう存在に、思考は辛すぎる』

認識する。

(おの)が翼を撫でる指。その羽の一枚一枚に刻まれた紋様を。

『火刑台』

『タール』

超弩(ちょうど)

(ふいご)

『消し炭』


そして


弔旗(ちょうき)

その意味は組み合わされ、所作(しょさ)によって非言語の言語となる。

イグネフェルの右手の指は翼の先端、そこに、どのような意図で配置されたのか、『涙』の紋様にたどり着く。

中指。最も長いその指はついぞ金属の翼を離れ、半円を描いて胸の前に。

紋様エネルギーが解放された。
兵士たちが(つど)うその部屋の全ての窓から、押し寄せる水のように、火焔が溢れ出した。
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登場人物紹介

イグネフェル

本作主人公の紋様兵器。魔女を討伐するべく旅に出る。

涙を流す機能がない。

ヴィオレンタ

本作のヒロイン。

セレナル

『世界の涙の魔女』。

30年前の器継承戦争によって魔女の地位を継いだ。

ミクリラ

30年前に名を上げた英雄オーレリアの孫娘。

ナーシュ

イグネフェルの創り主。

30年前の器継承戦争で息子イグネフェルを失い、自身は顔面を奪われた。

ヴィゼリー

西の浮遊要塞の司令官。生ける紋様兵器。

リーセリー

ヴィゼリーが連れている紋様兵器。

オーレリア

30年前の器継承戦争の英雄。ミクリラの祖父。

アグア

東の浮遊要塞の司令官。

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