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文字数 1,660文字
引き込まれるように、イグネフェルは女司祭に続いて教会に足を踏み入れた。
長いベンチが整然と並ぶさまだけが、秩序の名残だった。床は
それゆえか、女司祭の祭服の汚れが一層はっきりと照らし出された。
いや、ただ一つあるらしい。
一番前のベンチから、司祭は鎖を持ち上げた。
鎖の先には鉄の香炉がついていた。
振り香炉だ。
座るよう促しはせず、イグネフェルも、それを求めてはいなかった。
イグネフェルの隣を通り抜け、教会の入り口へ――。
彼は古い物語に憧れて、空飛ぶお船を欲しがりました。
それを自らの手で完成させたのは、僅か11歳のときのこと。
気づけばイグネフェルもまた、彼女に続いて教会の入り口に足を向けていた。
見事なお船を浮かべて自由に空を飛ぶ彼を、村の人々はどんな思いで見上げたのでしょうね。
村人たちは言いました。
『やっぱりお前はバカだ、どうやって船が宙に浮くんだ』と。
毎日、毎日、言いました。
『船が空を飛ぶわけがないんだ』と。
『やっぱりお前はバカだ』、と。
戸口から見えるのは、
教会は完全に村に背を向けている。
それが、死んだテレスの村に対する想いなのか。
それとも、テレスを
イグネフェルにはわからない。