第43話 南知多ビーチランド

文字数 2,998文字

 朝遅く起き……てないかな。午前5時に起きてしまい細々とした作業をこなす。

 今日、世間は平日金曜日だが僕はお休み。カーテンを開けると青空が見えた。じゃあ、海を見に行こうかな。海水に触れて、海の雄大さを感じたい。その目的を果たすための海岸といえば、知多半島が割と近くて良いのでは。

 知多半島、海だけ行くのはどうなんだ。という字余り五七五での自問自答の末に、南知多ビーチランドへも行くことにした。あそこなら、歩いてすぐ海を見られるはず。

 ——シュンッ!

 名古屋駅までワープした。そのワープでエネルギーを使い込んでしまい小腹が空いてしまった。だからどこかで朝食を取ろうと思う。



 ナナちゃん人形の脇にある小さなカフェに入る。出勤時にはちょっと寄りづらいお店。こういう余裕がある時こそ寄るべきタイミングではなかろうか。

 カフェラテと小倉トーストを注文して待つ間、間近で他の人の注文のためにハンドドリップしている様子を眺める。豆を挽き、フィルターに落とし、ドリップケトルで何回かに分けて湯を注ぐ。ぽたぽた抽出されていくコーヒー液から立ち昇るローストされた豆の香り。コーヒーの液面に落ちた黒い雫が撥ねる。ぽたっ、ぽたっ。
 エスプレッソマシンを操る様子もしっかり見ておく。ミルクのスチームについても。これは小説の描写の参考になりそうだ。ありがとうございます。



 小倉あんの黒色の上に、粉砂糖でアートが描かれている。綺麗なラテアートとともに写真をパシャリ。トーストは持って食べやすい厚さと幅で、びっちり塗られた小倉あんの控えめな甘さと僅かな塩味がお腹に優しくカロリーを与えてくれる。知多半島までは、なんとかお腹が持ちそうだ。カフェラテは電車で飲もうと、手持ちでお店を出た。

 名鉄名古屋駅から出発した急行電車はドンブラコ、ドンブラコ。途中の富貴で乗り換え、知多奥田駅に到着したのは12時ちょっと前。

 道なりにテクテク歩くと12分くらいで南知多ビーチランドの入り口が見えてきた。何回か来てるような気がするけど、どんなだったか全く覚えていないので実質初めての来園である。



 入園してすぐに腹ごしらえしたくなった。まだ小倉トーストが胃の中にある感覚だけど、昼食は別腹なので問題ない。いっぱい食べるぞぉ。



 釜揚げしらす丼と、ほたてラーメン塩。しらすは南知多の漁港で水揚げされたものらしい。お米にタップリ乗ったしらすの旨みが極まっている。さらにわさび醤油で味を変えてみれば……最高! しらす、大葉、米、わさび、醤油による圧倒的な進撃にやられちまったです。

 さてラーメンはどうか。ほたてをパクッ。美味(うま)ッ! 潮の風味だ。ほたての味を、塩ラーメンのスープが目一杯引き立てている。麺もスープもおいしいのは、観光地で食べているからというだけではないはず。なぜかは知らないけれど海の近くのラーメンは大抵ウマイ。確か青森でもホタテラーメンなるものを食べた。アレも塩スープがすっごくおいしかったんだ。

 注文をひとつに絞り切れなかったことが良い結果をもたらしてくれた。こうして海の幸により僕のお腹は幸せで満たされた。これなら夕方まで元気に動けるぞ。

 お腹を膨らませたところで、さぁ園内を廻るぜ!

 元気にちょこちょこ魚を撮っていたら、もうすぐイルカショーが始まるとのアナウンスが流れた。さっそくイルカプールへ向かう。
 イルカプールでは、客席の前3列が水飛沫(みずしぶき)ゾーンとなっていた。中学生か高校生くらいの団体が、かばんやスマホを後列に置いて、ジャージで前に陣取っている。中には雨合羽を羽織っている男子もいた。用意が良いなぁ。

 プールの海面より下にある柵が開け放たれたらイルカショーの始まりだ。結構な頻度でイルカたちが水飛沫を立て、前列に座っている観客たちを濡らしにかかる。はたして真ん中寄りの席はビショビショになっていた。



 さすが海に面した園のイルカなだけあって、とっても元気だ。トレーナーさんの指示に対する反応も良い。何度も高くジャンプして、かつイルカ同士の連携もバッチリ。観ていてすごく気持ち良い動き。





 そうしてイルカショーは終わり、希望者はイルカと一緒に写真を撮れるタイムとなった。それは別にいいかなってイルカプールを離れようとしたら……オオッ。



 近い!
 名古屋港水族館も近かったけど、同じくらい近い。手が2メートルくらいの長さだったら届きそうだ。

 呼吸するため定期的に水面へ上がってくる。鼻である噴気孔を開きバシュぅッと音を立てて少量の飛沫を上げる。その飛沫も時々飛んで来るくらい、近くでじっくりイルカを観ることができた。

 お次はペンギンです。



 かわぇぇぇえええ!
 そして近い!



 手を伸ばせば本当にタッチできてしまう距離だ。そのため手を近づけると危ないよという注意書きがある。当のペンギンたちは特に人を怖がる様子もなく、元気に歩き回り泳ぎ回っている。ここがすっごく楽しくて、今日来て良かったと強く感じた瞬間である。



 で、ウミガメを眺めていたら、ふれあいタイムとのアナウンス。



 アザラシの背中をさする。脂肪によるのかちょっと柔らかくて、その上に濡れた毛がびっしりという感触。触るために距離を詰めると判るその大きさ。呼吸しているから、体が少し膨らんで縮むを繰り返す。当たり前だけど生きてるんだよなぁ。



 イルカにタッチした。
 情報看板にあった通り、ナスの表面に似た手触りだった。ツルツルしていて硬いけどほんの少し弾力がある。じっとしている時のアンニュイな表情もたまらない。とってもカワイイのだ。



 ペンギンのエサやりもした。アジを落とすと、パクリと咥えて飲み込む。



 人を恐れていないのは、毎日のようにこうしてエサをくれるって分かっているからなんだ。そういえばウミガメたちも、エサくれぇみたいに近寄って来ていたなぁ。

 存分に近くで動物たちを見たあとは、園内をくるっと回る。

















 あまり遅くなると通勤の足とぶつかるため、15時くらいにはビーチランドを出た。アザラシとペンギンをかなり近くで撮れたことだし、もういいかなって。

 帰る前に海を眺めていこうと思い、5分ほど西へ向かって歩く。





 潮風が強くて若干肌寒い。海水に手で触れるとやはりまだ冷たい。海開きっていつだっけかな。まだ当分泳げそうにもない水温だった。

 で、しばらく浜に座って海を見ていた。

 潮の匂い、煌めく海面、打ち寄せる波、ざーん、ざーん……という波音。
 海はいいなぁ。これが非日常の、分かりやすい旅気分ってやつなんだ。

 海を見ていると、生まれてきて良かったと思える。こんな素晴らしい景色を見て、記憶しておけるなんて、人間冥利に尽きる。かといって海沿いに住もうなんて考えない。多分いつも海の近くにいたら、海のありがたみが薄らいでしまうだろうし、髪がパサパサになったり物がすぐに錆びたりして、デメリットの方を強く感じるようになるでしょう。

 だから時々でいい。時々、こうして海のありがたみを感じて、また明日も頑張ろうって。そう思えるのが、いいのだ。

 さて、と。帰りますかぁー。

【本日の出費】

 ダブルトールカフェビーンズ
 小倉トーストとカフェラテ
 826円
 名鉄名古屋駅~知多奥田駅の往復
 2,200円
 南知多ビーチランド入園チケット
 2,200円
 釜揚げしらす丼とほたてラーメン塩
 2,000円

 計7,226円


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