第10話 徳川美術館
文字数 2,277文字
徳川美術館。名古屋市東区にある、昭和10年に開設された日本で4番目に古い私立美術館だ。徳川家康は死後「日光大権現」つまり神格化されたため、遺品を捨てることができず、駿府御分物として将軍家や御三家へ分与された。それを含め尾張徳川家が所蔵していた大名道具や家宝を、この美術館は展示している。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_ef83d0f2f2ec1e7e9d4fe17c31383043.jpeg)
館内へ入るとすぐ、嬉しい注意事項を言い渡された。
「(2024年3月)現在、試験的にスマホ・タブレットでの館内撮影を許可しておりまして。個人使用であれば撮影していただけます。撮影NGのものは個別にマークで示していますので、それ以外は撮っていただいて構いません」
「撮った写真をブログにアップしても良いですか?」
「ええ。個人でやられてるものであれば。『いま、村正を展示してるよ』って写真付きでSNSに投稿されてる方もいらっしゃいますし」
やった。この美術館は元々写真NGだったはずだ。いい時期に来たと思うし、かなり寛大な姿勢でありがたい。写真いっぱい撮るぞッ。
第1展示室に入る前に、入り口近くで行われたボランティアの方の説明を20分ほど聴く。尾張徳川家の成り立ち、この美術館の歴史、展示室の順番には意味があること、現在の展示品の見所や美術館側から行ける蓬左文庫の一室についての説明等々、聴きごたえのある内容だった。一日に3回ほど説明をされている様子で、美術館を訪れた方々には是非ともそのお耳に入れていただきたいところ。長くなるのでここには書かないけどすごくタメになるから。
徳川家康が江戸幕府を開いたあと、大名家として尾張徳川家は創設された。家康の息子の一人、9男徳川義直が祖となる。この美術館は大名家が所蔵していた物を展示しているというわけだ。僕は今日の今日まで、将軍家の方の徳川の美術館と思っていました。すいませんでした。
アップしても良いと係員さんのお墨付きを得ているのでアップします。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_5dbb4677823131cebc3acb525b787d2e.jpeg)
伊勢国桑名の刀工、村正二代目の作とみられる。徳川家に祟りをなす妖刀村正と呼ばれるが、どうやらその妖刀伝説は後世の創作であるらしい。しかし刃は妖しく輝いている……。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_8c3bfbdd63d3492d447ac85a8d6334fd.jpeg)
国宝、包丁正宗。相模国の正宗が作りし包丁に似た短刀。透し彫りが美しい。写真では分からないがとにかく美しい。是非とも肉眼で観ていただきたい一品だ。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_355f48ed973daa4927f9e54ad406f94d.jpeg)
能の舞台に能の衣装が飾られている。美しい。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_2f7cc1dc98bdbacf888f1470a8416935.jpeg)
能装束である松桜文縫箔と白地銀桜花文摺箔。
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国宝、初音蒔絵文箱。書状を入れて相手へ届けるのに使われたものだそうな。写真だと美しさがイマイチ分かり難いけれど、実物は引き込まれるような美麗さ妖艶さを放っていた。
大名武器、大名道具、嫁入り道具などの通常展示に加え、雛祭りの展示もされていた。雛祭り展示については、個人所蔵の分が撮影禁止となっていた。個人から借りている状態で、勝手に撮影を許可できないということだろう。撮影OKだったものを幾つか載せておきます。
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![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_465b039005651beee1e0c489e74db53d.jpeg)
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凝ったものからカワイイものからちんまりしたものまで、多種多様な雛飾りがあった。モッさんは雛祭りの解説を熱心に眺めたり、大きなお内裏様のあまりにも細部にこだわった造形に驚いたりしていた。退屈せずに周れていたようでなにより。
しかし展示を見終わる少し前から、モッさんの表情が翳りがちだった。理由はわかっている。疲れたんだ。毎日2〜3時間ほど歩いている僕でも疲れるんだから、普段あまり歩かない娘はそりゃあヘトヘトだろうな。
「コーヒーラウンジあるぞ。休憩すっか」
「する。休憩」
言葉が少ない。こいつ限界を迎えてやがる。
コーヒーラウンジは何かの教室終わりなのか、着物の女性に占拠されていた。空いていた2人掛けの席に座る。男性はワシ独り。軽ーいアウェー感。
「パパ、あたしこれ」
「ケーキセット……。雛祭り三色ケーキか」
「かわいいから。あとメロンソーダ。よろしく」
そう言ってモッさんは腕を組み、目を瞑った。こいつこのあと帰れるんだろうか。もうおんぶできるほど軽くないはずで、ケーキによってエネルギーが充填されることを祈るしかない。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_f6857234a2b305fc995b93725c56090f.jpeg)
三色ケーキセットを撮影。なかなか手の込んだケーキだった。しかも本日これで売り切れ。人気あるのねぇ。
「その梅かなんかの木は食べられるのかな」
「食べてみる? はいどうぞ」
「ふむ、さすがにこれはイミテーションか。映え用ってカンジ?」
「お内裏様、チョコだった。美味しい。ケーキも」
僕はカフェオレにスティックシュガーを2本入れて飲む。甘っまぁ。ケーキはゆっくり食べてもらい、時間を稼いで休憩し、席を立ったのが15時頃。
「やっべ。ウィメンズマラソンの帰りにガチ合うな」
「どうなるの?」
「地獄」
マラソンは9時頃開催だったはず。ならば、おそらく15時台に解散すると思われる。今はまだ地下鉄に乗るべきでない。
グッズショップに立ち寄り、また時間を潰す。モッさんは尾張徳川の家紋入りクリアファイルと家系図が描かれたクリアファイルを、僕は西陣織の鳥獣戯画コースターを1枚購入。美術館を出てから土産物屋も覗いたりして、とにかく時間を潰した。
それなのに。
「メッチャ混んでるゥ!」
イベントが終わったあとの地下鉄名城線、左回りは、じ・ご・く。
僕らはへろへろで帰宅した。
【本日の出費】
名古屋〜地下鉄名城線大曽根駅 往復1人分
540円
シャトンブリアン定食 2人分
5,060円
徳川園+徳川美術館 共通券(一般・高校生)
2,700円
鯉の餌
100円
ケーキセット+カフェオレ
1,700円
クリアファイル2枚+西陣織コースター
1,160円
計11,260円
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館内へ入るとすぐ、嬉しい注意事項を言い渡された。
「(2024年3月)現在、試験的にスマホ・タブレットでの館内撮影を許可しておりまして。個人使用であれば撮影していただけます。撮影NGのものは個別にマークで示していますので、それ以外は撮っていただいて構いません」
「撮った写真をブログにアップしても良いですか?」
「ええ。個人でやられてるものであれば。『いま、村正を展示してるよ』って写真付きでSNSに投稿されてる方もいらっしゃいますし」
やった。この美術館は元々写真NGだったはずだ。いい時期に来たと思うし、かなり寛大な姿勢でありがたい。写真いっぱい撮るぞッ。
第1展示室に入る前に、入り口近くで行われたボランティアの方の説明を20分ほど聴く。尾張徳川家の成り立ち、この美術館の歴史、展示室の順番には意味があること、現在の展示品の見所や美術館側から行ける蓬左文庫の一室についての説明等々、聴きごたえのある内容だった。一日に3回ほど説明をされている様子で、美術館を訪れた方々には是非ともそのお耳に入れていただきたいところ。長くなるのでここには書かないけどすごくタメになるから。
徳川家康が江戸幕府を開いたあと、大名家として尾張徳川家は創設された。家康の息子の一人、9男徳川義直が祖となる。この美術館は大名家が所蔵していた物を展示しているというわけだ。僕は今日の今日まで、将軍家の方の徳川の美術館と思っていました。すいませんでした。
アップしても良いと係員さんのお墨付きを得ているのでアップします。
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伊勢国桑名の刀工、村正二代目の作とみられる。徳川家に祟りをなす妖刀村正と呼ばれるが、どうやらその妖刀伝説は後世の創作であるらしい。しかし刃は妖しく輝いている……。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_8c3bfbdd63d3492d447ac85a8d6334fd.jpeg)
国宝、包丁正宗。相模国の正宗が作りし包丁に似た短刀。透し彫りが美しい。写真では分からないがとにかく美しい。是非とも肉眼で観ていただきたい一品だ。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_355f48ed973daa4927f9e54ad406f94d.jpeg)
能の舞台に能の衣装が飾られている。美しい。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_2f7cc1dc98bdbacf888f1470a8416935.jpeg)
能装束である松桜文縫箔と白地銀桜花文摺箔。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_e2dfdaa83d2211f2f86f51b215c7077c.jpeg)
国宝、初音蒔絵文箱。書状を入れて相手へ届けるのに使われたものだそうな。写真だと美しさがイマイチ分かり難いけれど、実物は引き込まれるような美麗さ妖艶さを放っていた。
大名武器、大名道具、嫁入り道具などの通常展示に加え、雛祭りの展示もされていた。雛祭り展示については、個人所蔵の分が撮影禁止となっていた。個人から借りている状態で、勝手に撮影を許可できないということだろう。撮影OKだったものを幾つか載せておきます。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_425395b33f9194e81d6ce9ef623e836a.jpeg)
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凝ったものからカワイイものからちんまりしたものまで、多種多様な雛飾りがあった。モッさんは雛祭りの解説を熱心に眺めたり、大きなお内裏様のあまりにも細部にこだわった造形に驚いたりしていた。退屈せずに周れていたようでなにより。
しかし展示を見終わる少し前から、モッさんの表情が翳りがちだった。理由はわかっている。疲れたんだ。毎日2〜3時間ほど歩いている僕でも疲れるんだから、普段あまり歩かない娘はそりゃあヘトヘトだろうな。
「コーヒーラウンジあるぞ。休憩すっか」
「する。休憩」
言葉が少ない。こいつ限界を迎えてやがる。
コーヒーラウンジは何かの教室終わりなのか、着物の女性に占拠されていた。空いていた2人掛けの席に座る。男性はワシ独り。軽ーいアウェー感。
「パパ、あたしこれ」
「ケーキセット……。雛祭り三色ケーキか」
「かわいいから。あとメロンソーダ。よろしく」
そう言ってモッさんは腕を組み、目を瞑った。こいつこのあと帰れるんだろうか。もうおんぶできるほど軽くないはずで、ケーキによってエネルギーが充填されることを祈るしかない。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_f6857234a2b305fc995b93725c56090f.jpeg)
三色ケーキセットを撮影。なかなか手の込んだケーキだった。しかも本日これで売り切れ。人気あるのねぇ。
「その梅かなんかの木は食べられるのかな」
「食べてみる? はいどうぞ」
「ふむ、さすがにこれはイミテーションか。映え用ってカンジ?」
「お内裏様、チョコだった。美味しい。ケーキも」
僕はカフェオレにスティックシュガーを2本入れて飲む。甘っまぁ。ケーキはゆっくり食べてもらい、時間を稼いで休憩し、席を立ったのが15時頃。
「やっべ。ウィメンズマラソンの帰りにガチ合うな」
「どうなるの?」
「地獄」
マラソンは9時頃開催だったはず。ならば、おそらく15時台に解散すると思われる。今はまだ地下鉄に乗るべきでない。
グッズショップに立ち寄り、また時間を潰す。モッさんは尾張徳川の家紋入りクリアファイルと家系図が描かれたクリアファイルを、僕は西陣織の鳥獣戯画コースターを1枚購入。美術館を出てから土産物屋も覗いたりして、とにかく時間を潰した。
それなのに。
「メッチャ混んでるゥ!」
イベントが終わったあとの地下鉄名城線、左回りは、じ・ご・く。
僕らはへろへろで帰宅した。
【本日の出費】
名古屋〜地下鉄名城線大曽根駅 往復1人分
540円
シャトンブリアン定食 2人分
5,060円
徳川園+徳川美術館 共通券(一般・高校生)
2,700円
鯉の餌
100円
ケーキセット+カフェオレ
1,700円
クリアファイル2枚+西陣織コースター
1,160円
計11,260円