第28話 てりやきチキンサンド

文字数 2,512文字



 しだれ桜かな? ちょいフライングで咲いてるのを見つけ、写真に収めた。普段は通らない道。きっと来週には散ってるんでしょう。不安になるような鈍色の空の下、またもやいつもと違う道を歩いている。
 控えめな外観で危うく通り過ぎそうになる、小さな喫茶店のドアを開けた。

 おっと、お子さんが朝食を取っていたようだ。もう一度、店の前にあるイエローの回転灯を確認する。……回ってる、よな。

「いらっしゃいませー」

 店主が元気よく挨拶をしてくれた。ということは入っていいんだよな。改めて店内へ入り、そしてベージュレザーのソファに座る。
 四人掛けのテーブルだけど、他にお客さんは居ないから良いだろう。

 メニューを読む。モーニングには基本トーストとサラダが付き、ゆで卵、オムレツ、目玉焼き、スクランブルエッグの4つからお好きなものを1つ選ぶようだ。
 しかしメニューの表の下部には、ドリンク代プラス150円で頼めるハムエッグトーストなるものアリ。これはさらにヨーグルトor小倉あんを付けることができるみたい。

「ハムエッグトースト……とホットコーヒーでお願いします」
「ヨーグルトか小倉どっちにします?」
「うーんと、小倉で」

 火曜日あんトーストなるものを食べたばかりだけれど、ヨーグルトも昨日の朝に食べたことだし小倉あんを選択した。しっかり焼かれてバター塗り塗りのトーストが出るなら、そこにあんを乗せて食べてやろうじゃないか。絶対に美味いはずなのだ。

 コーヒーが出る。なんだか洒落た柄のカップだ。ホットコーヒーから立ち昇る濃ゆい香りに、僕のお腹が反応するグルルゥ。
 そして皿、トーストを入れたカゴが置かれていく。

 

 メニューの写真では、トーストは1枚の半分だったはず。一枚丸ごと出てきたのは、プラス150円のハムエッグトーストだからだろうか。それとも毎回1枚分のトーストが出るのだろうか。これは朝からガッツリ。小倉あんの量も多い。そして目玉焼き。目玉焼きにトーストとくればアレだな。

 ひと切れのトーストを持ち上げて、その上に目玉焼き。いわゆるラピュタパンの模倣をしてみる。大きく口を開け、目玉焼きとトーストを同時にぱくり!

 黄身が口から溢れ出て、皿にボタボタ落ちる。アニメみたく綺麗に食べたかったが僕の技量ではあかんかった。でもウマイ。卵って、醤油をかければご飯に合うし、塩コショウで味付けしたりソースをかければパンと合う。和食にも洋食にも使える汎用性の高い食材ナンバーワンだろう。

 お次は小倉あんを試す。もうひとつのトーストの表面へ塗り塗りして食べればホラ、甘くておいしい自家製あんトーストの出来上がり。ハムエッグを乗せたトーストと、あんまみれのトーストを交互に食べて、曇り空のせいでどんよりしていた気持ちを吹き飛ばす。モーニングって、今日の朝を良い思い出にするための片道切符みたいだ。その朝にはもう戻れないからこそ、良い状態で記憶したい。そしてそれをこうして記録しておきたい。

 勢いよく食べ進めたトーストは凄まじいスピードで目の前から消え、カップ半分くらいのホットコーヒーが残った。昼飯を何にしようか考えながら、残りのコーヒーを飲み干す。

 朝からお腹を満たしてしまい、寝不足の僕は欠伸をしながら出勤を再開した。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 さて昼だ。昼飯を食べに行く。

 ちょっぴり降る涙雨を早足で振り切り、東海地方のコーヒー好きならたいてい名を知っているであろうチェーン店のドアを開け、混雑した店内へ。
 この2日間で訪れた店は、ほとんどがタバコOKの所だ。僕はタバコを嗜まない。正直、店に入った時にタバコの匂いがするとウッと眉を顰めてしまうけれど、コーヒーを飲んだあとは気にならないから不思議なものである。

 カウンターに座ってメニューを取り、じっと見る。タンドリーチキンのバーガー的なものがあった。辛いチキンにコーヒーが合うのか試してみたくなる。

「タンドリーチキンは……」
「それ用のパンが売り切れでして」
「(オゥ、マイ……)えと、サンドのパンはありますか?」
「そっちはたっぷりあります」
「では、てりやきチキンサンドと、……アイスアメリカンで」

 さすがに毎日ホットコーヒーを飲んでいるので飽きがきている。そこで、アイスコーヒーとキチンの相性を試してみることにした。
 ジュージューとフライパンで焼き上げられる音を聞きながら、再びメニューに目を通す。気になったのはエードという単語だ。調べると、エードとは果汁を薄め甘味料を加えた飲料水とのこと。まぁジュースだけど、その単語とは初めての遭遇。これは旅っぽくて面白い。



 てりやきチキンサンドは思ったより肉肉しく分厚い。薄っぺらいチキンの切れ端を集めたようなものをイメージしていたので良い方向に裏切られたかたちとなった。
 アイスコーヒーをストローで吸い上げて口の中を湿らせ、その湿ったトコに三角の頂点から放り込む。焼かれる前までタレに漬けられていた様子のチキンは、てりやきソースの甘みを纏ってやって来た。ジューシーで柔らかい。

 食事中のコーヒーはどうやら、ホットでもアイスでもいいみたいだ。ホットコーヒーの利点である「良い香り」はランチ客と無縁のもの。それなら口の中がさっぱりするアイスコーヒーでいいじゃないか。明日もアイスコーヒーで攻めていこうと誓った。何に誓ったのか不明だが誓った。

 喫茶店の食事って少ないイメージだったのが、この数日でくるっとひっくり返った。パンに挟まれて具材の旨さが引き立ち、合間に飲むコーヒーはその味を下支えしてくれる。いいじゃんいいじゃん喫茶店ランチ。小説用の舞台イメージも固まってきた。あとはハンドドリップやエスプレッソマシンなどの知識を得たら、ようやく書き進められそうだ。

 本日は夜に飲み会もあって、色々楽しい話が聞けた。
 その話は別の回にしよう。いや、noteに書こうかな。

 モウ午前2時で眠いんじゃァ〜。……寝る!

【本日の出費】

 朝
 ハムエッグトーストとホットコーヒーのセット
 600円
 昼
 てりやきチキンサンドとアイスアメリカン
 980円
 夜
 居酒屋での飲み会 0円

 計1,580円
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