港町を襲う恐怖のガス!
文字数 10,198文字
とある人物から依頼を受け、一行はスコアランド内・オルゴール海岸付近の小さな港町へと到着した。
長い船旅を終え、港へと降り立つ。
その瞬間、心地の良い潮の香りが出迎える…はずだったのだが。
それは何とも言えない、しかし非常に鼻につくニオイだった。
カロの言う通り、漂うのはカメムシが身の危険を感じた時に放つ、あの悪臭だった。
それもかなり強めだ。思わず鼻をつまむ一行。
周りを見渡すと、客は一行以外誰もいない。
従業員たちはちらほらいるものの、みんなシンクロナイズドスイミングで使うような鼻栓を着けていた。
それだけ酷いようだ。
【パト】
ブレスパール使おう、このままじゃ僕たちも気絶しちゃうよ!
一行はそれぞれ所持しているブレスパールを使い、周りの空気を浄化する。
【リズ】
ところで、依頼人さんが待ってる研究所ってどこだっけ?
パトの前に小さなホログラムモニターが映し出され、マップ機能が開かれる。
それを見ながら、一行はそのままターミナルを出て目的地へと向かった。
着いた先は、小さな建物だった。カロがドアまで赴き、ベルを鳴らす。
ドアが開き、中から出て来たのはおかっぱ頭にメガネ姿の1人の男性だった。
先程の爆発のせいか、全身黒焦げになっている。
【???】
あなた方が来るまでの間、実験してたら失敗しちゃって…。
【???】
ささっ、ここにいては臭いがキツいでしょう!中に入ってお待ち下さい!
【???】
流石にこのままでお相手する訳には行かないので、ボクは一旦シャワーを浴びて来ます!もう少しだけ待っててもらえますか?
後程ロボットがお茶をお持ちしますので!
そのまま応接室へ招き入れると、白衣を脱ぎドタドタと奥の方へ消えて行った。
先程まで黒焦げだった彼はヘンリーと名乗った。曰くこの町で研究をしている科学者との事だ。
数日前から町中にカメムシのような臭いが立ち込めるようになり、まるでゴーストタウンのようになってしまったらしく、ニオイを消す研究をしているのだと言う。
【ヘンリー博士】
独自に調査した結果、あの悪臭は地下に広がる下水道から流れて来ているようなんです!
【ヘンリー博士】
当初はボク1人で下水道まで内部の調査に行く予定だったんですが…。
【ヘンリー博士】
実はそこへ向かう最中、ガスマスクを着けたカラスのような鳥たちに襲われて…。
【リズ】
ガスマスクを着けたカラス?
…それってもしかして、頭に冠みたいなツノ生えてなかった?
【ヘンリー博士】
あ、その通りです!
良かった、やっぱり何か心当たりがあるんですね!
ツノの生えたカラスのような生き物。
その特徴から、一行はこの事件を引き起こした犯人が誰なのか、一発で分かった。
【ヘンリー博士】
それで、そいつらに自前のガスマスクを壊されてしまったんです。
命からがら戻っては来れたものの、おかげでそれ以降外に出られず…。
【ヘンリー博士】
ちょうど修理に必要な材料を切らしてたもので…鼻栓さえすれば調達自体は可能なんですが、またあのカラスたちに襲われると思うとなかなか外出が出来ず…。
やはり怯えているのか、若干不安がった表情を浮かべるヘンリー。
【パト】
つまり、そのせいでみんな外に出られないって事ですか?
【ヘンリー博士】
そうなんです。
ボクのような戦う能力もない住人ではあのカラスたちには立ち向かえないので、今回あなた方に依頼させて頂いたのです。
【Z・ジェット】
そうか…。でもあんたは悪ない!
悪いんはこんなくっさいガス撒き散らしよる犯人…鳳凰団や!!
【パト】
よし、まずはヘンリー博士のガスマスクを直すために、材料集めて来なきゃね!
一行の心強い言葉を聞き、ヘンリーは再び明るくなった。
【ヘンリー博士】
ありがとうございます!
ではボクは、いつでも下水道に入れるよう、準備をして待ってますね!
どうか上手く行きますように!
【Z・ジェット】
ゴムシートとベルトに使う金具やな。
【カロ】
お店の方に伝えれば、すぐに用意して下さるとおっしゃってましたね。
一行は壊れたガスマスクを持って、指定された作業用品店に向かっていた。
そこはヘンリーも常連して利用している店であり、ガスマスク始め様々な作業用具や実験道具、はたまたその材料を調達していると言う。
お使い品のリストが記された紙と共に渡された、手描きの地図を見ながら道を進んでいた…その時。
【???】
オホホホ、カメムシガスとは画期的だねぇ!
曲がり角の先で声がした。何者かが会話しているようだ。
一行は息を潜め、会話の内容を聞き取る。
【???】
カメムシ臭を抽出したガスで住人共を恐怖に陥れるなんて…。
流石はフェニックス様!天才だぜぇ!!
【イーグル】
他の町にもガスいっぱい流し込んで住人逃げ出す、みんなオレたちの事怖くなるガー。
【孔雀】
そしてゆくゆくは全次元にガスの脅威と一緒に鳳凰団の勢力を知らしめて、ワールド中の住人がウチら鳳凰団にひざまずくのよ!!
鳳凰団のけたたましい笑い声が辺りに響き渡る。
いかにも彼ららしいアホ臭い計画だが、そのせいでこのとんでもない事態になっているのだ。放っておく訳には行かない。
【リズ】
思った通り、あんたたちの仕業だったんだね!!
それに気付き振り向く鳳凰団。彼らは悪臭にやられないよう、それぞれガスマスクをしていた。
一行と違い、ブレスパールは持っていないようだ。
【Z・ジェット】
お使い頼まれて向かいよったら、たまたまあんたらの話に出くわしたんや!!
【孔雀】
ふん、計画を知られたからには消えてもらうしかないわね!!
行くのよザコガラス、やっておしまい!!
孔雀が一行を指差して叫ぶ。
それを合図に、イーグルがザコガラスたちを召喚した。
地面に描かれた鳳凰団のシンボルを模した魔法陣から現れるや否や、ドリルのように回転しながら突進して来るザコガラスたち。
一行もすぐさま戦闘態勢に入り身構えた。
パトはメトロが、リズはノームがそれぞれ変身した刀を振るい、一振り毎にザコガラスたちを数羽同時に一掃して行く。
ジェットは正面に正拳突きをかます。
その直後前方に衝撃波が放たれ、その範囲内にいたザコガラスたちは一斉に吹っ飛ばされ消滅した。
カロは得意の射撃で、ザコガラスたちを撃ち抜いて行く。奴らは次々と地面に落ち消滅して行く。
そしてメイン勢の応戦により、全てのザコガラスが倒された。
【孔雀】
きぃ〜っ、何だい!!
相変わらず生意気な奴らだねぇ!!
【ツバメ】
でもザコガラスを倒した所で、痛くもかゆくもないんだぜぇ!!
【イーグル】
下水道にあるガス発生機、これ壊さない限り無理なんだガー。
イーグルの言葉を聞いた途端、慌てふためく他の2人。
【孔雀】
おバカ、お前はまた余計な事言っちゃって!!
ええい仕方ない、ひとまず今回の所は一旦引き上げるわよ!!
【孔雀】
アンタたちなんか、このニオイで気絶しちゃえば良いのよ!!
【ツバメ】
へっ、どうせお前らなんかにガス発生機は見つけられねぇよ〜だ!!
【イーグル】
ガス発生装置、地下深くのオレたちにしか分からない所に隠してるんだガー。
そう負け惜しみを言いながら逃げ去って行った。しばらく唖然とする一行。
【カロ】
ヘンリーさんから頼まれたお使いを済ませなければ!
すぐさま我に返った一行は、急ぎ足で店へ向かったのだった。
時は経って研究所。ガスマスクは一行が無事調達した材料を用いて完璧に修復された。
【リズ】
鳳凰団のせいでちょっと手こずっちゃって…。
【ヘンリー博士】
良いんですよ、この通りガスマスクは元に戻った事ですし!
とにかくこれで、下水道の内部調査に僕も同行出来ます!
【ヘンリー博士】
はい、役所から許可を得て承認デバイスを借りてるので、いつでも突入出来ますよ!
【リズ】
ガスマスクも直った事だし、早速行けそうだね!
こうして一行は鳳凰団の言っていた“ガス発生機“を止めるべく、下水道へ向かう事になったのだった。
【ヘンリー博士】
しかしこの事態が、まさかあの鳳凰団の仕業だったとは…。
【カロ】
彼らはいつどこで、どんな悪事を働くか分かりませんからね。
【パト】
まぁ、カラスみたいな鳥に襲われたって言ってた時点で、だいたい予想はついてたけど…。
そんな会話を繰り広げながら辿り着いた先は、小さな扉の前だった。
『関係者以外立入禁止』と書かれた白いプレートがくっ付いている。日常に溶け込むようなよく見る光景だ。
【ヘンリー博士】
? そうですけど…。
リズさん、どんな想像してたんです?
【リズ】
あたしが思うに、もっとでっかい頑丈そうな扉がドーンって…。
【ヘンリー博士】
あはは、そんなまさか!ゲームのダンジョンじゃあるまいし!
まぁ確かに多少は頑丈に作られてますし、一応結界も張られてますけどね。
【ヘンリー博士】
でも中はそれなりに広いですから、覚悟はしといた方が良いと思いますよ!
何せこの町全体に広がる下水道ですし!
ヘンリーは承認デバイスとやらを取り出した。それをドアのすぐ横にある認証機にタッチする。
ピピッと電子音がした直後にロックが外れる音が、続けてドアに張られていた結界と思しき薄い光の膜が消えた。
そのままヘンリーがドアノブに手をかけ回す。狭い部屋の中に、地下へ降りる階段があった。
ついに入り口は開かれたのだ。
そしてZ・ジェット、リズ、カロ、ヘンリー、パトの順に入り、その階段を降りて行った。
ヘンリーの言った通り、地下の下水道はかなり入り組んでいた。明かりがあるとは言え、下手すれば迷ってしまいそうだ。
ブレスパールとガスマスクを一瞬だけ外して確認した所、カメムシガスのニオイは地上のそれよりも強く思えた。
さらにすぐ横には汚水が流れており、そこから放たれるヘドロのニオイとカメムシガスのニオイが入り混じって、この世のものとは思えないような悪臭と化していた。防臭グッズがなければ生きていられるかも分からない。
一行はすぐに装着し直し、ニオイを防ぐ。
【Z・ジェット】
ブレスパールあれへんかったら死んどったわコレ!
【カロ】
間違いなくガス発生機までは、そう遠くないでしょうね。
ヘンリーはどこから取り出したのか、タブレットを確認していた。
恐らく迷わないために、下水道のマップを見ているのだろう。
【ヘンリー博士】
この先の分かれ道を右に曲がって、さらに先の3本の分かれ道を一番左に曲がって…。
あとはそこの水路沿いに進んで行けば、下の階に降りれます!
【ヘンリー博士】
以前極小のカメラ付きドローンにニオイ探知機を搭載して、排水口から潜入させて調べてみた所、最深部のコントロールルームに何やら怪しい機械が置かれてまして…。
そこから出ているニオイが、探知機で最も大きい数値を示してました。
その様子を、通路の天井に隠された小さなカメラが捉えていた。
そしてカメラから送られる映像が流れるモニターの前に、奴らは立っていた。
【孔雀】
くぅ〜、あいつらまたウチらの目的を邪魔する気だね!?
【ツバメ】
まさかここまで乗り込まれるとは…しぶといっスね。
【孔雀】
決まってるじゃない、ここに辿り着かれる前にぶっ潰すのよ!
イーグル、ザコガラスをありったけ出して下水道中に配置させな!!
【ツバメ】
姐御、そんなに召喚してガスマスク足りるんスか?
おいらたちブレスパールもないのに…。
【孔雀】
いざって時はどうにかするわよ!!
さぁ、とっととやりな!!
イーグルの足下に魔法陣が輝き、水面から飛び出すように次々と姿を現すザコガラスたち。ツバメが彼らに数ある限りのガスマスクを着ける。
ニオイ対策を施したザコガラスたちは、次々と部屋を飛び出して行った。
一方、ガス発生装置を止めるべくコントロールルームへ向かうメイン勢一行。
まずはさらに地下深くへ降りる階段を探し、ルートを進んでいた。
辺りを微かに漂っていた緑色のもやが、さらに濃くなった気がする。
【カロ】
だんだん毒々しい空気が充満して来ましたね…。
【リズ】
余計不気味になって来たかも。
何だかホラーゲームとかでありそう…。
【ヘンリー博士】
はい、おっしゃる通りガスの濃度もかなり上がって来てますよ。
間もなく目的地に着くかと。
タブレットに示された数値を見ながら、ヘンリーはそう言う。
【Z・ジェット】
せやなぁ。このニオイ、何もせんかったら死んでまうで。
道中に待ち構えるザコガラス達との戦闘をこなしつつ、一行と博士は階段を見つけてはどんどん地下へと下りて行く。
しばらく進んだところで、一行は開けた場所に出た。ここがコントロールルームのようだ。
そこは天井まで届くほどの巨大なタンクがあり、そこからパイプが何本も伸びていた。
どうやらここが最深部のようだ。ザコガラス達が数匹こちらに気付いたのか一斉に襲って来た。
一行は戦闘態勢に入り、ザコガラス達の大群を迎え撃つ!
戦闘開始から数分後、ザコガラス達は全滅した。
【???】
おーっほっほっほっほ!!やっと来たわね、アンタたち!!
言わずもがな、鳳凰団大幹部のリーダー・孔雀の声だった。
もちろん手下のツバメとイーグルもいる。3人共ガスマスクを着けていた。
【ヘンリー博士】
あなた方の目的は一体何なんですか?
【孔雀】
目的ぃ~?そんなの決まってんじゃないのさ!
この町で信者を増やすためよ!
【カロ】
そんな事はさせません!さぁ、今すぐ装置を止めなさい!!
【リズ】
ふざけないで!力ずくでも止めるからねっ!!
【孔雀】
上等じゃないのさ、やってごらんよ!
行けっ、スペシャルジャンボカメムシ!
孔雀の指示を受け、巨大タンクを突き破り何かが出て来る。
それは言葉通り、全長4メートル程の巨大なカメムシだった。
一同はその異様な姿に驚愕する。
胴体部分は丸く膨れており、頭部には2本の触覚が生えていた。
腹部はまるで風船のように大きく膨れ上がっている。
命じられるがままに、ジャンボカメムシはその巨体に見合った大きな足音を立てながら、巨大カメムシが一行に向かって突進して来た。
一行は散開し、それぞれ回避行動を取る。
ジャンボカメムシはそのまま壁に激突し、大きな穴を開けた。
【孔雀】
あ~らあら、外しちゃったみたいねぇ。
ならもう一度行くんだよ、スペシャルジャンボカメムシ!!
再びジャンボカメムシは大きな足音を響かせ、一行に迫る。
一行は散らばり、今度は各々が回避する。ジャンボカメムシは再び壁に衝突する。
ジャンプしてかわしたカロは、旋回途中のジャンボカメムシに向けてそのまま射撃する。
が、その硬い皮膚に攻撃は通用しなかった。
続けてジェットが渾身の力を込めて蹴りを入れる。衝撃でジャンボカメムシの体が少しだけ吹っ飛ぶ。
ひっくり返っていたが、すぐに羽を広げて起き上がる。
ダメージは入っていないようだ。
一方ヘンリーを守るように他のメンバーから頼まれたパトは、彼と共に瓦礫の陰に逃げ込み、そこに隠れながら一緒に策を練っていた。
【パト】
どうしよう、このままじゃ下水道が崩れちゃう。
一体どうすれば…。
【ヘンリー博士】
せめてダメージを与えられれば…。
ほとんどの動物はお腹が弱点とは聞きますが…。
【ヘンリー博士】
えっと…よく分からないけど、気をつけて下さいね!
若干混乱気味のヘンリーを残し、パトは物影から出て行った。
しばらくジャンボカメムシとの攻防が続くも、状況は変わらなかった。
そしてブチ当たりはしなかったものの、3人は突進の衝撃に巻き込まれ吹っ飛ばされる。
【ツバメ】
ひゃひゃひゃ!何度やっても同じだっつーの!!
【孔雀】
スペシャルジャンボカメムシ、そろそろとどめを刺しておやり!!
ジャンボカメムシが倒れている3人に向かって、突進の構えを取る。
と、そこへパトが飛び出す。
ジャンボカメムシが走り出し、少しだけ宙に浮いた瞬間を狙い――。
手から光の球を出し、投げつけた。そのままジャンボカメムシに命中し、光に包まれる。
その状態のまま、立体静止画のように動かなくなった。
これはパトの専用技で、10秒間だけ敵の動きを完全に動きを封じられる技なのである。
【パト】
ジェットさん、今のうちにカメムシの懐に入って!!
【パト】
フリーズボールが解けた瞬間、装置の方角に向かってカメムシのお腹を蹴り飛ばして!!
そう。先程ヘンリーが言った通り、どんな動物も弱点は腹なのだ。
ジェットはすぐさま立ち上がり、カメムシの懐へ向かって地面を蹴る。
突入する直前、フリーズボールの効力が切れた。
ボゴォォォォォン!!
右足に覇気を込め、効力が切れると同時にジャンボカメムシの腹に蹴りを入れた。
気持ち悪い悲鳴を上げ、ジャンボカメムシはそのまま吹っ飛ぶ。
そしてその先は…運の悪い事に鳳凰団のいるガス発生装置だった。
ジャンボカメムシの背中が、自分たちにどんどん近づいて来る。
ドガァァァァァァン!!!!
そのまま凄まじい轟音が響き渡る。その衝撃をモロに受け、ガス発生装置は爆発した。
背中から突っ込んだジャンボカメムシは仰向けにひっくり返ったまま動かなくなってしまった。途端に毒々しい緑色のモヤが奴から噴き出す。
【Z・ジェット】
なるほど、こんなやり方もあったんやなぁ!
ケガはなかったものの、先程の衝撃で幹部全員のガスマスクが壊れてしまっていたのだ。
壊れた装置とジャンボカメムシの分でさらに破壊力が増した強烈なニオイがその隙間から入り込み、彼らは思わず悶絶する。
【孔雀】
こ、このままじゃマズい…一旦引き上げるわよ…。
明らかに顔色が悪い鳳凰団は鼻を押さえたままおぼつかない足取りで、フラフラと逃げて行ったのだった。
その様子を見て、一行は流石に追い討ちをかける気にはなれなかった。
【リズ】
自分たちでばら撒いたガスで自滅するなんて…完全に自業自得だね。
【ヘンリー博士】
カメムシは自分のニオイで死んでしまうなんて事があるそうですし。
【パト】
でもあの人たち、いくら吹っ飛ばされても大丈夫だから、死んだりはしないと思うよ…。
あれで懲りてくれれば一番良いんだけどね。
その後ヘンリーが持参していた、試験的に独自開発した消臭剤を下水道内と町の上空に打ち上げた事により、カメムシガスのニオイは綺麗さっぱりなくなった。
なお鳳凰団は逃げ足だけは早いようで、一行が下水道内の消臭が完了後、上空に消臭剤を打ち上げるために地上に戻った頃には、彼らはザコガラスもろとも町から撤退していた。恐らく通常の何百倍・何千倍にもなるカメムシ臭を直に嗅いだ事で体調を崩したため、一刻も早く離れたかったのだろう。
ひとまず一件落着となったが、ヘンリーはこの手の消臭剤を本格的に普及させられるよう、研究を続けて行くと言う。
そしてさらに時が進み、ターミナルの搭乗口前。ヘンリー博士はメイン勢がスコアランドに帰るため、その見送りに来ていた。
今は彼らはもちろん周りの人々にも、ガスマスクやマスクを着けた者は1人もいない。
【ヘンリー博士】
皆さん、本当にありがとうございました!
おかげで町のニオイも綺麗さっぱりです!
【パト】
今度僕にも、化学式とかメカニズムとか色々教えて下さい!
【ヘンリー博士】
もちろん、またいつでも遊びに来て下さいね!
こうして港町はカメムシガスの脅威から解放され、依頼を完了した一行はスコアランドへ帰って行ったのだった。
おしまい。
【今回の主要以外の登場人物】
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【ヘンリー博士(Dr.Henry)】
→とある海辺の町に研究所を構え、主に『香り』や『匂い(臭い)』について研究する科学者。ちょっぴりドジなオタクだが、努力家で頑張り屋。メカ関係の分野にも長けている。
実は数多くの香水や芳香剤・消臭剤と言ったニオイ関連の薬品の開発にも携わっており、受賞功績も持っていたり。
自身の苦手なカメムシのニオイを、瞬時かつ綺麗さっぱりなくす消臭剤を開発するのが夢。
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誕:2月1日
年:25歳・♂
出:アメリカ
趣:フレーバーウォーター作り
好:レモンティー
嫌:カメムシ。あの強烈なニオイが無理です…。
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