場所はとある森。メイン勢一行はここにピクニックに来ており、先程まで自然の恵みを楽しんでいた。
…までは良かったのだがその帰り道。ピクニックエリアと繋がっているハイキングコースに戻ったつもりが見事に迷ってしまい、途方に暮れていた。
しかしここは、森林浴やピクニック、ハイキング等で多くの住人が訪れる割と有名な森。そこまで広くもなく、特に迷うような所ではないはずだ。
スマートフォンを使おうにも、画面の左上には圏外の文字。どうしようもなかった。
【パト】
もしかして僕たち、一生ここで迷い続けるんじゃ…。
【リズ】
ちょっとやめてよ、パト! 縁起悪いじゃん!!
【Z・ジェット】
日が暮れる前に出らんと、野宿する羽目になるで!
【カロ】
それだけは避けなくては…。
しかし何故、全く目印がないんでしょう?
確かに。行きがけにはいくつもあったはずの案内看板だが、帰り道ではそれらの類には一度もぶつかっていないのだ。
順路を大きく外れてしまったのだろうか?
【ノーム】
ありそうね、これだけ歩いても出られないんだもの。
話を聞いたパトが震え上がる。ちょっぴり臆病な彼はホラーなものが少しだけ苦手なようだ。
何かに気付いたリズがその方向を指差す。
見ると、木々の隙間から見える空へ向かってもくもくと煙が上がっていた。
煙が上がる根元の方角へ向かって、一行は再び歩き出した。
驚くのも無理はなかった。そこは開(ひら)けており、小さな家々が広がっていたからだ。煙はその中の一軒の煙突から上がっているようだ。
少数だが辺りに散らばる住人たちを見る限り、どうやら虫人族の集落のようだった。しかし一つ、気にかかることがあった。
【Z・ジェット】
そもそも人住んどったかいな、ここ?
この森の中に虫人の住むエリアなんてあっただろうか?
脳内に次々と疑問は浮かぶが、今はそれどころではない。まずは森を出るのが先だ。一行は住人たちに帰り道を聞いてみる事に。
住人たちから聞いた話をまとめた所、
・この辺一帯は森を守る一族の名を取って『エントマーズの森』と呼ばれている。
・この森は不思議な結界が張られており、通常は辿り着けない場所である。
・しかし数百年に一度の間隔でその結界が弱まる事があり、そのせいで外部から迷い込む者もいる。
・外界へ出るには再び結界が弱まるのを待つか、森を守る三姉妹による『儀式』を受けなければならない。
・儀式を受けるためには三姉妹の祖父である長の許可が必要。
との事だった。
さらに住人の一人は『実際過去に何度か同じような出来事が起きているため、事情を説明すれば分かってくれるだろう』と、簡単な地図まで描いてくれたのだ。集落の虫人たちはよそ者にも優しいようだ。
一行はこの地図を見ながら、少し離れた場所にある長の家に向かうべく歩き出した。
【パト】
エントマーズの森って確か、幻の森って言われてる所だったよね?
エントマーズの森。TS世界もといしづキャラワールド全域でも昔から言い伝えられている幻の森である。
と言うのも外界の住人で足を踏み入れたのは数える程しかいないらしく、言い伝えを信じない者も多数いたため、幻の存在とされていたのだった。
【Z・ジェット】
依頼されたんならまだしも、ただ迷っただけやからなぁ。
よく見るとそれは一人の少女だった。赤と黒のショートヘアに同じく赤と黒を基調にした服装。背中には7つの黒い斑点が入った赤い羽。
どうやらテントウムシの虫人のようだ。ものすごく慌てふためいているようだが…?
ガサガサッ!!!突然、彼女の背後から何かが飛び出して来た。
それは数匹の黒いクモだった。一般的なサイズにしてはかなり巨大だ。噛み付かれでもされたらひとたまりもないだろう。
パニックになっていた少女は腰を抜かしてすっ転ぶ。このままではクモたちに襲われかねない。
一行はすぐさま戦闘態勢に入った。
メトロが変身した刀を握って一振りし、クモを真っ二つに斬るパト。
リズもノームが変身した刀で斬りかかる。クリーンヒット!!
カロはクモたちを、手の平から放たれる光弾で狙い撃つ。
そしてその射撃で吹っ飛ばされた所に、ジェットの必殺回し蹴りが炸裂した。
強力な攻撃を受け、地面にひっくり返るクモたち。まもなく起き上がると、覚えてろと言わんばかりに逃げて行った。
クモの子を散らすように…とはまさにこの事だ。
その一部始終を見ていた少女はお礼を言った。ようやく落ち着き我に返ったようだ。
【パト】
すごく慌ててたみたいだけど…何かあったの?
少女はこれまでの経緯を説明し出した。
彼女は何と例の三姉妹の三女で、名をマリキータと言った。先程まで長女・ファルファーラ、次女・ビーネと共に森の中を巡回していたらしい。
そして一部を除く住人たちは立ち入りが禁止されている『危険区域』の付近に差しかかった際、三姉妹は突然2人の虫人の男たちに襲撃された。姉たちはマリキータを安全な場所へ隠した後、戦闘態勢に入り男たちを迎え撃つ。
流石は森を守る存在なだけあり姉たちはあっさり男たちを撃破し勝利した。しかしその安堵による油断が仇となってしまう。姉たちは突然彼らが唱えた怪しい呪文による謎の光線を浴びせられ、チョウとハチに姿を変えられてしまった。
『もし自分たちに何かあったら、構わず一度集落に戻って誰かに知らせるように』と事前に言われていたマリキータは、やむを得ず命からがら戻って来たと言う…。
【マリキータ】
ホント!? ありがとう!!
…あっ、そうだ! まずはおじいちゃんに知らせなきゃ!
【カロ】
…! そうでした!
実は私たちも、長様の所にご用がありまして。
【マリキータ】
そうなんだ!それならボクのお家だから、案内するよ!
付いて来て!
【クレス・ビートル】
そうか、ファリーとビーネが…。
族長クレス・ビートルは渋い顔をした。
この森の貴重な戦力である孫娘たちがやられてしまったのだ、流石に戸惑うだろう。
【マリキータ】
ごめんなさいおじいちゃん、お姉ちゃんたちを助けられなくて。
【クレス・ビートル】
いいや、いつでもこちら側が勝てるとは限らない事は分かっておった。
マリキータ、お前の判断は正しかったぞ。
【クレス・ビートル】
メイン勢の皆様も孫を守って頂き、感謝致すぞ。
【カロ】
いえ、危険な状況でしたし、当然の事をしたまでですよ。
【クレス・ビートル】
本当に申し訳ない…。
ところで何故、メイン勢なる方々がこのような所に?
【クレス・ビートル】
…なるほどのう、この森を出て外界へ戻りたいと。
【クレス・ビートル】
ふむ、そう言う事ならば話は早い。お主らに儀式を施す事を許可しよう。
もっとも、一方通行になるがの。
【クレス・ビートル】
しかしそのためにはどっちみち、残りの孫たちを助けねばならん。
【マリキータ】
おじいちゃんとボクたち姉妹が揃ってないと、その儀式は出来ないんだよね…。
【Z・ジェット】
そういやさっき道聞いた時、何や言うてたな。
【カロ】
でしたら救出に向かいましょう。
彼女たちを助けない限り、この森からも出られません。
先へ進まなければ自分たちも困ったままだし、そもそも困っている人を助けるのに理由などいらない。
一行は快く救出の手伝いを申し出た。
【クレス・ビートル】
おぉ、ありがたい! では救出後に必ず儀式を施すと約束致そう!
ワシは万一に備え、仲間を集めて対策を練るとしよう。
【マリキータ】
お姉ちゃんたちがいる所まではボクが案内するよ!
【マリキータ】
お姉ちゃんたちの気を感じ取る事くらいは出来るよ!
【マリキータ】
“キーちゃん”で良いよ!
ボクは末っ子だけど森を守る三姉妹の一人だよ? 戦う事くらい朝飯前さ!
【クレス・ビートル】
油断は禁物じゃ、気を付けるのじゃぞ。
こうして一行+マリキータは姉2人を救出し元の姿に戻すべく、最初の目的地へ向かうのであった。
【マリキータ】
ここからビーネお姉ちゃんの気を感じる!
マリキータに導かれ、一行は西の外れにある薄暗い藪の空洞へやって来た。
まずは比較的強い気を感じ取る事が出来たらしい、次女・ビーネの救出に向かっている所だ。
【リズ】
全然手入れされてないみたい、虫除け使っとこ。
市販の虫除けはニオイがキツくむせるからと、代わりにレモンのアロマオイルを薄めて作った虫除けスプレーを吹きかける。
【マリキータ】
それなーに? レモンの香りがするね。
不思議そうな顔をしながら、虫除けを使うリズを見るマリキータ。
【カロ】
手作りの虫除けです。
蚊やブヨには虫除け対策として、柑橘系やハーブ系のアロマオイルも効果的なんですよ。
【マリキータ】
アロマオイル…他にもスパイスとかお花とか色々あるアレ?
【マリキータ】
うん、ファリーお姉ちゃんがその日に合わせて毎日ブレンドしてくれるんだ!
おかげでお家はいつも良い香りでいっぱいだよ!
【リズ】
何かあたしの虫除けで盛り上がってるみたいだけど、キーちゃんもやっとく?
そして全員が露出している部分に虫除けを吹きかけた。
これで虫刺されの心配は無用だ。もっともモンスターに効くかどうかは不明だが。
【リズ】
よーし、キーちゃんのお姉さんたちを助けに行くぞー!!
虫除けの準備もしっかり整え、一行は早速藪の中へ突入した。
マリキータは武器である魔法の水鉄砲片手に、どんどん先へと進んで行く。一行も気を引き締め、それに続く。
幸い先程の虫除けのおかげで、虫に刺される事はなかった。しかし流石に藪の陰に潜むモンスターには効かないようだった。襲いかかって来るモンスターたちは主にハエや蚊、毒グモと言った害虫をそのまま人間の赤ん坊くらいに大きくしたサイズの奴らばかりだ。
パトとリズは斬り技で一刀両断し、ジェットは得意の鉄拳と蹴り技を叩き込み、カロは光弾の射撃を食らわせる。マリキータも負けじと水鉄砲から放たれる酸の弾を当てて倒して行く。
その後も何度かモンスターたちが現れたが、彼らにとってはもはや敵ではない。降りかかる火の粉を払いつつ、最奥部を目指して突っ走って行った。
数々のモンスターの妨害を突破し、辿り着いたのは藪の最奥部。
ブーン…。そこへ力強い羽音を立てながら、一匹のミツバチが飛んで来た。
どうやらこのハチが三姉妹の次女・ビーネのようだ。
ハチは駆け寄るマリキータを避けるように周りをブンブン飛び回る。
まるで早く逃げろと言わんばかりに。
【??】
ほう、まさか部下たちを振り払ってここまで来れるとは…見事なものです。
紳士じみたセリフと共に、颯爽と一つの影が現れた。
少しだけ赤の混じった黒と白の燕尾服、わずかに毛の生えた触覚、天狗のように長い鼻、背中には黒がかった半透明の羽。
口からはキバが覗いており、外見からしてまるでヴァンパイアみたいだ。彼は恐らく蚊か何かの虫人だろう。手には人魂のような物がふよふよと浮いている。
【マリキータ】
こいつだよ、ボクたちを襲った奴らの片方!
【??】
いかにも。
私はクレイグ、親愛なるマダム・スパイディーネ様の忠実な部下です!!
【クレイグ】
それは出来ませんねぇ。
マダムから“邪魔者を排除せよ”とのご命令ですから。
【クレイグ】
ククク…あなた方が知る必要はありませんよ。
これ以上詮索と邪魔が出来ないよう、全員まとめて骨の髄まで吸い尽くして差し上げましょう!!!
【カロ】
そうは行きません! 叩き潰されるのはあなたの方です!!
一行とマリキータはすぐさま戦闘態勢に入った。
不快な羽音を立てながらクレイグは辺りを飛び回る。
怒りに身を任せ水鉄砲を撃つマリキータ。しかしクレイグは華麗に液体の銃弾をかわす。
【クレイグ】
はっはっは、まさかそんなおもちゃで私を倒せるとでもお思いなんですか!?
攻撃を食らい吹っ飛ばされたマリキータを、間一髪の所でジェットが受け止めた。
幸い大ダメージにはならなかったものの、少し手を切ってしまったようだ。
【マリキータ】
だいじょぶだいじょぶ! 平気だよこのくらい!
そう言ってどこからか絆創膏を取り出して貼り付けるマリキータ。
ホッとしたのも束の間…。
【クレイグ】
他人の心配より自分の心配をなさってはどうです?
ガバッ!!後ろに回り込んでいたクレイグがジェットを取り押さえる。
ガブゥッ!!!
次の瞬間、口から生えた2本のキバがジェットの腕に食い込んだ。
直後に走る凄まじい激痛に思わず呻くジェット。
クレイグはそのままチュウチュウと血を吸い始めた。流石は蚊の虫人だ。
ようやくジェットの腕からクレイグの口が離れる。
彼の口元は血で真っ赤に染まっていた。その姿はさながらヴァンパイアのようだ。
【クレイグ】
本当はそこにいるレディの血が欲しかったのですが…思いがけない邪魔が入ってしまいましたね。
まぁおかげで体力と魔力は回復したから良しとしましょう。
そう言いながらクレイグは袖口で口を拭う。
ジェットは血と共に体力と魔力もとい気力を吸われ、すっかり青ざめていた。結構なダメージとなってしまったらしい。
【マリキータ】
ジェットお兄さん、本当にごめんなさい!
【クレイグ】
ほらほら、よそ見しない!! まだまだ行きますよ!!
再び羽を広げてホバリングを始めるクレイグ。
マリキータは水鉄砲を構える。
彼のホバリングから発される蚊ならではの不快な羽音に、一行は思わず耳を塞いだ。
そして…。
ブワァッ!!!凄まじい衝撃波が一行めがけて放たれた。
耳を塞ぐのに気を取られていた一行はその攻撃をまともに食らってしまった。
一行はたちまち吹っ飛ばされ、少し離れた地面に叩きつけられる。
【クレイグ】
はっはっは! 口ほどにもありませんねぇ!!
何とも腹立たしい表情と口調で、勝ち誇ったように嘲笑する。
【クレイグ】
さて、とどめにもう一発食らわせてあげましょうかねぇ。
彼はとどめを刺そうと再びあの不快な羽音を立て始めた。このままではやられてしまう。一体どうすればいいのだろう。
ふとリズの脳裏にカロの言葉がよみがえった。
“蚊やブヨには虫除け対策として、柑橘系やハーブ系のアロマオイルも効果的なんですよ”
とっさにリズが持っていた手作りの虫除けアロマを取り出す。
【マリキータ】
リズちゃん、どうしたの? 虫除けなんか取り出して…。
【リズ】
えへへ、良い事思い付いちゃった! まぁ、見てなって!
そう言いながら虫除けのキャップを外す。たちまち強烈なレモンの香りが広がる。
虫除けのふたを開けたままボトルを上空へ投げた。そのまま落ちれば中の液体がぶちまけられて大惨事だろう。
しかしその後リズが起こした行動は、その予想を遥かに上回った。
そのまま魔法で指先に小さなつむじ風を生み出し上空へ掲げる。つむじ風は降って来た虫除けの液体を巻き上げる。
そしてリズの指先の上で踊る、小さな水の竜巻が完成した。相変わらず香りは市販の芳香剤並みに強烈だ。
【リズ】
そうだよ! せっかくだからこれあげるね!!
必殺・アロマトルネード!!
そう言ってリズはクレイグめがけて先程の香水竜巻を放った。
ビシャアアアアアッ!!!!
その攻撃をもろに食らったクレイグ。辺り一面にレモンの香りが広がる。
【クレイグ】
ぐっ、く、臭いっ!! 何だこの悪臭は!?
【マリキータ】
なるほど! さっきの虫除けの香りで怯ませようってんだね!
【Z・ジェット】
虫除けの事、すっかり忘れとったわ。
【パト】
でも液体を直接かけるなんて…普通は思い付かないね。
【カロ】
肌や衣服に付着するとしばらくは香りが落ちませんからね、くれぐれも扱いには気を付けませんと。
亜人とは言え所詮は蚊、柑橘系のアロマオイルの成分はかなりの悪臭らしかった。
クレイグは種族柄大嫌いなレモンの香りを、それも液体ごともろにお見舞いされ、相当なダメージを食らったようだ。
たった数滴分とは言え、人間でも悶絶するレベルの香りだ。それを彼が受ければひとたまりもないだろう。かなり顔色が悪く、立っているのがやっとの状態だった。
挙句の果てに羽が水とアロマオイルの油分でベタベタになり、飛行と言う手段も封じられてしまっていた。
【カロ】
反撃開始です! “トルネードバースト”!!
形勢逆転したのを悟ったカロが風の攻撃魔法を唱える。今度は彼女の手から強い竜巻が放たれた。
言うまでもなく命中し、クレイグは吹き飛ばされる。
ザシュッ!そこからパトとリズの刀によるツインアタックが炸裂!
【Z・ジェット】
さっきのお返しじゃ、うおりゃあああーーーー!!!
ドガァァァァァン!!さらに続けてジェットが強力な横蹴りを食らわせた。
先程受けた吸血攻撃により、若干与えられるダメージは落ちてしまっていたが、それでも怯んで弱体化していたクレイグには十分だった。
攻撃をまともに食らった彼は一行と同じように吹っ飛んだ。
水鉄砲から発射された、強力な酸の弾丸による一発がクレイグを襲った。
酸の弾丸は見事に命中し、彼は地面に叩きつけられた。
レモンの香りを漂わせたまま、地面に倒れるクレイグ。戦闘不能になったようだ。
【マリキータ】
でもすごいや、まさか虫除けアロマでやっつけちゃうなんて!
【リズ】
でしょ? あいつも蚊だからさ、もしかしたら行けるんじゃないかって!
【Z・ジェット】
そもそもあのニオイは人間でもアカンからなぁ。
【パト】
それも液体ごとかけられちゃってるからね、大丈夫かなあの人…。
先程カロも言っていたが、アロマオイルは一度肌や衣服に付着すると香りがしばらく落ちない。流石に死んでしまわないかちょっと心配だ。
そんな話をしている間に、倒れたクレイグの体が輝き出した。そのまま光の粒と化して彼の体は消え、ただの蚊となってどこかへ飛んで行ってしまった…。
【マリキータ】
元々ただの蚊だったみたいだね、あいつ。
【マリキータ】
うん、会った時から“ヒト”の気をほとんど感じなかったんだもん。
【カロ】
なるほど、となるとあなた方を襲ったもう一人の殿方とやらも、もしかしたら…。
それに彼が言っていた“マダム・スパイディーネ”と言う人物も、何者なのか気になりますね。
一方クレイグが持っていた人魂は、その場に留まりふよふよ漂っていた。
と、今度は先程のビーネと思しきハチがその人魂に向かって行った。
ハチは外はねの金髪に黒のメッシュが入った、美しい虫人の少女となった。
彼女がマリキータの姉の一人・ビーネの本来の姿なのだ。
【ビーネ】
あぁ…良かった! キーちゃん、無事だったんですね!
【マリキータ】
あのね、この人たちが一緒に協力してくれたんだ!
【ビーネ】
まぁ、そうだったの…。
皆さん、私と妹を助けて下さり本当にありがとうございました。
そう言い、ビーネは深々と一行に向かってお辞儀する。
【Z・ジェット】
あんたの妹もめっちゃ活躍してくれよったで!
【ビーネ】
あの、でしたら私もご一緒させて頂いてよろしいですか?
【ビーネ】
もちろんです! 私も姉を助けたいので。
それに私もあなた方に恩がある身…皆さんに任せっきりにする訳には行きませんから。
【マリキータ】
わーい、ビーネお姉ちゃんがいれば百人力だぁ!
突然の展開に一行は大喜びした。仲間が増えればそれこそ心強い。
【ビーネ】
ではお疲れのようですし、一旦戻って次の戦いに備えましょう。
【マリキータ】
ビーネお姉ちゃん、ハニーレモネード作ってよ!
【ビーネ】
良いですよ。でもキーちゃん、あまりゆっくりはしていられませんからね。
こうしてビーネを新たな仲間に加え、一行は残る長女を救出すべく準備する事になった。
=Chapter2へ続く=
【今回の主要以外の登場人物】
====================
【マリキータ(Mariquita)】
→エントマーズ三姉妹の三女でテントウムシの虫人。愛称は『キーちゃん』。
明るく活発なボクっ娘で好奇心旺盛な性格をしており、それ故か外見も現代っ子な感じ。
今はまだ小さいが、いつか自分も姉たちのように強く美しくなりたいと思っている。
敵にダメージを与えられる謎の液体を入れた水鉄砲(必要な時は補助魔法もプラス)を駆使して戦う。
====================
誕:5月28日
年:13歳・♀
出:エントマーズの森
趣:フォトコレクション(主に自撮り)
好:トマト
嫌:パクチー
【ビーネ(Biene)】
→エントマーズ三姉妹の次女でハチ(ミツバチ)の虫人。思いやりのある優しい心の持ち主。
しかし流石はハチなだけあり、戦闘になると意外にも強く頼りになる存在。
敵に果敢に立ち向かい、大切なものは恐れずとことん守り抜く。
武器であるランスに自身の毒をまとって戦う。
クレイグにヒト成分を奪われミツバチに変えられていたが、マリキータと一行の活躍により無事救出された。
====================
誕:7月6日
年:16歳・♀
出:エントマーズの森
趣:家庭菜園
好:ハニーレモネード
嫌:スナック菓子
【クレス・ビートル(Cules Beetle)】
→エントマーズ三姉妹の血の繋がらない祖父。カブトムシ(ヘラクレスオオカブト)とクワガタのハーフ虫人で、森で暮らす虫人族の長を務める。
長きに渡り森を守って来た戦士で、身寄りのない三姉妹を引き取り男手一つで育て上げた。厳しくも優しい素敵なおじいちゃん。
三姉妹には『自分の身は自分で守れるように』と、簡単な戦闘を教えている。
普段から体に向かって右側をマントで隠しているのは、若い頃に左腕を戦いで失ったため。
====================
誕:1月21日
年:年齢不詳・♂
出:エントマーズの森
趣:外界の図書館で歴史書を読む事
好:孫娘たち。みんな優しい子に育ったものじゃ。
嫌:悪人、戦争
【クレイグ(Craig)】
→蚊(ヒトスジシマカ)の虫人。一見紳士的な態度を取っているが、敵相手には至って残忍。
蚊なので吸血可能(※本来オスの蚊は血を吸わないが、彼が仕えるマダム・スパイディーネによって与えられた)。針が2本の牙状のためその姿はまるでヴァンパイアのよう。
この吸血能力を使い、相手の体力や魔力・気力を吸い取ったりする。また不快な羽音で超音波を発し、相手を怯ませる事も。
====================
誕:??
年:推定20~30代・♂
出:エントマーズの森(危険区域内)
趣:クラシック音楽鑑賞
好:新鮮な生き血
嫌:トマトジュース