あの娘の瞳に乾杯!

文字数 3,759文字

ある日、ブラウド将軍と万田丈二郎はハーモニーシティ内のオシャレなバーに飲みに来ていた。
おなじみの長いカウンター席で、2人並んで座っている。

【ブラウド将軍】

でよ、また作戦失敗しちまってよ~。

【万田丈二郎】

おいおい、お前んとこの星、地球侵略する気あんのか~?

【ブラウド将軍】

そりゃあるに決まってんだろ!

一応は本気なんだぜ?

【万田丈二郎】

その割にゃあ、地球人の俺と仲良くして楽しくやってんじゃねぇか!

【ブラウド将軍】

そんな事言ってられんのも今のうちだぜ!?

足下にひれ伏させてやっかんな!!

【ブラウド将軍&万田丈二郎】

ガーハッハッハッハッハッハッ!!
2人の笑い声が響き渡る。

会話の内容はものすごいが、仲は良さそうだ。

【マスター】

お客様、申し訳ありませんがお静かに願えますでしょうか…?

【ブラウド将軍】

おっとすまねぇ、また騒いじまったな。

【万田丈二郎】

悪ぃ悪ぃ。
バカ騒ぎをマスターに注意された2人は、大人しく飲み始めた。





【万田丈二郎】

はぁ~、バカ騒ぎ性分の俺からしたら、1分黙るだけでも結構辛ぇんだよなぁ…。

【ブラウド将軍】

だったらよ、今から面白ぇ事やんねぇか?

【万田丈二郎】

面白ぇ事?

お前、一体何やるってんだ?

【ブラウド将軍】

まぁ見てなって。マスター、いつものもう一杯くれ!

【マスター】

かしこまりました…どうぞ。
マスターが常連であるブラウド将軍のために、特別にブレンドされたカクテルを出す。
そのカクテルは上半分が鮮やかな緋色、下半分が黄金色の美しいグラデーションだった。まさに彼を表したカラーリングとも言えよう。

【万田丈二郎】

へぇ~、お前専用のカクテルか。なかなか綺麗な色してんじゃねぇか。

で、これ飲むのか?

【ブラウド将軍】

ちっちっちっ、それがだな、面白ぇのはこれからなんだよ。
そう言うとブラウド将軍は少し離れた席に座っている、2人組の女性のうちの一人に狙いを定める。

【万田丈二郎】

えっ、お前まさか…。

【ブラウド将軍】

いいから黙って見てなって…そりゃっ!
そのまま勢い良く右手を滑らせ、カクテルの入ったグラスをスライドさせた。
グラスは倒れる事なくテーブル上を滑って行き、徐々にスピードを緩め、最終的にはその女性の前で見事にストップした。

【女性A】

…?
【マスター】

あちらのお客様からでございます。

すかさずマスターがブラウド将軍の方向を指す。

当のブラウド将軍は女性に向かって親指を立てる。

【女性A】

まぁ…嬉しい!

あの方にお礼をお願いします。





【ブラウド将軍】

な?面白ぇだろ?
先程の女性からマスター経由でお礼の言葉を受けたブラウド将軍は、嬉しいのか少しテンションが上がっていた。

【万田丈二郎】

はぇ~、こりゃあ粋なやり方だなぁ!知らなかったぜ!!

【ブラウド将軍】

お前も可愛い娘見つけたらやってみろよ!アタックすんだ!!

【万田丈二郎】

おうよ!
そう言いながら万田は辺りを見渡し、好みの女性を探す。

【万田丈二郎】

…おいブラウドの野郎、あの娘どう思う?
どうやらすぐに見つかったようだ。万田が目を向けたのは、いかにも清楚そうな美しい黒髪の女性だった。
ブラウド将軍がカクテルをあげた先程の女性の隣に、こちらから見ると奥側に座っている。その分難易度は高そうだ。

【ブラウド将軍】

へぇ、意外だな。

お前の事だからもっと騒がしい娘選ぶかと思ったぜ。

【万田丈二郎】

べーろい(=バカ野郎)!

俺の国じゃな、ああ言った綺麗な身なりの女の子がモテるんだよ。

【ブラウド将軍】

ま、あの娘がお前好みって事か。

よっし、んじゃやってみ…。




ヒュン。2人の目の前を何かが横切った。

グラスが滑って行ったのは確認出来たが、そのグラスに正体不明の何かがくっ付いたような感じだった。

【ブラウド将軍】

…?
よーく目を凝らしてみる。やがてその横切ったものの正体が判明した。

【ブラウド将軍&万田丈二郎】

ゲェッ!?!?!?!?!?

【ツバメ】

ひゃひゃひゃ、よく滑るぜぇ~~~!!
それはあの鳳凰団の一員・ツバメだった。彼がカウンターの上に寝そべり、グラスと一緒にカウンターの上を滑っていたのだ。
いつからいたのか、そもそも何故単独で行動しているのかは不明である。
しかしこれがオシャレな店の雰囲気に見合わない、と言うか根本的に最悪な光景である事は間違いないだろう。

【ツバメ】

なぁなぁ姉ちゃんよぉ、おいらと一緒にこのカクテル飲まねぇかぁ~~???
その後、万田がロックオンしていた女性の前に止まり、下品にも鼻をほじりながらグラスを手渡そうとする。

【女性B】

へっ!?

【女性A】

ひぃっ!!

【ツバメ】

ほーら、遠慮しねぇでさぁ~~~♪
そう言いながら、ツバメはニヤニヤ下品な笑いを浮かべてグラスを女性たちに近付ける。さっき鼻をほじった手で。
【女性A&B】

きゃぁぁぁぁーーーー!!!!!

当然のごとくその場から逃げ出す女性たち。

野郎2人始め、この光景にはマスターも他の客も無論ドン引きだ。

【ブラウド将軍&万田丈二郎】

……(怒)
2人の体がブルブル震える。あまりにも失礼極まりない迷惑行為に、怒りを抑え切れないようだった。

【ツバメ】

おいおい待てよぉ、このツバメ様に逆らっても良いと思ってんのかぁ~~?
そう言ってツバメが女性の後を追いかけようとした、その時。

【ブラウド将軍】

てめぇ…ふざけんのもいい加減にしやがれ!!!

【万田丈二郎】

第一、ここはお前みてぇなクソガキが来る所じゃねーーーーー!!!!!!
バゴーーーーーン!!!!!!

叫びと同時に、2人の鉄拳が炸裂した。

【ツバメ】

ぎゃひぃ~~~!!!!
ツバメは天井を突き破って吹っ飛ばされ、そこから見える夜空の星へと紛れて行った…。




【万田丈二郎】

ちっきしょ~、あのクソガキには邪魔されるし、結局お目当てのカワイ娘ちゃんには逃げられるし、貴重な時間台無しにされちまうし…ホントツイてねーな。

【ブラウド将軍】

全くだぜ。
あの後2人はマスターや客らに平謝りし、壊してしまった店の天井の修復も手伝った。
まぁ悪者を追い払った事で他の者からは心からの拍手が送られたので、結果オーライではあったのだが。

【ブラウド将軍】

しゃーねー、別の店で飲み直すか。

【万田丈二郎】

だな、今度は“胡蝶蘭”って居酒屋行こうぜ!

女将の胡蝶姐さんがめっちゃくちゃ美人でさ、しかも良い人なんだぜ!

【ブラウド将軍】

おっ、良いなそりゃ!

今から行って鳳凰団のクソ野郎共への悪口大会だ!!

そんな話をしながら盛り上がっていた時。

【??】

あ、いたいた!すみませ~~~ん!!
2つの人影が駆け寄って来た。

1人はブラウド将軍がカクテルを渡した女性、もう1人はツバメに絡まれた際に逃げ出した、万田がカクテルを渡そうとしていた女性だ。

マスターから店を出た事を聞き、追いかけて来たのだろう。

【女性A】

さっきはありがとうございました!

【女性B】

私も危ない所を助けて下さって…。

【ブラウド将軍】

いやいや、いーって事よ!

第一、俺らもあのクソガキ許せなかっただけだしな!

【万田丈二郎】

そーそー!気にすんなってんだ!





【女性A】

あ…そうだ。

さっきのお話聞いちゃったんですけど、今から私たちもご一緒して良いですか?

【ブラウド将軍&万田丈二郎】

…へ?
突然の展開に、拍子抜けした顔でキョトンとする野郎2人。

【ブラウド将軍】

べ、別に構わんけどよ…。

お前さんたちみてぇな、洒落たべっぴんさんが好きそうな場所じゃねぇぞ?

【万田丈二郎】

今から俺たちが行くのはやかましい居酒屋だぜ?

【女性B】

あ、お構いなく!

一度居酒屋にも行ってみたかったんです!

【女性A】

それにせっかく知り合ったんだし、あなた方と思いっきりお喋りしたくて!

【万田丈二郎】

マジかよ…。へへっ、何か嬉しいねぇ!

【ブラウド将軍】

そこまで言うなら…いっちょ付き合ってやっか!

【女性A&B】

やったぁ、ありがとうございます!




とまぁこんな経緯で、やかましい野郎共2人は様々な酒の社交界でたちまち人気者になった上、その後さらに何人もの可愛い女の子たちと仲良くなれましたとさ。


おしまい。




【今回の主要以外の登場人物】


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【万田丈二郎(まんだ じょうじろう/Joujirou Manda)】

→ジパング政府直下の銃撃隊・サムライガンナーズの隊長。

隊長と言う役職なだけあり射撃の腕前は百発百中で、狙った獲物は決して逃がさない。

周りからは『万丈(ばんじょう)兄さん』の呼び名で慕われている。


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誕:11月11日

年:20歳・♂

出:ジパング

趣:モデルガン収集

好:おでん(特にちくわ!)

嫌:横文字が一番読みにくい…。

【ブラウド将軍(Captain Bloud)】

→地球侵略のためにやって来た、アラビキ連合軍を率いる将軍。

豪快で強引な性格だが卑怯なやり口は大嫌いで、正々堂々とした正面突破の戦いを好む。

しかし母星からの侵略命令を差し置いて、逆に地球になじんでしまっている模様。


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誕:444月999日

年:38歳・♂

出:アラビキ連合惑星第282号

趣:居酒屋巡り

好:酒(特にワイン、日本酒)

嫌:卑怯な作戦

【女性A】

→万田とブラウド将軍がナンパした女性の一人。

明るく活発な性格。

【女性B】

→万田とブラウド将軍がナンパした女性の一人。

大人しい黒髪美人。

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登場人物紹介

【ポジ詩月(Posi-Shizuki)】

→詩月のポジティブな感情が人の姿になった生き物。前向きで常に明るい事を考える。

ただし、現実世界の非情かつ最低な人間の事は大嫌い。もちろん創作世界の平和を乱そうとする連中も大嫌いである。

容姿は詩月本体に似ている(ただし美化2000%)。テンションが上がると声がでかくなる。

ネガ詩月とはいつも一緒にいる。周りを盛り上げるムードメーカー。


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誕生日:8月1日
年齢:詩月と同じ・♀
出身地:福岡県某所
趣味:ネットサーフィン、イラストを描く事
好きな物:ゲーム(特に音楽ゲーム)、動物(特に猫)
嫌いな物:現実の非情かつ最低な人間、平和を乱す連中、アリ、あと軍曹。こいつらだけは絶対無理!!

【ネガ詩月(Nega-Shizuki)】

→詩月のネガティブな感情が人の姿になった生き物。後ろ向きで根暗な方だが、最近は若干明るい子になりつつある。

しづキャラたちの中でも特に、現実世界の非情かつ最低な人間や創作世界の平和を乱そうとする連中を憎悪している。

恐らくしづキャラワールドの中では最強。怒りが一定値を超えると『スーパーネガ詩月』に変貌し、しばらく手が付けられなくなる。

しかし怒らせさえしなければ根はとても良い奴。


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誕生日:8月1日
年齢:詩月と同じ・♀
出身地:福岡県某所
趣味:静かな所でのんびりする、妄想する
好きな物:ポジに伸びた髪を切ってもらう事、創作世界の住人たち、動物(特に猫)
嫌いな物:現実の非情かつ最低な人間、平和を乱す連中、承認欲求

【パト・タクティズム(Pato Taktithm)】

→詩月の創作の総称『Shizuchara Allstars(しづキャラオールスターズ)』の看板息子兼、オリジナルコンセプト『Tap Spinners』の男主人公。リズの双子の弟。

気が弱いヘタレだが、正義感は人一倍強い。戦闘の際は果敢に立ち向かったりと、男らしい一面も持っている。

また修理からスクリプト関係までとあらゆる機械をいじるのが得意で、爆弾を解除した経験も。

将来の夢はコンピューターエンジニアになり、最先端技術の発展に貢献する事。


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誕生日:1月1日
年齢:12歳・♂
出身地:スコアランド
趣味:ダンス、機械いじり
好きな物:もちろん、音楽が一番好きだよ!
嫌いな物:ピーマン。あの苦味がダメなんだ…。

【リズ・タクティズム(Riz Taktithm)】

→詩月の創作の総称『Shizuchara Allstars(しづキャラオールスターズ)』の看板娘兼、オリジナルコンセプト『Tap Spinners』の女主人公。パトの双子の姉。

口論で勝てる者はいないくらい、非常に気が強くしっかりしている(※だからと言って頑固者や意地っ張りではない)。人を説得するのも得意。

実は料理が恐ろしく下手で、その不味さはもはや生き地獄そのもの(一応本人も自覚はしている)。

将来の夢は探検家になり、未知なる世界を旅する事。


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誕生日:1月1日
年齢:12歳・♀
出身地:スコアランド
趣味:ダンス、運動
好きな物:もちろん音楽だよ~!
嫌いな物:空豆

【ガンザード・Z・ジェット(Gunzard Z-Jet)】 

→パトとリズの母方の叔父、関西弁で喋る。愛称は『ジェット』。

格闘技の達人で、強い敵相手だとテンションが上がるタイプ。

また弱い相手に暴力を振るう行為が大嫌いで、DVや集団リンチをする連中は決して許さない。

格闘一本なので、恋愛に関してはちょっぴり奥手なようだ。


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誕生日:2月29日(平年は3月1日がお祝い日)
年齢:20歳・♂
出身地:スコアランド
趣味:トレーニング、バイクを乗り回す事
好きな物:優しい心
嫌いな物:自分より弱い者に暴力を振るう奴

【カロ・フランシス・スート(Carreau Francis Suit)】

→神に限りなく近い種族『神々しき一族』の女性。自分よりも相手に気を遣う優しい心の持ち主で、主に回復魔法を得意とする。

普段は物静かで大人しいが、キレると大変な事になるらしい。

ちなみにZ・ジェットに恋心を抱いているが、態度には出していない。最近は紅茶のブレンドにハマっているとか。


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誕生日:??(お祝い日:4月1日)
年齢:約700歳(外見は人間年齢で27歳くらい)・♀
出身地:次元聖域
趣味:ティータイム
好きな物:希望の光
嫌いな物:邪悪な心

【メトロ(Metro)】

→パト&リズ姉弟が家に飾っているメトロノームから生まれた、不思議な双子の精霊で姉の方。パートナーはパト。

パトが戦闘態勢に入る時限定で、体を日本刀に変化させる事が可能。

一応バラバラに行動する事も出来るが、基本は姉妹で1セット。もっぱら一緒にいる時が多い。


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誕生日:分かりません(お祝い日:12月31日)

年齢:年齢不詳・♀

出身地:ハーモニーシティ(=スコアランドの首都)のアンティークショップ

趣味:無

好きな物:無

嫌いな物:迷惑騒音

【ノーム(Nome)】

→パト&リズ姉弟が家に飾っているメトロノームから生まれた、不思議な双子の精霊で妹の方。パートナーはリズ。

リズが戦闘態勢に入る時限定で、体を日本刀に変化させる事が可能。

一応バラバラに行動する事も出来るが、基本は姉妹で1セット。もっぱら一緒にいる時が多い。


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誕生日:…さぁ?(お祝い日:12月31日)

年齢:年齢不詳・♀

出身地:ハーモニーシティ(=スコアランドの首都)のアンティークショップ

趣味:無

好きな物:無 

嫌いな物:リズムが取れない曲

【鳳凰団(ほうおうだん/Team Houou)】
→全ての次元の住人を鳳凰団の信者にするべく活動する、非常に傍迷惑な連中。
悪さをするのは三大幹部で、姐御系リーダー・孔雀(くじゃく/右の女性)、頭脳明晰な元海賊・ツバメ(左の水色バンダナの少年)、人造人間・イーグル(センターの大男)の3人構成。その上には大ボス・フェニックスがいる。
一応SCASシリーズの悪役兼メインキャラ勢のライバル的な立場で、メインキャラ勢が彼らの活動を阻止する事で、常にワールドの平和が保たれている。


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誕生日:3人とも不明

年齢:孔雀/推定20代前半・♀ ツバメ/8歳・♂ イーグル/年齢不詳・♂

出身地:3人とも不明

趣味:孔雀/貴金属収集 ツバメ/パルクール イーグル/何だソレ?美味いノカ?

好きな物:孔雀/アタイの美貌は世界一よ♪ ツバメ/潮風 イーグル/ハイオクガソリン

嫌いな物:孔雀/お姉様とお呼び! ツバメ/火 イーグル/鳳凰団に歯向かう奴、許せないガー!!

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