その日の夜中、レクシーンとティミィは仕事を終えて帰路についていた。
彼ら兄妹の家は人通りの少ない住宅地の中にある、小さなアパートの一室だ。街灯もあまりなく、この時間帯となれば真っ暗だった。
さらに夜は肌寒い。長袖の私服と言えど、流石に2人の身に応える。
そんな話をしていると、前から黒い乗用車が走って来た。
【レクシーン】
あら…あの車、ちょっとスピード出し過ぎじゃない?
【ティミィ】
ホントだ、いくら田舎だからってちょっと危なくない?
確かに、この辺一帯は時速40km規制のはずだ。その割には少し、いや明らかに速過ぎる。
夜中で人通りが少ないからと油断しているのであろうか…?
と、次の瞬間。
【レクシーン】
!!
ティム(=ティミィ)、危ない!!!
ギュン!!!!
その車が2人を猛スピードで、しかもギリギリの距離で避けもせずに横切った。
レクシーンがティミィをかばう形で慌てて飛び退く。車はそのまま走り去って行った。
幸い2人には何もなかったが、あの運転手のあまりに心ない行為に、当然怒りを覚えていた。
【ティミィ】
…あの馬鹿運転手、頭おかしいんじゃないの?
【レクシーン】
全くだわ!轢いたりしたらどうするつもりなのかしら!!
【ティミィ】
あんな事平気で出来るくらいだから、轢き逃げしそう…。
先程の車の運転手に対し、愚痴を漏らしている最中の事であった。
ドガシャ~ン!!!!!!!!!!2人の後ろでものすごい音がした。
2人は驚き、とっさに振り向く。そこには驚きの光景が広がっていた。
先程ギリギリの距離で横切った車が道路脇の電柱に正面から突っ込み、大破していたのである。2人はすぐに現場へ駆け寄った。
危ない目に遭わされた車にまさかの天罰が下ったのを目の当たりにし、唖然とする。
【レクシーン】
ちょっ…ティム、早く警察と救急車呼んでちょうだい!!
すぐさまティミィがスマホを取り出し通報する。一方レクシーンは事故車両の運転手を救出しようと試みていた。
いくら危険にさらされたとは言え、その車が事故に遭えば話は別だ。
ドアは衝突した事で変形していて開けられなかったため、ゴミ捨て場にあった重石を使ってフロントガラスを割る。そしてあの凄まじい音を聞いて飛び出してきた他の住人たちと協力し、何とか運転手を車から引きずり出す事に成功した。
気を失ってはいたが、幸いにも足を挟まれたりはしていないようだ。
ちょうど良いタイミングでパトカーと救急車が到着し、運転手は救急車で運ばれて行った。
辺りはちょっとした大騒ぎになった。
【レクシーン】
はぁ~疲れた…。
今日がオフでホントに良かったわ。
【ティミィ】
散々だったね。
車に轢かれそうになるし、しかもその車が事故って、ボクたちまで事情聴取されて帰り遅くなっちゃったし…。
帰宅後風呂を済ませた2人は、麦茶を飲みながらリビングでくつろいでいた。
ようやく2人が家に帰り着いたのは、既に明け方になってからだった。仕事疲れに加え事故の救助活動で労力を使い果たし、お互いもうクタクタだ。
ちなみに例の運転手は胸等を強く打ちケガを負ってはいたが、幸い命に別状はなかったと言う。しかし、しばらくは様子見のため入院するらしい。
【レクシーン】
これに懲りて彼がもう、あんな危ない運転しないと良いわね。
【ティミィ】
全くだよ。ボクたちも運転する時は気を付けなきゃ、二の舞にならないようにさ…。
んじゃ寝る、おやすみ。
昨夜の事を教訓として胸に刻み込んだ後、2人は就寝するため各部屋に入って行った。
おしまい。
【今回の登場人物】
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【レクシーン(Lexine)】
→そこそこ有名なカリスマモデル兼ダンサー。オネエキャラ。
しかし男とは思えないくらいの美貌と色気を持つ。ただしキレると男全開になる。
すっぴん顔はとてもイケメンらしいが、本人は妹・ティミィ以外に見られるのをものすごく嫌がる。
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誕:7月1日
年:年齢非公表・戸籍上は♂
出:フランス
趣:メイクの研究、コスプレ
好:ダンス、それから可愛い妹!
嫌:すっぴんを見られるコト(見たらただじゃおかないわよっ!)
【ティミィ(Timmy)】
→スコアランド・ハーモニーシティ某所のナイトクラブで働くDJでレクシーンの妹。ボクっ娘。
DJベリルに強い憧れを抱いており、彼に影響されて彼女自身もDJになったんだとか。
一見そっけない性格だが、決して冷たくはない。兄とは仲良しで、同じ家に一緒に住んでいる。
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誕:8月8日
年:年齢非公表・♀
出:フランス
趣:CDジャケットのデザイン…みたいな?
好:日本のアニメとかマンガ。
嫌:しつこいお小言。ストレス溜まる。