幻の森の三姉妹・Chapter6
文字数 2,962文字
一行は木々が生い茂るエリアへと辿り着いた。集落周辺よりも薄暗く不気味だ。
【パト】
今まで行ったダンジョンよりも一層不気味だね。
【ファルファーラ】
きっとこの辺一帯も、毒の霧で覆われてるのね。
【Z・ジェット】
オレらはブレスパール身に着けとるさかい平気やけど…。
【クレス・ビートル】
ここから先、出て来る魔物たちはスパイディーネの毒でより凶暴化しておる事じゃろう。
決して油断はしてはならんぞ。
【クレス・ビートル】
では入るぞ。
皆、ワシから離れぬように。
お守りの効果を全員に発揮させるため一行は固まって、危険区域の中へ静かに足を踏み入れる。
周りの木々はまさに毒々しいとも言えよう、赤黒く変色していた。これもスパイディーネの毒の影響なのだろうか。
【ファルファーラ】
私もここに入るのは初めてだけど…本当に不気味ね。
【クレス・ビートル】
まさかここまで強大な力を手に入れておったとは…。
【Z・ジェット】
ずっとこんなとこおったら、気ぃ狂いそうやわ。
【ファルファーラ】
キーちゃん、絶対に助けてみせるわ。
いち早くジェットが魔物の気配を察知した。途端に子グモの大群が押し寄せて来る。
しかも今まで倒したクモたちよりも、また一回り大きい。
すかさずファルファーラが扇をあおぎ、竜巻を放った。子グモたちは吹っ飛ばされる。
が、数が多過ぎるため全てにダメージは行かなかった。続けて後ろの方にいた子グモが襲い掛かって来る。
【クレス・ビートル】
こやつらに手加減はいらぬ! とぁーっ!!!
クレスとパトが武器を振り、衝撃波を放つ。2人の放った衝撃波は瞬く間に飛んで行き、奴らに命中した。
しかし向こうはまだまだいた。残りのクモたちが飛び掛かって来た!!
思わずパトが驚愕のあまりついバランスを崩し、尻餅をついて転んでしまう。
そこへクモたちが、脅威のジャンプ力で再び襲い掛かって来た。
ザシュッ!バシュッ!!そこへリズが入り、刀で攻撃する。適当に振り回しているように見えるが、当たってはいるようだ。
この刀は特別なものなので、恐らく多少の補正は入れられるのだろう。
たちまち斬られ、クモたちは地面に落ちた。
【クレス・ビートル】
すまんな、パトにリズ。
散々注意したワシが一番油断しておったわい。
【リズ】
クレスおじいさんだって、助けに入ろうとしてくれたじゃん!
気にしないで!
まだまだクモの大群は襲い掛かって来るが、進みながら相手の攻撃をかわし、次々と反撃して行く。
一匹にパンチを叩き込み、後から四方に放たれる衝撃波で大群を一気に吹っ飛ばして行くジェット。
別の一匹にチャージ弾を撃ち込み、その爆発に他のクモたちを巻き込んで倒していくカロ。
【ファルファーラ】
私の舞、特別に見せてあげるわ!
“スワロウテイル・ダンス”!!
蝶のように美しく舞いながら攻撃をかわし扇子で斬り裂き、魔法の鱗粉の効果でクモたちを麻痺させ気絶させて行くファルファーラ。
姉弟&クレスだけでなく、大人組も大活躍だ。
一行はブレスパールのおかげでダメージを受けずに済んでいるが、ここはスパイディーネの本拠地。
彼女の手下の子グモたち並びにこの区域に生息する魔物たちは、やはり立ち込める毒霧の効果でより凶暴化しているようだ。尚更油断は出来ない。
【カロ】
マリキータさん、一体どこにいるのでしょう?
【クレス・ビートル】
ああ、分かるぞ。微かにマリキータの“気”を感じるな。
2人はマリキータのヒト成分の場所を、ある程度突き止めたようだ。
【ファルファーラ】
微弱だけど“気”を感じる、つまり…。
【Z・ジェット】
マリキータのヒト成分が近くにあるっちゅー事か?
【クレス・ビートル】
ああ、それで間違いない。
そしてスパイディーネの居場所もそう遠くないじゃろう。
【クレス・ビートル】
そうだ、しかしそこまで辿り着くには…。
【リズ】
子分のクモたちをやっつけなきゃ、でしょ!?
【Z・ジェット】
よっしゃ、かかって来いやーーー!!!
一行は再び武器を構え、茂みから飛び出して来た子グモ軍団に立ち向かって行った。
その後も迫り来る子グモ軍団を何度も蹴散らし、ようやく目的地周辺までやって来た一行。
そこには何とも豪華な洋館が建っていた。しかし毒霧による赤黒い空間のためか、その雰囲気はかなり不気味なものだった。
お世辞にも美しいとは決して言えない。
【クレス・ビートル】
あそこからマリキータとスパイディーネの“気”を強く感じるな…。
【クレス・ビートル】
ああ、間違いない。スパイディーネの本拠地“毒蜘蛛の館”じゃろう。
しかしこんな物を建てる程に、強い魔力を蓄えていたとはな。
【Z・ジェット】
うわぁ、エラく気味悪い建物やなぁ。
【カロ】
あの館から邪悪な魔力が、特に多く溢れてますね。
【パト】
いかにも魔女とか悪魔が住んでそうな感じするよ。
あまりの気味の悪さに、メイン勢も口々に感想を述べる。
クレスが歩を進める。他のメンバーもそれに続く。
入り口からの正面突破で行くようだ。
【クレス・ビートル】
何、奴の真の狙いはワシじゃ。
ワシと言う獲物が罠にかかるまでは、マリキータを殺すような真似はせんじゃろう。
【パト】
でも油断は出来ないね、早くスパイディーネを倒さないと!
【Z・ジェット】
せや!
森に平和も戻らんし、オレたちも帰れへん!
【ファルファーラ】
それにキーちゃんだけじゃなく、集落のみんなのヒト成分も取り戻さなきゃね!
そう言いながら、クレスは扉の取っ手に手をかける。
ギギギィ…。扉は年季の入った軋む音を立てながらゆっくりと開く。鍵もかかっていないその扉は、まるで一行を出迎えるかのようだった。
=Chapter7へ続く=
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