幻の森の三姉妹・Chapter2

文字数 8,611文字

【ビーネ】

ここから姉の気を感じます…。

準備万端となった一行と妹たちがやって来たのは、巨大なご神木の前だった。

【マリキータ】

ここは森を外敵から守る神様として、昔から祀られてるんだ。

【パト】

うわー、おっきい木…。

【リズ】

樹齢何年くらいだろうね~。

【Z・ジェット】

これまたエラい長生きしてそうやなぁ。

【メトロ】

とても貫禄を感じるわ。

【ノーム】

流石はご神木と言われるだけあるわ。
かなりの樹齢のようで、根本にはぽっかり空洞が出来ていた。

【カロ】

あらっ、よく見ると奥に階段が…?

妹たち曰くこの空洞の下はモンスターが棲みつく地下迷宮になっているらしい。時々祖父クレスとの修行の際に立ち入るが、三姉妹もあまり下の階へは降りた事がなく、どのくらい深いのかも知らないと言う。気を締め、一行は中へ入って行った。




姉妹たちの言った通り、道中はかなりの強敵ばかりだった。さらには至る所に罠まであり、やはり一筋縄では行かなかった。
流石は修行で使われるダンジョン。一行はなかなかの苦戦を強いられたが、それでも迫り来る敵を蹴散らし下へ下へと降りて行く。いや、行かなければならないのだ。残る長女・ファルファーラを救出するために。

【リズ】

ホント入り組んでるねー、まるで迷路みたい。

【ビーネ】

おじい様から聞いた話だと、昔ここにはたくさんのアリの虫人の祖先たちが世帯別に暮らしていたそうです。

【Z・ジェット】

集合住宅っちゅーやつか。

【カロ】

それがそのまま残っているんですね。

【パト】

すごいなぁ…道理で広い訳だ。

【リズ】

いつか隅々まで探検してみたいね!

【ビーネ】

…! ジェットさん、足元!!
カチッ。嫌な予感しかしない音がした。

【Z・ジェット】

うおっ!?
ビュッ!!ジェットが危険を察しその場を避けた次の瞬間、鋭い針が床から飛び出して来たのだ。どうやら床に隠されていた、罠のスイッチを踏んでしまったらしい。
あともう少し反応が遅かったら、あっと言う間に串刺しになり肉塊と化していただろう。まさに間一髪だ。

【パト】

ひえぇ…。

【リズ】

こ、怖~っ!!

【Z・ジェット】

お、おおきに…助かったわ。

【ビーネ】

ここは侵入者対策として仕掛けられた罠が多数残っています。

気を付けて下さいね。

【カロ】

分かりました。注意して進みましょう。

【メトロ】

あらあら、罠の次はまたモンスターのお出ましね。

【ノーム】

ふふっ、今回もなかなか手強そうよ。
先程の戦闘と罠で警戒心を強めていた一行は再び身構える。

【Z・ジェット】

けっ、また来よったか! ホンマに身の程知らずやな!

【マリキータ】

ボクたち、ファリーお姉ちゃんの所に行くの!

お願いだから邪魔しないでよね!

【ビーネ】

行く手を阻むと言うのなら、我々も手加減は致しません!

覚悟!!




ようやく最奥部と思しき階層へ辿り着いた一行。

そこへ繋がる階段を降り切った所に長女・ファルファーラはいた。

【ビーネ】

ファリー姉様!

【マリキータ】

ファリーお姉ちゃん!
言わずもがな、虫人の姿ではなかったが。

例の謎の光線によって青い蝶と化してしまった彼女は、辺りをヒラヒラと飛び回っていた。

彼女もまた、一行に撤退を促しているかのようにも見える。

【??】

くっくっくっ…。
どこからか笑い声が聞こえた。

【カロ】

何者です!
ブーン…。うるさい羽音を立てながら、一人の男がゆっくりと降りて来る。

【??】

何だ…ガキ共じゃねぇか、このミーガン様に用か?
それはハエの虫人だった。

銀髪の頭に色黒の肌に毛むくじゃらの手足、シャツに膝丈ズボンにサンダルとラフ、悪く言うとだらしない服装、そして赤いサングラスをかけている。

【パト】

用か?じゃないよ!!

【リズ】

そうだよ、あんたがビーネさんとキーちゃんのお姉さんをチョウチョにしたんでしょ!?

【ミーガン】

あぁ、スパイディーネのお嬢に頼まれたんだよ。

野望を妨害する邪魔者を排除しろ、ってな。

【カロ】

では、やはりあなたがファルファーラさんを…!

【ミーガン】

いちいちうっせぇなぁ、これ見りゃ分かんだろ。
そう言って彼が取り出したのは鳥かごだった。

中にはビーネの時と同じ人魂が閉じ込められている。

【マリキータ】

ファリーお姉ちゃんのヒト成分…!

【ミーガン】

お嬢に持って帰るように頼まれてっから、こうやって慎重に扱わねぇと。

【Z・ジェット】

そのスパイディーネとか言う奴、何が目的なんや!

【ミーガン】

へっ、さぁな。それにしてもあのねーちゃん、美人だったなぁ…。

ヒト成分を奪わなくて済んだなら俺がモノにしてたのによぉ、へへへ…。

サングラス越しにギラつく眼差しは、下劣そのものだった。

まさにセクハラオヤジと言う言葉がピッタリだ。

【リズ】

キモっ!!

【マリキータ】

げぇっ、ファリーお姉ちゃんをそんな目で見てたなんて!!

【メトロ】

…最低ね。

【ノーム】

…女の敵まっしぐらね。

【パト】

僕、あんな大人にはなりたくないや…。

【Z・ジェット】

ホンマやな、ええ年こいた男が恥ずかしくないんやろか。

【ビーネ】

でもおあいにく様、ファリー姉様はそう簡単には堕ちませんよ!

【カロ】

その下卑た根性、我々が叩き直してあげます!!
一行はいつものごとく武器を構え、戦闘態勢に入る。

【マリキータ】

ファリーお姉ちゃんのヒト成分、絶対返してもらうからね!!

【ミーガン】

何とでも言いな、こっちも仕事なんでね。

邪魔するってんなら、女子供だろうが容赦はしねぇぜ!

この一言がゴング代わりとなった。




【Z・ジェット】

ほんなら行くでぇ!!!!
ジェットが地面を蹴り、鉄拳をお見舞いしようとする。

【ミーガン】

おっと!
ヒョイ。しかしそう簡単には行かなかった。

ミーガンはホバリングで素早く飛び回り、拳を余裕の表情で避ける。

ジェットは続けて何度も叩き込もうと奮闘するが、一向に当たる気配がない。

【Z・ジェット】

くっ、何で当たらへんねん…。

【ミーガン】

知らねぇのか? ハエはな、人間の殺気を感じ取れるんだよ。
ミーガンの言う通り、ハエには人間が退治しようとする際の『気』を感じ取り、逃げ回る習性がある。

彼はそのハエの虫人であるが故に、その能力を持っているのだ。

例え虫とて、決して侮ってはいけない。

【カロ】

ならば遠くからの攻撃はいかがですか?

【ミーガン】

へへっ、上手く行きゃ良いがな。

【マリキータ】

さっきからムカつくー!! この~っ!!!
カロとマリキータがそれぞれの武器で射撃する。

【ミーガン】

オラオラ、どこ狙ってんだよ!!
しかしやはり簡単には倒せなかった。ミーガンは猛スピードの低空飛行で逃げ回り、その後を追うように小さな砂煙が次々と上がって行く。
彼女らの連射もむなしく、辺りに弾痕を残すだけとなった。

【マリキータ】

全然当たんない…!!

【カロ】

なかなか手強いですね…!

【ミーガン】

おいおい、もう終わりか?
余裕たっぷりな様子で、ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべるミーガン。

【ミーガン】

なら今度はこっちの番だ!
そう言って彼は、お得意の高速低空飛行を駆使し、一瞬で向かって来た。

手にアメーバ状の物を召喚しながら。

【ミーガン】

“ゲルムアタック”!!
そしてそのアメーバを、一行に向かって投げ付けた!

ビチャッ!!

【リズ】

きゃあ!

【マリキータ】

わぁっ!!

【Z・ジェット】

ゲェッ!?
あろうことか、アメーバはリズ、ジェット、マリキータの3人に命中してしまった。

途端に3人が苦しみ出す。

【リズ】

何これ…。

【Z・ジェット】

アカン、体が…シビれて…。

【マリキータ】

言う事聞かない…。

【パト】

みんな、大丈夫!? 今治療するから!
慌ててパトが駆け寄る。

【リズ】

ごめんね、油断しちゃった…。

【パト】

喋っちゃダメだよ、早くこれを!
パトはすぐさま、3人に魔法の万能薬を飲ませる。

全快まで少し時間はかかるが、効き目は確かな回復アイテムだ。

【ミーガン】

おっと、そうは…ん?

【カロ】

お待ちなさい、相手は私たちです!

【ビーネ】

卑怯な真似は許しません!
追い討ち並びに巻き込み攻撃をかけようとする彼の前に、カロとビーネが立ちはだかった。

【ミーガン】

へ~ぇ…なかなか可愛いじゃねーか。
いやらしく気持ち悪い視線がカロに向く。

【カロ】

ひっ!?
そのあまりの気持ち悪さに一瞬怯む彼女。そして…。

【ミーガン】

へっへっへっ…待て待てぇ~~~!!
ビュン。ミーガンは案の定、カロを捕まえんとばかりに猛スピードで迫って来た。

【カロ】

きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!
すっかりパニックになり、攻撃するのも忘れて逃げ回るカロ。元々純粋な彼女だから仕方ない。
ビーネがミーガンを止めようとするが、素早過ぎてなかなか追い付けない。待ち伏せ攻撃を仕掛けようにもカロを巻き込んでしまう危険性があり、手が出せなかった。
そもそもカロがこのスピードから逃げられるのもすごいが。所謂火事場の馬鹿力と言うものだろうか。

【ビーネ】

くっ、せめてミーガンの動きを封じられれば…。
ビーネはどうする事も出来ず焦る。

【パト】

動きを封じる…?
ふとパトの脳裏に“あの光景”が浮かび上がる。

【パト】

そうだ! あれを使えば…。

【Z・ジェット】

何や、策でもあるんか?

【パト】

うん! 良い事思いついちゃった!

ビーネさん! ひとまずこっちに来て下さい!
早速パトがビーネを呼び寄せる。ミーガンはカロを追いかけるのに夢中で、それに気付いていない。

【ビーネ】

どうされたのですか?
飛びながらやって来るビーネ。

カロの事が心配なのか、彼女の表情には少し焦りが残っていた。

【パト】

これから僕の言う通りに動いて欲しいんです。耳を貸して下さい。
ビーネが耳を貸すと、そのままゴニョゴニョ何かを話す。

【ビーネ】

…分かりました、一か八かやってみます。





【ミーガン】

はっはっは、あんなに強がっといて情けねぇな嬢ちゃん!!

【カロ】

ひぃ~、助けて下さーーーい!!
一方、相変わらず鬼ごっこ状態となっているカロとミーガン。

【ミーガン】

うらぁぁ~!!

【カロ】

キャー!!!!
と、彼の餌食になるギリギリの所で、隙を見たビーネが間に入りカロを救出。

そのまま素早く安全な場所へ運ぶ。

【ビーネ】

大丈夫でしたか?

【カロ】

すみません、助かりました…。

【ミーガン】

ちっ、邪魔が入ったか。

だがそろそろ眼鏡の嬢ちゃんにゃ飽きた所だったんだ、ちょうど良い。

【ビーネ】

…つまり私にターゲットを変えようと言うのですね。

良いでしょう、捕まえられるものなら捕まえてご覧なさい。

カロを地面に降ろした後、ビーネは身構え再び空中に浮かび上がる。

【ミーガン】

そうかい、だったらお前さんも地の果てまで追っかけてやろうか!!

【ビーネ】

(よし、乗った!)

ここまでいらっしゃい!

すぐさまビーネは羽を震わせ、ホバリングで逃げる。同時にミーガンも飛び出した。

再びターゲットを変えての鬼ごっこの始まりだ。

【ミーガン】

おいおい、戦士なのに逃げてちゃダメだろぉ~!?
追いかけながら背後で煽るミーガン。

【ビーネ】

(くっ、腹が立つけど…まだ我慢の時!)
対してミーガンからの煽りに少し苛立つビーネ。

しかしこれで良いのだ。何故なら先程、パトから策を託されたから。

【ビーネ】

(…今だ!!)
コンッ。一瞬のチャンスを見極め、ビーネは飛びながら持っていた槍で地面を軽く突いた。
するとどうだろう。ミーガンが到達する寸前、その地点に紐がピンと張られたのだ。
そう。ビーネは罠が放つわずかな『気』を感知し、既に罠の位置を把握していたのである。

【ミーガン】

どわっ、とっとっと!?
ズシャアアアアアッ!!

当然避ける間もなく罠につまずいたミーガンは、大きくバランスを崩し派手にすっ転ぶ。

【ミーガン】

いててて…。

【ビーネ】

隙あり! “ハニーディップ”!!
彼が立ち上がったと同時に、すかさず槍先から魔法の蜂蜜を召喚するビーネ。

たちまち蜂蜜がミーガンの体を包み込む。

【ミーガン】

なっ!? うわああああっ!!
そのまま蜂蜜は結晶化して白く固まり、ミーガンはあっと言う間に身動きが取れなくなってしまった。

【ミーガン】

何だこりゃ、動けねぇ…!

【ビーネ】

当然です、そう言う技ですから。
ビーネは槍を構え、ミーガンの前に降り立った。

【ビーネ】

どうですか、拘束された気分は?

【ミーガン】

うぅっ、チクショー…。
ミーガンは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら悔しがる。
一方でパトとカロ、そして毒も消え快方に向かい始めたリズ、ジェット、マリキータもその光景を見ていた。

【リズ】

なるほど、一度罠にかけて捕まえるって作戦だったんだね!

【パト】

うん、速くて捕まえられないなら、動きを封じれば良いかなって。

【マリキータ】

そっか、この迷宮には罠がわんさかあるもんね!

【Z・ジェット】

ハチだけにハニートラップってとこやな!

【パト】

…?

【マリキータ】

…???
約2名、きょとんとした顔になる。どうも意味が分かっていないようだ。

【カロ】

…ちょっと意味が違うのでは?

【リズ】

ってか思いっ切りスベってるから。(汗)

【Z・ジェット】

わ、分かっとるっちゅーねん、ダジャレやダジャレ!

そんな冷たい事言わんといてや。

【パト】

ま、まぁまぁ…僕たちも後で調べとくから。
うるさい外野をパトはなだめる。そして…。

【ビーネ】

さぁ、これで終わりにしましょう。

【ミーガン】

いっ!? ちょ、ちょっと待て!

なぁ、いっそお前さんたちも俺と手ぇ組まねぇか?

お前さんたちの強さと頭の良さには脱帽したぜ、は、ははは…。

ピンチのあまり混乱したのか、急にスカウトを始めるミーガン。たぶん命乞いだ。

【ミーガン以外の全員】

…は?
当然辺りから一斉に、氷のように冷たい視線が送られて来る。

【ビーネ】

我々が今更、そんな陳腐な口車に乗るとでもお思いですか?

【ミーガン】

いや、俺はマジでそう思ってよ…。
あまりにも馬鹿馬鹿しく情けない命乞いで、一行は心底呆れ果てる。

【ビーネ】

ふざけるのも大概にして下さい!! “ポイズンニードル”!!!

【ミーガン】

ひぃ~!!
ビーネの毒をまとった槍による一突きが、ミーガンの腹に炸裂した。

ドッスゥゥゥ!!!!

【ミーガン】

ギャァァァァァァァ~!!!!!!!!
ボディブローを叩き込むような鈍い音がした直後、彼の一際情けない断末魔が階層中に響き渡った…。




【ミーガン】

ゲホッ、ゲホッ、何てこった…。
とどめの一撃と共に崩れ落ちた蜂蜜の結晶から漂う、甘い香りに包まれて倒れるミーガン。槍が体を貫く事はなかったものの、腹を押さえて酷く咳き込む様子から相当なダメージを食らったのが分かる。
ここまで来ると流石に少しやり過ぎな気もする。もっともちゃんと反省すれば、こんな恐ろしい怒りの鉄槌を食らう事は二度とないのだが。完全に自業自得だ。
ちなみにハエの虫人は毒状態にはならないらしい。
すっかり全快したメンバー含めたメイン勢とマリキータ、ビーネで彼を取り囲んだ。

【メトロ】

女子供だからと言って、

【ノーム】

ナメてかかると痛い目を見るのよ。

【リズ】

これに懲りて少しは反省しなよ、セクハラおじさん!

【マリキータ】

そーだそーだ! あんな事ばっかりしてたら絶対他の女の子にも嫌われるから!!
女子組に散々罵倒され、ミーガンは動揺する。

【パト】

あわわ…。(汗)
それを目の当たりにしたパトも、すっかり青ざめているようだ。

【ミーガン】

くっ…クソガキ共がっ!
ミーガンは怒って反論するが、残念ながら今の彼に迫力と言うものは微塵もなかった。

リズとマリキータは、そんな彼に向かって一緒にあっかんべーする。

【Z・ジェット】

はぁ、ここまで情けない奴がおったとは…。

【カロ】

あなたは罵倒されて当たり前の事をやったんです。

ちゃんと自覚なさって下さい。

大人組はもはや怒りを通り越して呆れている。

【ビーネ】

さぁ、早く姉のヒト成分を返しなさい!

【ミーガン】

ぐっ、わ…わーったよ、とっとと持ってけドロボー!

【パト】

どっちが泥棒なんだか…。
ミーガンは倒れたまま鳥かごの扉を開き、人魂を解放した。同時に彼の体が輝き出す。

【ミーガン】

へ…へへへ、今頃お嬢自らも動き出してるだろうな…。

せいぜい姉妹揃って森の最期を見届けるが良いさ、あばよ!!

捨て台詞を吐いた直後、ミーガンの人間としての体は完全に光の粒となって消え去った。

そのままただのハエに戻り、どこかへ飛んで行ってしまった。

【Z・ジェット】

やっぱあのオッサンも、ただのハエやったみたいやな。

【マリキータ】

クレイグの時と同じだね。
一方残されたヒト成分と思しき人魂は、やはり辺りをふよふよと漂っていた。その人魂へ向かって青い蝶は飛んで行く。
そして蝶と人魂は融合し、一人の虫人となった。




【??】

…はっ!
彼女はかなりの美貌の持ち主だった。流石ミーガンが目を付けただけの事はある。

【マリキータ】

ファリーお姉ちゃん!

【ビーネ】

ファリー姉様!
元の姿を取り戻した彼女…ファルファーラの所に、ビーネとマリキータが駆け寄る。

【ファルファーラ】

ビーネ! キーちゃん! 無事で良かったわ!
ファルファーラは妹たちを抱きしめる。ようやく三姉妹全員が揃ったようだ。

【パト】

これでひとまず解決だね!

【リズ】

でもまだ問題は山積みだね…。

【Z・ジェット】

オッサンが言うてた、スパイディーネとか言う女を何とかせえへんとな。

【ファルファーラ】

…そう、とうとう動き出したのね。
急に険しい表情になるファルファーラ。

【マリキータ】

ファリーお姉ちゃん、知ってるの?

【ファルファーラ】

ええ、私たちが受けた同じ魔法でかつて住民たちのヒト成分を奪って、この森を支配しようとした悪い魔女だとおじい様から聞いた事があるの。

もっとも、私も直接戦った事はないけど…。

【ビーネ】

でしたらおじい様に話して、策を提案してもらってはどうでしょう?

【カロ】

それが良さそうですね。長様が彼女について一番ご存知でしょうし。

【Z・ジェット】

ほんなら早よ戻ろか…。





【??】

あっ、ファルファーラ様、ビーネ様、マリキータ様!!
そこへ森の戦士と思しき虫人の男性が走って来た。何やら慌てているようだが…?

【ファルファーラ】

あら、どうしたの?
ファルファーラが問うと、戦士は驚くべき事を口にした。

【戦士】

た…大変です!!

ク…クモ女の化け物が、子グモの大群を引き連れて集落に現れました!!!

【ファルファーラ】

何ですって!?

【Z・ジェット】

言いよるそばから、もう来たんか!?

【戦士】

今、長と他の戦士たちが戦っています! 私は皆様に知らせるよう長に頼まれて…。
とんでもないアクシデントの発生に驚愕する一行と三姉妹。

まさか自分たちがいない間に、奴らが集落まで迫っていたとは。

【ビーネ】

そんな…!

【リズ】

行動早過ぎでしょ、スパイディーネって奴!!

【パト】

このままじゃ集落が…!

【マリキータ】

急いで戻らなきゃ!

【カロ】

ここは私にお任せ下さい!

すぐさまカロは脱出魔法を唱え、全員でダンジョンの入り口へ戻る。

そこから戦士と共に集落へ急いだのは言うまでもない…。


=Chapter3へ続く=




【今回の主要以外の登場人物】


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【マリキータ(Mariquita)】
→エントマーズ三姉妹の三女でテントウムシの虫人。愛称は『キーちゃん』。
明るく活発なボクっ娘で好奇心旺盛な性格をしており、それ故か外見も現代っ子な感じ。
今はまだ小さいが、いつか自分も姉たちのように強く美しくなりたいと思っている。
敵にダメージを与えられる謎の液体を入れた水鉄砲(必要な時は補助魔法もプラス)を駆使して戦う。


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誕:5月28日
年:13歳・♀
出:エントマーズの森
趣:フォトコレクション(主に自撮り)
好:トマト
嫌:パクチー

【ビーネ(Biene)】
→エントマーズ三姉妹の次女でハチ(ミツバチ)の虫人。思いやりのある優しい心の持ち主。
しかし流石はハチなだけあり、戦闘になると意外にも強く頼りになる存在。
敵に果敢に立ち向かい、大切なものは恐れずとことん守り抜く。
武器であるランスに自身の毒をまとって戦う。

クレイグにヒト成分を奪われミツバチに変えられていたが、マリキータと一行の活躍により無事救出された。


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誕:7月6日
年:16歳・♀
出:エントマーズの森
趣:家庭菜園
好:ハニーレモネード
嫌:スナック菓子

【ファルファーラ(Farfalla)】
→エントマーズ三姉妹の長女でチョウの虫人。大人の色気を放つ美女。愛称は『ファリー』。
非常に他人の面倒見が良く、森の長である祖父に代わって虫人たちを率いたりも。そのため彼女が次期リーダーになるであろうともっぱらの噂。

ミーガンにヒト成分を奪われチョウチョに変えられていたが、妹2人と一行の活躍により無事救出された。

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誕:6月19日
年:19歳・♀
出:エントマーズの森
趣:万華鏡コレクション
好:ブルーベリータルト
嫌:デリカシーのない人

【ミーガン(Megan)】
→ハエの虫人。女たらしで美女に弱い、ただのセクハラ野郎。
自分より上の立場の者には腰が低いが、それ以外の相手には常に上から目線で話しかけて来る。ものすごくウザいし腹が立つ男。
素早い低空飛行で敵を怯ませたり、菌を使って敵を弱らせたり状態異常にしたり…と言った戦闘法を使う。

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誕:??
年:推定30代~40代・♂
出:エントマーズの森(危険区域内)
趣:グラビア写真集め
好:美女
嫌:殺虫剤

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登場人物紹介

【ポジ詩月(Posi-Shizuki)】

→詩月のポジティブな感情が人の姿になった生き物。前向きで常に明るい事を考える。

ただし、現実世界の非情かつ最低な人間の事は大嫌い。もちろん創作世界の平和を乱そうとする連中も大嫌いである。

容姿は詩月本体に似ている(ただし美化2000%)。テンションが上がると声がでかくなる。

ネガ詩月とはいつも一緒にいる。周りを盛り上げるムードメーカー。


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誕生日:8月1日
年齢:詩月と同じ・♀
出身地:福岡県某所
趣味:ネットサーフィン、イラストを描く事
好きな物:ゲーム(特に音楽ゲーム)、動物(特に猫)
嫌いな物:現実の非情かつ最低な人間、平和を乱す連中、アリ、あと軍曹。こいつらだけは絶対無理!!

【ネガ詩月(Nega-Shizuki)】

→詩月のネガティブな感情が人の姿になった生き物。後ろ向きで根暗な方だが、最近は若干明るい子になりつつある。

しづキャラたちの中でも特に、現実世界の非情かつ最低な人間や創作世界の平和を乱そうとする連中を憎悪している。

恐らくしづキャラワールドの中では最強。怒りが一定値を超えると『スーパーネガ詩月』に変貌し、しばらく手が付けられなくなる。

しかし怒らせさえしなければ根はとても良い奴。


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誕生日:8月1日
年齢:詩月と同じ・♀
出身地:福岡県某所
趣味:静かな所でのんびりする、妄想する
好きな物:ポジに伸びた髪を切ってもらう事、創作世界の住人たち、動物(特に猫)
嫌いな物:現実の非情かつ最低な人間、平和を乱す連中、承認欲求

【パト・タクティズム(Pato Taktithm)】

→詩月の創作の総称『Shizuchara Allstars(しづキャラオールスターズ)』の看板息子兼、オリジナルコンセプト『Tap Spinners』の男主人公。リズの双子の弟。

気が弱いヘタレだが、正義感は人一倍強い。戦闘の際は果敢に立ち向かったりと、男らしい一面も持っている。

また修理からスクリプト関係までとあらゆる機械をいじるのが得意で、爆弾を解除した経験も。

将来の夢はコンピューターエンジニアになり、最先端技術の発展に貢献する事。


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誕生日:1月1日
年齢:12歳・♂
出身地:スコアランド
趣味:ダンス、機械いじり
好きな物:もちろん、音楽が一番好きだよ!
嫌いな物:ピーマン。あの苦味がダメなんだ…。

【リズ・タクティズム(Riz Taktithm)】

→詩月の創作の総称『Shizuchara Allstars(しづキャラオールスターズ)』の看板娘兼、オリジナルコンセプト『Tap Spinners』の女主人公。パトの双子の姉。

口論で勝てる者はいないくらい、非常に気が強くしっかりしている(※だからと言って頑固者や意地っ張りではない)。人を説得するのも得意。

実は料理が恐ろしく下手で、その不味さはもはや生き地獄そのもの(一応本人も自覚はしている)。

将来の夢は探検家になり、未知なる世界を旅する事。


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誕生日:1月1日
年齢:12歳・♀
出身地:スコアランド
趣味:ダンス、運動
好きな物:もちろん音楽だよ~!
嫌いな物:空豆

【ガンザード・Z・ジェット(Gunzard Z-Jet)】 

→パトとリズの母方の叔父、関西弁で喋る。愛称は『ジェット』。

格闘技の達人で、強い敵相手だとテンションが上がるタイプ。

また弱い相手に暴力を振るう行為が大嫌いで、DVや集団リンチをする連中は決して許さない。

格闘一本なので、恋愛に関してはちょっぴり奥手なようだ。


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誕生日:2月29日(平年は3月1日がお祝い日)
年齢:20歳・♂
出身地:スコアランド
趣味:トレーニング、バイクを乗り回す事
好きな物:優しい心
嫌いな物:自分より弱い者に暴力を振るう奴

【カロ・フランシス・スート(Carreau Francis Suit)】

→神に限りなく近い種族『神々しき一族』の女性。自分よりも相手に気を遣う優しい心の持ち主で、主に回復魔法を得意とする。

普段は物静かで大人しいが、キレると大変な事になるらしい。

ちなみにZ・ジェットに恋心を抱いているが、態度には出していない。最近は紅茶のブレンドにハマっているとか。


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誕生日:??(お祝い日:4月1日)
年齢:約700歳(外見は人間年齢で27歳くらい)・♀
出身地:次元聖域
趣味:ティータイム
好きな物:希望の光
嫌いな物:邪悪な心

【メトロ(Metro)】

→パト&リズ姉弟が家に飾っているメトロノームから生まれた、不思議な双子の精霊で姉の方。パートナーはパト。

パトが戦闘態勢に入る時限定で、体を日本刀に変化させる事が可能。

一応バラバラに行動する事も出来るが、基本は姉妹で1セット。もっぱら一緒にいる時が多い。


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誕生日:分かりません(お祝い日:12月31日)

年齢:年齢不詳・♀

出身地:ハーモニーシティ(=スコアランドの首都)のアンティークショップ

趣味:無

好きな物:無

嫌いな物:迷惑騒音

【ノーム(Nome)】

→パト&リズ姉弟が家に飾っているメトロノームから生まれた、不思議な双子の精霊で妹の方。パートナーはリズ。

リズが戦闘態勢に入る時限定で、体を日本刀に変化させる事が可能。

一応バラバラに行動する事も出来るが、基本は姉妹で1セット。もっぱら一緒にいる時が多い。


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誕生日:…さぁ?(お祝い日:12月31日)

年齢:年齢不詳・♀

出身地:ハーモニーシティ(=スコアランドの首都)のアンティークショップ

趣味:無

好きな物:無 

嫌いな物:リズムが取れない曲

【鳳凰団(ほうおうだん/Team Houou)】
→全ての次元の住人を鳳凰団の信者にするべく活動する、非常に傍迷惑な連中。
悪さをするのは三大幹部で、姐御系リーダー・孔雀(くじゃく/右の女性)、頭脳明晰な元海賊・ツバメ(左の水色バンダナの少年)、人造人間・イーグル(センターの大男)の3人構成。その上には大ボス・フェニックスがいる。
一応SCASシリーズの悪役兼メインキャラ勢のライバル的な立場で、メインキャラ勢が彼らの活動を阻止する事で、常にワールドの平和が保たれている。


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誕生日:3人とも不明

年齢:孔雀/推定20代前半・♀ ツバメ/8歳・♂ イーグル/年齢不詳・♂

出身地:3人とも不明

趣味:孔雀/貴金属収集 ツバメ/パルクール イーグル/何だソレ?美味いノカ?

好きな物:孔雀/アタイの美貌は世界一よ♪ ツバメ/潮風 イーグル/ハイオクガソリン

嫌いな物:孔雀/お姉様とお呼び! ツバメ/火 イーグル/鳳凰団に歯向かう奴、許せないガー!!

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